『10カウントの告白』リングサイドの約束
ソコニ
第1話 一つ目の証言(カウント10)
語り手:元ボクシングチャンピオン・城之内剛
グローブを捨ててから10年。あの夜、黒川ジムに集められた時、俺は直感的に悟っていた。過去が俺を追いかけてきたことを。
ジムは10年前のままだった。埃を被ったサンドバッグ。色褪せたポスター。そして、あの時と変わらぬリングの匂い。壁には俺の最後の試合のポスターが、今も貼られていた。
黒川からの呼び出しメールには、不穏な言葉が。
「10年前の真実を話す。関係者全員に伝えなければならない事実がある」
集められたのは7名。
水上洋子:当時の試合を取材したスポーツライター。八百長疑惑を追っていた。
田中誠司:レフェリー。あの試合の判定に、今も疑問を持つ男。
村上健一:元トレーナー。試合後、突然ジムを去った。
山田康平:試合の放映権を持っていたテレビ局P。
佐藤美咲:黒川の秘書。裏帳簿を管理していたとの噂。
松本大輔:当時の対戦相手。引退後、姿を消した。
そして俺、城之内剛。元チャンピオン。あの試合で全てを失った男。
午後8時、ジムに集合した俺たちを待っていたのは、静まり返った館内。黒川の姿はない。
「待てよ」村上が眉をひそめる。「靴箱に黒川さんの靴があるぞ」
俺たちは手分けして館内を探した。そして午後9時、リングの上で黒川の遺体を発見。両手首に巻かれた真新しいテーピング。そこには鮮やかな赤字で「COUNT 10」の文字。
死因は絞殺。使用された凶器は、ボクシングのハンドラップ。プロでなければ、あそこまでの締め上げは難しい。
現場の違和感が、俺の目に突き刺さる。
リングロープの張り具合が普段と違う。誰かが調整したようだ。
黒川の腕時計は10時で止まっている。しかし、発見時刻は9時。
更に気になるのは、リング脇に落ちていた古い新聞切り抜き。10年前の試合を報じる記事。見出しには「疑惑の判定、八百長か」の文字。
黒川は何を語ろうとしていたのか。そして、なぜ「COUNT 10」なのか。
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