10年×片思い<40歳×独身=儚恋<無意識執着

ナカモト サトシ

第0話「エピローグ」

カーティスにとって、それは人生でも数少ないシアワセな時間だった。

温かな食事にありつき、ひとときの安らぎを得る。


エレナにとって、それは特別な時間だった。


「エレナ」


久しぶりに届いた低く響く声に、彼女はゆっくりと振り向く。

カーティスは、いつものように変わらぬ表情でそこに立っていた。


どれほど長い時間が空いても、彼が戻ってきたとき、彼女は変わらぬ微笑みで迎えようと決めている。


「お久しぶりです」


一年ぶりの再会だった。


約束なんてしたことがない関係だ。

それでも彼がこうして戻ってきてくれることが、エレナにとっては何よりも嬉しいことだった。


どんなに感情が揺れてもそれを表に出してはいけない。

求めてはいけない。


目の前のいつ消えるかも分からない幸福を掻き抱く。

ドロドロとした思いが溢れ出て、彼を、私を傷つけてしまわないように。

今日も私はシアワセで塗りつぶす。

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