その武器に何を思う

人鳥迂回

プロローグ

「私を使って」


「使うって一体何を……」


 彼女は青年の手を握りロージスに思いを伝える。


「私は武器。この場を切り抜けるならその方法しかない」


「いや、お前は人間じゃないか」


「ちがう。私はアーティファクト。戦うために生まれた武器」


 何をどう見ても彼女は人間だった。

 ただ、彼女は自分のことを武器だという。戦うために生まれた武器と。


「私のあとに続いて同じ言葉を言って」


「いや、おい、待て」


「時間がない。そうすれば私と契約できる」


 何がなんだか分からない状況だが、このままでは青年も彼女も捕まってしまうかも知れない。背に腹は代えられない。


「分かった。契約をするから頼む」


 ロージスのその一言のあと、リーナの身体は赤い光に包まれた。その光は燃え上がる炎のようだったが熱くはない。むしろ心地のいい、人の温もりのような熱を持っていた。


『熱き魂。焦がれるその身に何を望む』


 リーナのあとに習いロージスも同じ言葉を詠唱する。


『この身に望むは炎。燃え盛る火は何者にも消せはせぬ』


『幾許の時を掛け、燃えるその身に焦がれし思い』


『再びのその契約の火を灯す』


 リーナは口元に人差し指を持ってきて少し喋らないようにとジェスチャーで伝えていた。ロージスも声を出さずに頷く。


「我が名はリーナ・ローグ」


 ロージスの方を指差し、名乗りを促す。


「俺の名はロージス・グレンバード」


 名乗った瞬間、先ほどまでリーナを包んでいた赤い光が、ロービスも一緒に包み始めた。自分の身体が燃えるように見えていても、誰かに抱きしめられているような、そんな温かさを感じる。


「(一緒に唱えて)」


 頭の中にはリーナの声が響く。


『2つの炎。混ざり合い、1つの火となり業火となる。燃えて、燃えて、燃えて。消えぬ炎を魂で燃やせ』


 何を言えばいいかが頭の中に響いてくる。その言葉をリーナと詠唱をした。


 最後の詠唱を終えた時、その場にはロージスと殺人鬼の男しかいなかった。


 そしてそのロージスが持っているのは真っ赤な刀身を持った一振りの燃えるような剣であった。

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