18話 巫女と幽霊
テストが終わって、先生が教室を出た瞬間、剛志くんが崇くんの席に飛んでいく
比喩とかじゃなくて、文字通り、飛んで向かう
僕は話す二人を見ながら、葉子の動きをうかがった
葉子は窓から裏山を眺めている
うん、このままそこにいてくれーーー
と、願いは叶わず、いきなり眉間にシワを寄せたかと思うと、静かに崇くんと剛志くんに近づいていく
ヤバイ
今、聞かれるのはヤバイ
僕はブロックサインで、葉子が行った事を剛志くんに伝えようとするけど、剛志くんはテンションがあがっていて、全然僕を見てくれない
うーーん
こうなったら、知らないふりしちゃお
僕は剛志くんと、葉子が接触する前に視線をそらし、机の中を整理する仕草で無関係を装う
あとで剛志くんに謝ろう
葉子って怒ったら怖いんだよなぁ
神社の事とか、うちの風習とかの話を親戚以外するのを極端に嫌がるんだよね
顔を伏せて、ちょっと寝たふりでもしてれば、一時限目が始ま………………
「……千早」
しまった
鬼の声がする
「五十嵐……千早………くん?」
怖すぎる
なんで他人行儀で呼ぶんだよ
「……はい、なんでしょう……葉子さん」
「なんでしょうじゃない。千早、剛志に朝の事話したでしょ」
怖い、顔が怖い
「え!?話してないよ………全部は話してない」
言い逃れは出来ないだろうから……ちょっと認める
「あのねぇ、今日まで千早も教えてもらってない事なのよ。それを他の人に話せると思う?」
「うーーん、ごめん」
僕は大袈裟に謝ると、机におでこをすり付ける
「分かればいいけど……今日は大切な日なんだから、私からおじさんに千早も儀式に出るように言うから、これ以上は他言しないこと」
「えっ?いいのかなぁ」
「他の人に言うよりはね」
「なんでさ、葉子は今日の事にそんなに詳しいの?」
「はぁー、私は巫女で儀式の中心なの」
「えーそうなの!?」
「そうなの、だからお願いね」
そう言って葉子は席に戻り、また裏山の方を眺める
黙ってれば、可愛い方だと思うけど……
葉子の巫女姿かぁ
剛志くんに言えば、喜んでくれるかな
剛志くんは葉子の事が大好きそうだし
さっきの話は、やんわりと諦めて忘れてもらって、葉子の巫女姿で我慢してもらおうかな
あっでも儀式に剛志くんは連れて行けないんだ
写真……葉子撮らせてくれるかなぁ
一時限目
僕の今日やる事は、朝決めた
剛志くんと崇くんが言っていた
眞藤さんは、甲塚くんを見ている
崇くんは、眞藤さんを見ている
っていう検証
こういう噂を検証せずにはいられない
眞藤さんの席は真ん中辺りの席
窓側の一番後ろの僕の席からよく見える
眞藤さんは、確かに授業が始まってすぐ、日直である自分の号令の後、椅子に座る時に一瞬だけ甲塚くんを見る
けどその後は、視線をずーーーーーと教科書とノートを何往復もさせるだけ
………つまんない
眞藤さんは集中型だから、勉強に集中する、考えに集中すると、周りが見えなくなる方だと思う
例えば僕から見れば、クラスのみんなと仲がいいけど、眞藤さん自身はそう思ってなかったり、周りから見たら眞藤さんと甲塚くんはすでにカップルでもおかしくないんだけど、花屋敷さんがいるせいか、本人は甲塚くんと深い仲になっていないと感じているかも
自分の考えに囚われるタイプ……かな
一方、崇くん
全然授業にも眞藤さんにも集中してない
隣の席の菖蒲さんとおしゃべり中
先生も睨むくらい
いいなぁ
これが僕の本心
僕も菖蒲さんといっぱいお話したい
さっき、さらりと言ったけど僕は菖蒲さんが好き
強くて優しくて勉強も出来て、大人な感じ
似ているようで花屋敷さんとは違う
毎日楽しく生きているって
そういうのが素敵だと思う
独特の感性は、僕もハッとまるで視界が広がった感覚になることも多い
前世での縁は、今生でも縁を持つ
前世で家族だったり、恋人であった人は、今生でも家族だったり、恋人である可能性が高いらしい
前世で兄弟、今生では夫婦って話はあるらしい
僕は、菖蒲さんとはどんな関係だったのかな?
前世が存在するかは、わからないけれど
生まれ変わる前の僕らはどんな世界に住んでいたんだろう
そんな想いに耽っていると、一時限目はあっという間に終わっていた
一時限目の休み時間。剛志くんと崇くんの席に行っておしゃべりが僕らの休み時間の過ごし方
「ねぇねぇ、さっきの話」
ずっとさっきの話をしたかったんだなーって思わせる剛志くんのウキウキした声
「さっきの?」
「千早の家にあるお宝の話」
僕は葉子を索敵する
「葉子はいないみたいだからいいよ」
「ん?」
「千早の家には、あの成富陸奥護郎の残した弓があるらしいんだ」
「正確に言うと、うちの本堂の奥にしまってはあるんだけど監理は葉子の家の尾崎家がしてるんだよ」
「へー」
「昨日のテレビの話みたいでしょ、これテレビ局に話したら、取材とかテレビに出れるかな」
剛志くんはウキウキして話しているけど、葉子との約束ある、諦めてもらわなくちゃいけない
「どうかな、成富陸奥護郎って有名じゃないだろ」
崇くんの言う通り、便乗してダメ押し
「うん、それに監理してる尾崎家の人はその弓は封印してるって言ってるし、僕も実物は見たことないんだ」
「はぁーテレビに出れると思ったんだけどなぁ」
剛志くんがガックリと肩を落とす
「まぁまぁ。タケくん秋になったら、秋祭りで葉子が巫女姿で御守りとか売ってるから、まずはいっぱい買って、弓を見せてもらう計画を立てようよ」
「巫女姿は萌えるけど、御守り買わないで、テレビに出る方法ないの?」
あっ弓を見たいんじゃないんだ
テレビに出たいんだね
「それなら朝言ってた、お前の前世の記憶って方が楽しそうじゃんか………証明出来ればだけどさ」
「証明出来るよ」
「えっ??」
「えーーーーー!!!!!!!!!!!!」
女の子の悲鳴というか、超音波の様な声が響く
「なんだ、眞藤か」
崇くんが言うように、眞藤さん花屋敷さんが話してる
ビックリしたなぁ
「僕の前世はね」
と剛志くんは、眞藤さんの悲鳴なんてお構い無く話を続ける
タフネスというかなんと言うか
崇くんは完全に聞いてないので僕が聞いてあげる
「……きいてる?崇?」
「えっあぁ、聞いてる。」
「本当かなぁ」
剛志くんが崇くんの目を覗き込む
「うちに伝わっている話にも似てるし、タケくんがそれ知ってるわけないし、証明出来るか解んないけど、面白い話だよね」
となんとなく、まとめに入ると
「で、いつ画像見せてくれるんですか」
隣の席で、ほっぺを丸く膨らませた菖蒲さんが、崇くんのポケットを指差す
「いや、本当に大した画像は」
仲がいいなぁ
何の話かわかんないけど
「昨日の呪いの人形………見ました?」
菖蒲さんが崇くんから携帯電話を奪う事を諦めると、僕らを見てそう言う
「あー見たよ、菖蒲さんも見たの?」
剛志くんが答える
「はい、私結構あーいうの好きなんですよ」
「意外だね」
昨日の番組は結構怖かったから、独り暮らしの女子が見るなんて意外だった
特に菖蒲さんが言う呪いの人形の話は、僕が言うのもおかしいけど「本物」思わせる演出がピカイチだ
……表現、古いかな
「呪いの人形……ジャッキー……だろ」
崇くんの声は少し震える
そうそう、そのくらい怖い演出だったなぁ
ま、あんなの嘘だけどね
「そうです。呪いの人形ジャッキーの話が私はあの番組の中で一番面白かったです」
「僕もだよ、千早は?」
菖蒲さんも、剛志くんもまだまだだね
あの人形は結構有名な「ガセ呪いの人形」なんだよ
都市伝説を調べに調べ
有りとあらゆる角度と宗教的なルートでも調べた情報だから間違いない
それに本当の呪いの人形がテレビに出せるわけないもん
うちでも人形の供養や、呪われた何とかの供養を頼まれて、父さんが供養してるの見たことあるけど
ヤバイのは、霊感なんかなくても、相当ヤバイ
そう言う意味では、今日の兜塚の供養はヤバイんだろうなぁ
「僕は心霊写真かな。最近は合成とか多いけど楽しかったな」
模倣もあれだけ頑張れば、面白い
「崇は?」
「俺は……俺も心霊写真かな」
崇くん、幽霊怖いのかな?
「押し入れの中に首が入ってるのは怖かったですよね」
「そうだな」
菖蒲さんも意地悪そうに、一番怖かった心霊写真(合成だけど)を思い出させる
「崇の携帯電話みたいに写真が取れたら、これからいっぱい心霊写真……あぁビデオ、動画も撮れるようになったら、心霊動画ってのも見れるようになるかもです」
怖がってる人の携帯電話に、そんな画像や動画撮れてしまうってー
意地悪言うなぁー菖蒲さん
「それ凄いね!!ビデオで霊が撮れたら」
乗っかって僕も菖蒲さんと崇くんを見る
ちょっと菖蒲さんと一体感があって嬉しい
「で、崇が撮った写真が見たいなぁーと」
「見てみようよ」
剛志も加わって、崇くんに言い寄る
「簡単に写るわけないだろ」
「でも確認してみたいです」
もし写っていたら、崇くんどんだけ驚くんだろう
「ねータカくーん」
「ねー崇ー」
「ね♪お・ね・が・い♪」
三位一体の連携攻撃
「ダメだって!!」
崇くんは本当に嫌がる
「私達のゾッと・スクリーム・アタックが通じないなんて」
「菖蒲さん、少し違う違う」
某有名ロボットアニメの有名な連携攻撃を言い間違えたのか、狙いなのかわかんないけど……
キンコンカーンっとチャイムが鳴ると、崇くんが虫の様に「シッシッシ」僕たちを追い払う
「タカくんって幽霊とか怖いんだね」
「普通怖いよー。千早は家がお寺だから怖くないのかもしれないけど」
「でもうちのお寺でも見たこと無いしなぁー幽霊」
と僕らは席に着いて、剛志くんはまた僕の方に振り返る
「そりゃそうだよ。成仏出来てない霊がお寺に居るっておかしいんじゃない?成仏する為にお寺で供養したり、法事に行くんだから」
剛志くんの考えも面白い
確かに言われてみればそうだ
毎日お経をあげていて、供養の為に作ったお墓や石碑、それがあるお寺に幽霊が集まるまでならわかるけど、成仏しないで留まっていたら、なんの為のお経かお墓かわかったもんじゃない
「なるほど、タケくん正論だね」
「だって千早の家で幽霊見たことないもん」
僕ん家にはって!?
「他なら見たことあるような言い方だね」
「あるよ」
「そうなの!!?」
「学校にもいるし、やっぱり兜塚公園は凄いよ」
学校には居るんだ
兜塚公園はだから年に一回供養をしてるって言われれば確かに納得はするかな……でも
「聞かなきゃ良かったなぁ」
「何言ってんの、それを相手にする商売でしょ」
「お坊さんを商売って言わないでよ」
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