星の理(ことわり)を紡ぐ者
まさか からだ
第1話 不幸な日常
璃久(りく)は、都会の喧騒の中で一人、孤独を抱えて生きていた。彼の生活は単調そのもので、朝は満員電車に揺られ、昼は無感情で仕事をこなし、夜は狭いアパートでスマホの画面を眺めるだけだった。
「何のために生きているんだろう?」
そんな疑問が、最近ますます心の中で膨らんでいた。
周囲を見渡せば、誰もが自分より幸せそうに見える。同僚たちは昇進を競い合い、友人たちは次々と結婚していく。それなのに、璃久の心にはぽっかりと空いた穴があるだけだった。まるで、自分だけが世界から取り残されているような感覚だった。
ある深夜、疲れ果てた体でベッドに横たわっていた璃久は、奇妙な感覚に襲われた。部屋の天井が突然、星空に変わったのだ。漆黒の夜空に瞬く無数の星々が、まるで何かを伝えようとしているかのように煌めいている。
「璃久…聞こえますか?」
女性の優しい声がどこからともなく響いてきた。現実とは思えないが、夢とも思えない。声は穏やかだが、その奥には何か重みがあった。
「誰だ…?」
璃久は思わず呟いたが、返事はなかった。ただ、部屋の空間が変化していく。星々が螺旋を描きながら動き出し、光の渦となって彼の体を包み込んだ。
突然、璃久は真っ白な空間に立っていた。足元に広がる無限の光の波紋。空には巨大な星座が描かれ、煌めきの一つ一つが言葉にならない感情を璃久の胸に届けた。
「あなたは、ここで答えを見つけるでしょう。」
先ほどの声が再び響く。そして、彼の目の前に一本の光の道が現れた。その道の先には、まるで息をしているかのように脈動する扉があった。
「これは…運命なのか?」
扉に手を触れると、星々が激しく輝き、一気に世界が反転した。次の瞬間、璃久は異世界「ルミナス」の大地に立っていた。風に香る草花の匂い、澄み渡る空気、そして空に浮かぶ巨大な星のような月――そこは彼がこれまで見たどんな景色とも違っていた。
「ここは…どこなんだ?」
目を覚ましたばかりのように、璃久は世界を見渡した。その時、星の形をした小さな光が現れ、彼に向かってこう告げた。
「璃久、あなたの旅はここから始まります。宇宙の真理を紡ぎ、この世界を救うのです。」
璃久の胸に、不思議な高揚感と共に、一抹の不安が広がっていった。彼の人生の歯車は、確実に新しい方向へ動き出していた――。
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