夜風に溶ける想い

輝人

第1話 塾の帰り道

塾の授業中、どうしても眠気に抗えなかった。ノートを取ろうとするたびに、意識がふわふわと浮かんでは落ちていく。気づけば数秒間、意識が飛んでしまっていた。


(やばい、ちょっと寝ちゃったかも……)


ふと後ろを振り返ると、偶然にも華乃がいた。同じ列の、ちょうど俺の後ろ。授業中、俺が寝落ちしていたのを見られていたかもしれない——そう思うと、なんとなく恥ずかしくなった。


授業が終わり、教室を出てエレベーターに乗る。数人の塾生と一緒に静かに降りながら、なんとなくスマホを取り出すと、LINEの通知が目に入った。


「ちょっと寝てたでしょ?」


ドキッとする。まさか気づかれてた? いや、そりゃそうか、すぐ後ろにいたんだから……。


俺は少し照れながら、スマホの画面を見つめた。どう返信しようか迷いながら、ふと顔を上げると、華乃が少し離れた場所でエレベーターを降りて、俺の方を見ていた。


目が合った瞬間、彼女はクスッと笑った。


(……完全にバレてるな。)


仕方なく、俺はスマホを打ち始めた。


「……バレてた?」


しばらくして、また通知が鳴る。


「バレバレ(笑)」


そのまま駅に向かう道のり、俺はほんの少しだけ、温かい気持ちになった。

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