『AI追跡捜査 ―人工知能が下した最後の命令―』
ソコニ
第1話 新任警部補の違和感
語り手:刑事部捜査課 柏木美咲
東京都心の高層ビル群が夜明けの光を受けて輝き始めた8月1日の早朝、私は緊急の連絡を受けて六本木のオフィスビルに向かっていた。着任してまだ3ヶ月の新人警部補として、重要な事件を任されることへの緊張が走る。
「フューチャーコマンド」——革新的な音声認識AIで急成長を遂げたIT企業の本社ビル。その最上階にある社長室で、CEO・榊原健一の遺体が発見された。
現場に到着すると、すでに先着していた鑑識課の田中警部が声をかけてきた。
「柏木警部補、被害者の状況を説明します」
彼の声には、どこか違和感を感じさせるものがあった。
榊原健一、45歳。椅子から崩れ落ちるような形で発見された遺体は、頸部に強い圧迫の跡があった。自殺を装おうとした形跡が明らかだったが、違和感は拭えない。
「深夜2時から3時の間に死亡したと推定されます」と鑑識課員が報告する。
私は社長室を丁寧に観察した。最新のスマートオフィスシステムが導入された広々とした空間。大きな窓からは東京の街並みが一望できる。デスクの上には、フューチャーコマンド最新製品の試作機と思われるスマートスピーカーが置かれていた。
「このスピーカー、電源は入っているのに音声認識機能がオフになっていますね」
「ええ、不自然です。榊原社長は自社製品を常に使用していたはずですから」
さらに気になったのは、デスクの引き出しから見つかった一通のメモ。
『すべては、命令通りに——』
その文字には、強い焦りが滲んでいた。
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