第十五話
「椎名?」
怒っているのが目を閉じて聞いてもわかる程低い声だった。
この感じ、いつもの感じとは違い、結構ヤバそうな気がする。
「なんです?」
椎名のその目は普段可愛らしい感じとは違い、鋭い眼光だった。
「いや、なんか、ごめん」
「先輩、それは何に関して謝ってるんです?」
「その、何に関しては分からないけど、怒らせたようだったからさ」
「理由もわからず謝るのはよくないと思いますよ?」
「その、ご……はい」
またごめんって言いかけた。
ごめんて言おうとするのも不味い気がしたのでそう返すと、椎名は立ち止まる。
「先輩」
「うん?」
「私と居るのって迷惑ですか?」
不安そうな落ち込んだような瞳で見てくる。
もしかして、僕が嫌々彼女と帰っていると思われたのだろうか?
違う、そうじゃないんだよ。
「迷惑じゃないよ」
「そうですか」
嘘をついてますって言わなかったな。
まぁ嘘じゃないんだけど。
僕に関してはさほど迷惑じゃない。
問題は椎名が僕と居る事で迷惑じゃないかという事だ。
「椎名はどうだ?」
正直、聞いてみたかった。
中学時代仲のよかっただけの先輩後輩だから心配してとかだったら、嫌だから。
「どうとは?」
「僕と帰るのは嫌じゃないか?」
「そんなことないです!!」
おっきな声で言うからびっくりしたぁ~。
「むしろ……何でもないです!!」
「そ、そうか」
「むしろ」何だろう?
気にはなったが、いいたくないのなら聞かない方がいいな、うん。
「そ、それじゃ、これからは別に一緒に帰ってもいいですよね!?」
「それは、待ち合わせで良ければ」
「じゃあ明日は教室に迎えに行きますね!!」
「やめてくれ本当に」
「あはは、わかってますって。 心配しないでくださいよぉ~」
本当に来そうだから本気か嘘かわからねぇんだよ!!
椎名は常に冗談ぽくいうので、わかりにくいのだ。
「先輩」
「なんだよ」
「これからも一緒に帰りましょうね」
そう言って夕焼けを背に彼女はにこりと笑う。
眩しい、彼女の笑顔だけでなく夕焼けが。
「そうだな」ッと答えると、彼女は僕を下から覗き込むような上目遣いで「嬉しいですか?」というので、「まぁな」っとそっけなく返す。
その仕草狡いんよ。
でもまぁ、椎名と帰るのは楽しい。
一挙手一投足彼女が楽しそうなのもあるだろうが、彼女を見ていると暗い気持ちも夕焼けのように明るくなる気がするのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます