30話 運命とは自分で
「あっ、あのいったい何がどうなっているんですか」
綾女さんが、座ったまま訊ねる
「終わったよ、もう九尾の驚異は無くなったよ」
「良かった。これで世界は救われる」
「世界って大げさだなぁ」
「いいえ、大げさではないですよ。九尾の驚異がないという事は、彼が死ぬ未来もなくなったという事です」
「彼が死ぬ?」
「はい」
輪廻転生で、人は縁と運命を繰り返すという
私は波政美を倒し、明を浄化させた事で、その運命を変えた
綾女さんがいう彼は、どちらかに殺される運命を持っていたという事だろうか
「その彼は、九尾に?」
「はい、そのはずです。それ以外に考えられません」
「そうなんだ、良かったね」
「はい、あっ今すぐにでも生死を確認しないと」
痛む体をゆっくりと立ち上がらせる綾女さん
「誰の事なの?」
「甲塚陽介です」
「えっ?」
なんだろう、凄く違和感を感じる
「綾女さん、甲塚君と仲良かったっけ!?」
「あまり一緒には居ませんでしたし、仲が良いわけでもないんですけど」
「前世からの縁?」
「いえ、そういう縁はありません」
「じゃあ、なんで甲塚くんが死ぬ未来を知っているの」
「それは……はははは」
苦笑いをする綾女さん
「色々と試したんですけど、九尾の事を知って、もうこれしか考えられなくて」
「……綾女さんは、テンコの事も、九尾の事も………見えてないのね」
「はい」
「とても言いにくいんだけど、甲塚くんもテンコは見えてないの」
「それが??」
「テンコは、魂の縁がある人には………見えるんだよ」
「????」
「テンコが見えないって事は、九尾も………明も見えていないって事………」
「えっ!?」
「だから………甲塚くんが死ぬ事と、九尾の妖狐の事は………」
「そんな……そんな!!!」
「今すぐ確認しよう、甲塚くんは携帯とか持って無いの!?」
「無いです。でも死に場所はわかってます」
「なら、すぐにそこへ」
「はい」
私の体の痛み、走る事が出来ない
すると綾女さんが私に肩を貸してくれる
「私はいいから、行って」
「どのみち時間は過ぎます。もし……ダメでも葉子にそばにいて欲しい」
「……わかった」
学校の正門を入ると、綾女さんは屋上を目指す
二人とも体力に限界を感じる
今階段を登るのは正直つらい
「はぁはぁ……具体的に教えて、なんで甲塚くんは」
「理由はわかりません、最初は夏蓮です」
「最初は?」
「はい、夏蓮が突き落としました。それを止めても、また別の理由で屋上から落ちて死ぬんです」
「どういう意味!?」
「…そういう…運命なんです…」
階段を上がると、屋上のドアは開いている
それを見て綾女さんは、グッと歯を食い縛る
屋上に出ると、そこには私達を見て警戒する女性がいる
花屋敷夏蓮さんだ
花屋敷さんは、何かに失望するように私達を見る
「夏蓮!陽介は!!?」
と綾女さんが叫ぶ
花屋敷さんが、甲塚くんを突き落としたと綾女さんは言っていた
本当に!?
「わ……私も……探しているの」
嘘はないみたい
「はぁはぁ………花屋敷さんがまだ会ってないなら」
綾女さんを見る
「可能性は………」
綾女さんは一心に何かを考えている
「あったかもしれないし、無いかもしれない」
花屋敷さんは訳がわからないと言ったようすで、混乱している
「どういう意味よ」
綾女さんがフェンスによじ登って下をみる
「危ないわよ!!なにやってるの!!」
花屋敷さんの制止を振り切ってフェンスに登る綾女さん
下を見た綾女さんはそのまましばらく固まる
そしてフェンスを降りると、泣き出し
「私が……止めていれば………私が止めなきゃいけないの……なんで止められないの」
綾女さんは大声で泣き叫ぶ
私も下を確認する
下には、成冨陸奥護郎の銅像があるはずの場所に、男子生徒の制服を着た何かが、血だるまになって覆い被さっている
顔は見えないけど、甲塚陽介くんなんだろう
綾女さんを抱き締める
「あなたのせいじゃないよ……間に合わなかっただけ」
「………でも……でも」
「あなたの努力は、私もテンコも見ていたよ」
「でも、止められないと意味はないんです」
「なんで……知っていたの……甲塚くんが、こうなるって」
「彼の死を止めるのが、私の指命だから」
「指命!?」
「葉子なら……テンコも解ってくれるかもしれないね」
「………教えて」
「私は、彼の死を止める為に、運命を変える為に………ここに来たんです。未来から」
「!!?」
「色々な可能性があって、それを一つづつ潰していくしかないの」
「あの……大丈夫?」
花屋敷さんが声をかけてくる
「夏蓮……夏蓮は陽介に、放課後会ってないんだよね!!」
可能性の一つに、花屋敷さんが甲塚くんを突き落とした事があるって事か
「なんなのよ、会ってないわ。私だって探してるんだから」
「……嘘じゃない?」
「しつこいわよ」
強気に花屋敷さんが、綾女さんに対抗する
「テンコ、花屋敷さんから、何か感じない?」
「……何も…妖気も邪気も感じない、本当に何も知らないみたいだ」
「わかった…………綾女さん、花屋敷さんには邪気はないよ」
綾女さんはまた泣き出してしまう
「……じゃあなんで……」
それを見てオロオロとする花屋敷さん
「あのさ、何の話をしているの?陽介になにか関わる話?」
綾女さんからは話せないだろう
私が言わないと
「甲塚くんは……下にいる……陸奥護郎の銅像……」
「えっ??あっありがとう」
「行って」
花屋敷さんが階段を降りていく
私は泣いている綾女さんを、抱き締める
部活は休みのはずなのに、吹奏楽部の音が音楽室から聞こえる
そして、しばらくして………
花屋敷さんの絶叫が聞こえ、綾女さんがまた体を強ばらせて、泣きはじめる
「何があったのか、教えてくれるかな」
綾女さんの頭を撫でながら、私はきく
「力になってみせるから」
すると綾女さんは、弱々しく答える
「もう、決まっている事なのかも、変える事なんて出来ないのかも」
「何を言ってるの?」
「…だって」
「綾女さんが教えてくれた。運命とは………運命とは、自分の意思とは関係なくやってくる……逃れたくても、絶対に逃れる事は出来ない…変える事は、出来ないかもしれないし、出来るかもしれない……けどね」
綾女さんが顔をあげる
「けど?」
「挑む意志は、自分で持つもの………それは自分次第だよ」
「……うん」
「諦める?」
「………諦めない」
「全部話してくれる?」
「………私は」
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