第7話

夜風がそっと吹き抜ける中、俺は華乃の瞳を見つめ返した。


「……そっか。」


それしか言葉が出てこなかった。


華乃がずっと俺のことを想ってくれていたなんて、夢みたいで、でも確かに現実で——。


「……びっくりした?」


華乃が少し恥ずかしそうに微笑む。


「……いや、めちゃくちゃ驚いた。でも、なんか嬉しい。」


俺が正直にそう答えると、華乃の表情がふわっと和らいだ。


「ふふ、よかった。」


そう言って、華乃はまた俺の手をそっと握った。


さっきよりも、ほんの少しだけ強く。


俺はその温もりを感じながら、そっと握り返す。


夜の静けさの中、俺たちはしばらく何も言わずに、ただ手を繋いで立っていた。


「……そろそろ帰らないとね。」


華乃が名残惜しそうに呟く。


「……そうだな。」


本当はもっとこの時間が続けばいいのに、と思いながら、俺は華乃の家の門の前まで歩いた。


華乃は一度俺の顔を見て、ふわりと微笑む。


「……今日はありがとう。深堀と一緒に帰れて、楽しかった。」


「俺も。……また、塾の帰り、一緒に帰ろうか。」


俺がそう言うと、華乃は少し驚いたように目を見開いたあと、嬉しそうに笑った。


「……うん、また一緒に帰りたい。」


そう言って、華乃はそっと手を離し、家の中へと入っていった。


俺はしばらくその場に立ち尽くして、夜空を見上げる。


——ずっと片想いだと思っていた。


でも、華乃も同じ気持ちでいてくれた。


なんだか、今夜の星がいつもより輝いて見える。


「……また、明日。」


小さく呟いて、俺はゆっくりと家へ向かって歩き出した。

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