凍結
2020年11月25日、いつものようにTwitterを開いたボリスは凍り付いた。アカウントが凍り付いていたのだ。「ご利用のアカウントはロックされています」と画面に表示されている。俺は何もわるいことをしていないぞ。暴言も売買春も誹謗中傷もみんなやった覚えがないのになんで俺が。
さらに下を見ると書いてある。
「なりすましを禁止するルールに違反しています。意図的かどうかにかかわらず、他の人を誤解させたり欺いたりする方法で個人団体組織をなりすますことは出来ません。」
いやおかしいだろ、なんで「ボリスジョンソンだよお!」という半ばふざけた名前がなりすまし扱いされるんだよ、こんなん勘違いするやつ誰もいないだろ。
さらに読んでみる。「パロディアカウントを作成する場合はポリシーに従ってください。以下が違反しています。プロフィールの名前、プロフィールの自己紹介。」
いや改めて自分のプロフィールを見てみても特に誤解させる要素は何一つないのだが。きちんと本物のボリスのアカウントへ誘導もしている。で?名前と自己紹介がまずいのか。ええと規約を見てみるか。
「偽、parody、fakeなど、自分がパロディアカウントであることを明記してください。」
規約なんてあんな長いだけの文章誰も読まないだろうに。とりあえず名前とプロフィールを変更してみるか。
ボリスは名前とプロフィールをすぐさま変えると、はたしてアカウントロックは解除された。
すぐに、なりきり仲間も同じ目にあっていないかとても心配になったので、ロックされていたことと無事ななりきりはリプを送ってほしい旨、彼はツイートした。
やがてモン安倍やバイデン、トルドーなどは生存報告を送ってきた。彼らもまた同様の目にあったらしく、名前や自己紹介に偽やfakeの文字が追加されていた。名前の変更はやむを得なかったがみんな無事で何よりだ、と全員がほっとしたが、同時にボリスはふと気がついた。
マクロンとプーチンはどこだ。
ボリスは虫の知らせを感じつつ検索をかけたが、見当たらない。どうしたものかと無事を祈っていると、プーチンアイコンが通知に現れた。安堵の息をつきつつ返信を読み、そしてボリスは衝撃を受けてしばし硬直した。
「プーチンのサブです、本垢凍結しました。」
みると確かにフォロワーが3人となっており、アカウントの作成時期も新しい。
やがて少しして、以前から知っていたマクロンのサブ垢が、「凍結しました」とこれもリプを送ってきた。
ボリスは深く嘆いた。あの二人の何がダメだったんだ。あの二人とはフォロワー戦争をしていたのに。いくら俺と差がかなりついていたとはいえ、こんなことで1位を確定的にしたくはなかった。
するとそれを察したかのようにプーチンは優しく返信した。「フォロワーなんてまた頑張って増やせばいい。ボリスが無事でよかったよ」と。マクロンも、そうだぞと同調した。
この騒動を受け、ボリスはいよいよ自分がなりきり界隈の第一人者となる自覚を強くしていき、フォロワーも順調に7000人近くまで伸ばした。
朴槿恵など新たななりきりも数名増えたことで、いよいよ界隈は年越しを迎え、激動の2021年に突入していく。
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