第19話 災厄を打倒した報酬

「うわぁ」


 気絶させたかいがあった、と、言うか。腕を切り落として、そのまますぐに壁と床の境目を狙って、先の黒い石が入るだけ糸を伸ばしてから一気に横に振りぬいたら、ハウスミミックは、意外なほどあっさり倒せた。次からは、最初からあそこを狙おうと思う。

 そして、どうして倒せたと分かったかって言うと、当然、魔石が出たから。ただ、同族か、下位互換になるミミックは、倒すと魔石じゃなくて、宝箱をその場に残した。これを落としたって言う。ゲームとかの、ドロップ品、っていう言い方がそうだから。

 で。ミミックがそうなんだから、ハウスミミックも、魔石がごろんと転がるんじゃなくて、何かに入った状態で出てきた、って事に、なるんだけど。


「……すごーい」


 もう一回、すごい叫び声みたいな音が聞こえたのはびっくりしたけど……そこから、毛足の長い絨毯みたいになった床とか、扉があった場所の口みたいなのとか、根元で切り落としたから結構お肉っぽい断面が見えてた腕とか、そういうのが消えた後で、今度は普通の、何の飾りも無い扉が出て。

 両開きだったから、かなり警戒したんだけど。それはダンジョンの、ボス部屋を含めた他の扉と同じく、外側、手前側に開いたから。警戒しながら、中を見たら……。


「って、あれかな? 宝部屋の噂って、もしかして、ハウスミミックの討伐証明?」


 ずらーっと、そこそこ大きい部屋にびっしり、宝箱が並んでた。そう、噂に聞く、宝部屋みたいに。

 噂になっているからには、何か元があるんじゃないかなぁとは思ってたけど、もしかしたらこういう事だったのかもしれない。あぁ、なんで腕輪の機能が制限されてるんだろう。普通に使えてたら、絶対写真撮ったのに。……借金返済ダンジョンだからか。そうだね。

 でも一応、と、ギリギリ間を通り抜けられる隙間だけが空いている宝箱の間を通って、罠が無いかだけを確認していく。ミミックのドロップ品なら、罠は無いはずだけど……あぁ、うん、大丈夫。一応全部見たけど、罠は無かった。


「壁……も、異常なし。天井……も、大丈夫。……床は、流石に分からないかな」


 こんなの初めてだから、思わずこれでもかと警戒したけど……一応。ハウスミミックのドロップ品、というだけあって、この部屋自体に仕掛けは無いみたいだ。それこそ、ミミックが落とす宝箱と同じく。

 まぁ、気づく難易度も高かったし。気づいてからも、戦うのは大変だったし。それを考えたら、これぐらいはあっても、おかしくない、のかな? モンスターハウスと比べるのはおかしいかも知れないけど、比べるとしたら、それが出てくるし。

 でも、お楽しみの報酬だから。これ以上は引っ張る意味も無いかな。と言う事で、端っこから順番に開けていく。あっ、すごい。魔石が入ってるのは変わらないけど、1つ1つがすごく大きいし腕輪に回収したらかなりのEになる。返済がすごい勢いで進む。


「もしかしなくても、ハウスミミックだけで、モンスターハウス全体と同じくらい稼げる……?」


 やっぱりモンスターハウス全体と、ハウスミミックがほとんど同じかぁ。……うん。それぐらいには厄介だよね。それは、そう。私だって、爆発する魔法のカードを、10枚一度に使ったんだし。

 開いた宝箱が消えるのも変わらないし、宝箱が消えた床を調べたけど、そっちにも特に何もない。部屋全体がドロップ品、っていうのは、たぶん間違いない。まぁ、それはそうか。部屋がドロップ品、っていうのは、何度考えても変な感じがするけど。

 それでも毎回、罠に気をつけながら宝箱を開けて行ったら、半分ぐらいかな。というか、部屋の真ん中だ。そこにあった宝箱には、魔石じゃないものが入ってた。


「……? なんだろう、これ」


 見た目だけを言うなら、茶色い革で出来た腕輪と、そこにキーホルダーみたいについてる大きい鉄の鍵だった。ただ、鍵自体が大きい。私の手よりも大きい、というより、便利に使ってる万能ナイフぐらいはある。鍵だとするなら、こんな大きな鍵を使う扉は、巨人が使うような大きさになると思う。ダンジョンではそこそこあるけど。

 輪っかから棒が伸びて、その先に短い鉄の棒が3本伸びてる鍵。腕輪がちゃんと働いていれば、見たことのないものでも調べられたんだけど……まぁ、それについて文句を言っても、何も変わらないから、仕方ないとして。

 ドロップ品、というか、宝箱から出てくる、魔石以外のもの。その時点で貴重ではあるんだけど……武器ではないよね。なら、使い切りの便利な道具だ。何に使うかは、全く分からないんだけど。


「どっか、この鍵でしか開かない扉でもあるのかなぁ……」


 部屋の真ん中の宝箱から出てきた、っていうのもあるし、何か特別なものではあるんだと思う。だから、ダンジョンで見つけた素材を入れておく、前側のウェストポーチに、しっかりとしまっておいた。

 後の宝箱は、全部魔石だった。……10枚、手前のモンスターハウスも含めたら、20枚近く魔法のカードを使ったから、1枚ぐらい出ても良かったんじゃないかな。補充したかった。借金は、大分返せたんだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る