第12話 バリアのおかげで助かったにゃ

庭や廊下、客間や物置、さらには地下倉庫まで徹底的に捜索する。


昼間の間に何個か発見できたが、まだすべてを取り除いたとは言い切れない。


夕方になると、公爵が「よかったら屋敷に泊まってほしい。夜に動きがあるかもしれないから」と提案してくれた。


「ぜひお願いします。屋敷にいたほうが対応しやすいんで」


「ありがとうございますわ。私がお部屋を用意させます」


リリアが笑顔で言う。まさに上流階級のもてなしを受ける展開だ。


ミャアも「にゃふふ、こんな高級な部屋に泊まれるなんて最高にゃ」と大喜び。


「夜は俺たちも見回りに参加します。万が一、黒い影が現れたら、今度こそ取り逃がさない」


「心強いですわ。何かあれば私も駆けつけますので、遠慮なく呼んでくださいね」


その夜、豪勢な夕食をご馳走になった後、俺とミャアは激安通販で購入した暗視ゴーグルを用意して屋敷の中を巡回する。


衛兵たちも緊張感を持って見回りを続けているため、雰囲気はピリピリしている。


「黒い影……ほんとに出るのか?」


「にゃ、すぐには出ないかもしれないにゃ。怪しい気配を探りながら回るしかないにゃ」


そうぼやきながらも警戒を続けていると、夜も深まった頃、中庭方面から低いうめき声が聞こえた。


急いで駆けつけると、衛兵の一人が倒れているではないか。


「おい、大丈夫か!?」


「くっ……闇のローブを着たやつが……」


衛兵の肩口には闇魔法で焼けたような痕があり、激痛に耐えている。


すぐに通販で買った回復薬を飲ませると、なんとか意識がはっきりした。


「そいつはどこへ行った?」


「庭の奥に消えた……転移しようとしてたが、バリアが効いてるらしく、完全には消えなかったはず……」


よし、バリアが生きているのなら敵は屋敷内にまだ潜んでいるはずだ。


絶好のチャンスじゃないか。


「ミャア、追いかけるぞ! 奴らを逃がすな!」


「うんにゃ!」


俺とミャアは物音を頼りに庭を駆け回る。


すると、茂みの陰で黒いローブの人物が足止めを食らっていた。


周囲に薄い闇の靄が漂っているが、転移魔法はバリアで阻まれているようだ。


「くそ……何なんだ、この結界は……!」


「それは俺の力さ。おとなしく観念しろ!」


振り向いたローブの下から覗く目は、明らかに狂気を帯びている。


さらに別のローブを纏った人影が数人、庭の奥から合流してきた。


「まさか複数いるのか……面倒だな」


「にゃ、でも私たちなら大丈夫にゃ。やるにゃ!」


先頭の男が闇魔法の弾を投げてくるが、通販で仕入れた『闇魔法特効の盾』を構えれば余裕だ。


魔力は弾かれ、逆に男は焦ったように後退する。


「ちっ……あいつらは噂の冒険者か! ここは一旦……」


「逃がさない!」


俺は魔道具の捕縛ロープを取り出し、投げつける。


先頭の男に巻きつき、ピタリと動きが止まった。


残りの連中が助けようと魔法を撃ってくるが、ミャアが疾風のように駆け、ローブの腕を短剣で斬り落とす。


「にゃあっ!」


一瞬のうちに闇ローブたちが転がされ、次々と捕縛されていく。


人数こそいたが、装備の差は歴然。


バリアもあるから転移で逃亡もできない。


あっという間に片付いた。


「よし、全員確保だ。公爵様のところへ連れて行こう」


「くっ……こんな形で……」


連中は歯ぎしりしているが、もう抵抗は不可能だ。


追いついてきた衛兵たちも協力し、闇ローブ一味を完全拘束。


こうして公爵家を騒がせていた黒い影の正体は、一味による屋敷へのスパイ潜入だったことが判明したのだ。


「ふう、やれやれ。何人も入り込んでたとは驚きだな」


「バリアのおかげで助かったにゃ。さすが大地の通販スキルにゃ」


俺たちはそう言いながら、深夜の屋敷で一息ついた。


夜風が涼しく、どこか達成感がある。


これで公爵家の騒動も一段落だろう。


ほどなくしてリリアやマルス公爵も駆けつけ、状況を確認して安堵の表情を浮かべる。


「ありがとうございます、本当に……。あなた方のおかげで、ようやく不安の種が取り除かれました」


公爵は胸を撫で下ろし、深々と頭を下げる。


リリアもほっとした様子で微笑んだ。


「大地さん、ミャアさん。これで私たちもぐっすり眠れそうですわ。改めてお礼を申し上げます」


「いや、大したことじゃないですよ。俺たちにはスキルがあるから、対策も簡単でした」


「それでも素晴らしい活躍ですわ。明日、改めて謝礼を準備いたしますので、少しお待ちくださいませ」


こうして俺たちは貴族家の難題をあっさり解決し、さらに大きな人脈と名声を得ることになった。


夜も遅いので、そのまま公爵家に泊まらせてもらうことにする。


ベッドもふかふかだし、さすがの貴族ライフだ。


「にゃふふ、すごいにゃ大地。こういう依頼ばっかり来たら、一気に金持ちになっちゃうにゃ」


「もう十分金持ちだけどな。まぁ、人助けと名声稼ぎも兼ねて、どんどんやってやろうぜ」


深夜の静かな部屋で、俺は通販スキルの画面を確認する。


闇魔法対策アイテムはまだまだたくさん売っている。


これなら、どんな敵が来ても対処できそうだ。


「ふっ……世界征服だって、冗談抜きでいつか可能になるかもな」


さすがに今は大袈裟かもしれないが、俺にはそれを否定しきれない自分がいる。


この激安通販スキルを使いこなせば、この異世界でできないことなど何もないのではないか……。


そんな大きな野望が、俺の胸の奥でじわじわと膨らんでいくのだった。

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