高校3年の秋~覚悟
雷道:「ありがとね。受験勉強で忙しいのに企画してくれて」
不知火:「ううん、それとこれは別。それに私もたまには2人と会いたいなって思ってたし」
そういうとナギはメガサイズのハンバーガーに豪快にかぶりついた。
GPの配信を見たナギが、私が風源に勝つために、いつものマックで作戦会議をしよう!、と企画してくれたのだ。
不知火:「ボディフックのようなアッパーのような、けどパンチの起動は直線的だからストレートになるのか。あのボディフックのフォームで打ってくる左ストレート。まさに必殺技ってやつだね」
一色:「GPでも3試合、全てあのストレートでKOしてた。去年のGP以降は全部で6試合してるけど、全てあのパンチで倒してる。矢吹から聞いたけどスピードもあって反応できないと」
不知火:「戦うにあたり、ローキックは有効だと思う。パンチを打つとき、重心を乗せてるから、ローがきけば踏ん張れなくなって打撃力は自然と落ちる」
雷道:「あとはローが効くまでになるべくパンチをもらわないようにしたい。ボディと打ちわけてくるから、そこの見極めも重要になってくる」
不知火:「でもスピードもあるとなると見切るのは難しい」
清家:「そのパンチに真正面から向き合うしかないよ」
メガサイズのハンバーガーにポテトと飲み物をトレーに乗せたナオが突如として現れ、得意気に座った。
一色:「ナオ、予備校の授業があるから来れないって聞いたけど」
清家:「かつて激闘を繰り広げたエレナちゃんが、また新たなる強敵に挑むと聞いたらいてもたってもいられなくて。教室から飛び出して来たよ。ふふっ」
そういうとハンバーガーに豪快にかぶりついた。
不知火:「さすが私の親友だね! でも向き合うってどうやって?」
清家:「威力、スピードともに並みじゃない。風源はあのパンチに全てをかけてる。練習量もきっと私たちの想像をはるかに越えてる。つまり防ぐことは出来ない。だったら向き合うまで。あのパンチを浴びまくる前提でいかないと。けどエレナちゃんのローの威力も負けてない。喰らい続けたら立てない。これはまさに斜めストレート対ローキック」
不知火:「そうか、風源の打撃が当たるとき、それはエレナちゃんのローも当たる距離だってことか」
一色:「我慢比べとは言わないけど、あのパンチをもらう前提で、耐えながらもローキックを返す、死闘必須の覚悟がいる戦いになるね。あとテクニックな部分で言うと左に動き続けること。風源は近い距離でもあのパンチ打つけど、遠い距離では打たない。少しでも距離を離せるよう、エレナは左側に、つまり風源にとって右側に移動しながらローだね」
ナギは勢いよく立ち上がった。
不知火:「外をとれ!(左側に動いて前足を相手の前足より外をとる) そして到達速度がより早くなるようローは前足の膝の真上を狙う! 斜めストレートかローか、必殺技対決を制するのみ!」
私も反射的に勢いよく立ち上がった。
雷道:「みんなありがとう! 私、絶対勝つから!」
*
帰宅後、真っ先に自分の部屋に籠って、改めて試合までの練習プランを自分なりに練り直した。朝や夜のランニングといった自分で出来ることや、ジムでの追い込み練習や強化ミットのメニューを考えたりした。
「エレナ、部屋に入ってもいい?」
お母さんだ。
「いいよ」
部屋に入るなりお母さんは少し不安そうな顔をしていた。部屋が散らかってるからとか、勉強してないから、ではない。グローブや防具が目に入ったからだろう。
「夜ご飯出来たよ。最近も帰り遅いから心配になって部屋に来てみたけど、やっぱりまだ続けてるみたいだね」
私は心配や隠し事はしたくないから正直な思いを明かすことにした。
「私はこの競技と出会って、良かったって思ってる。練習や試合を乗り越えて自分に自信が持てた。笑ったり泣いたり悔しかったり、色々あった。何より大切なお友達が出来たんだ。
そんな中で去年、お母さんに内緒で大会に出て怪我とかもして、めっちゃ叱られたよね。私はお母さんに心配させたくないから高校卒業したらキックボクシングも卒業することにした。
けど最後に1つだけお願いがあって。
あと2試合だけさせて。私、どうしても倒したい子がいて。私、その子を倒さないと前に進めない気がして」
「倒したい子は、レイナちゃんを怪我させた子だよね」
「そうだよ」
「いいわよ。ほんとは止めたいけど。その子と試合しなさい。けど私からもお願い。例えその子に負けたとしても、前に進むこと」
「分かった。勝っても負けても私は前に進む」
お母さん、ありがとう。
私は倒す覚悟も倒される覚悟も出来ている。
あとは来るべき1戦にむけて、私は全力で駆け抜けるだけ。
*
物語も終盤へ
次回、エレナ、風源に挑む。
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