第10話 初めてのボス戦
「ていうか、私たち勝てるんですかね……」
「まあ、ぶっちゃけかなり確率は低いだろ。
そもそも、最優先はエクセア連れて逃げることだし」
俺たちは、ボスを探していつもの狩場の更に奥……草木生い茂る森の中に入っていた。
どこを見渡しても、伸び切った草や木が邪魔して視界が悪い。
早くボスを見つけなければと言う焦りがあることも見つけられていない原因かもしれない。
「そういえばさ、皆20レベル超えたんでしょ?」
「ええ、そうですね……そういえばアリビアももう30レベルでしたっけ?」
「そうなんだよ、だから新しくスキル覚えたんだ!
軽量化、身軽になって早く動ける強化呪文!」
……もうこれ以上素早さいらないだろ。
とはいいつつも、今回はキーパーソンといえるかも。
エクセアを抱えていたとしても、アリビアに追いつくのは中々難しいはずだ。
「えっと、私が新しく覚えたのは……」
「ちょっとストップ!あっちの方見てみて……。
もしかしたら、あそこにボスがいるのかも」
ギャンブルさんの掛け声で、一回雑談をやめて息を潜める。
草木をかき分けて覗いた先には、確かに遺跡らしき建物が見えていた。
「……どうしましょう?」
「入るしかない、変わらず私が先導するからついてきて」
全員がギャンブルさんの言葉に頷く。
遺跡の中は暗くて、足音が反響している。
静かに行動しているとはいえ、元があまりの静寂だ。
もし、ここにボスがいるのならば俺たちに気づいているはずなのだが……
「ようこそ!」
急に照らされる遺跡。
来客が来たことを喜ぶ、大きいハニワみたいなモンスターは陽気にダンスを踊る。
「君たち、最高に上がってるね〜!
おっと、安心してよ……君たちの探し物はこれだろ?」
スポットライトが当たった先には倒れているエクセアの姿があった。
地割れが起きて、彼女は地面に吸い込まれていく。
「彼女は心配しなくてももーまんたーい!
神様っていうのは死ぬことがないんだぁ!
目を覚ますなら、恐らく一週間後くらい……かな?」
ああ……死んだわけじゃなかったのか、良かった……とは全くならない。
ボロボロになって倒れる彼女を見て、どうしても怒りを抑えることはできなさそうだ。
「ま、どう思ってるにせよ……僕を倒しちゃえばそれでいいっじゃーん!
女神の姿を隠したのは、前みたいに逃げられないようにするためさー!」
落ち着け……一旦逃げることはできず、やつを倒さなくちゃいけないことが確定してしまったらしい。
全く、異世界に来てまだまだ初心者マークが剥がれていないくらいのレベルだっていうのに。
やっぱりあの女神様には、説教が必要だな。
「けど悪い、こんな遭遇早いと思ってなかったからまだ罠仕込んでない!」
「……ふっふっふ、そうか。
だったらようやく、私の出番のようだね」
前に出てきたギャンブルさん。
そういえば、彼女の職業はよく分かっていない。
俺たちが不安そうに見つめる中、彼女が取り出したのは5枚のカードだった。
「ふっふっふ……ずばり私の職業はギャンブラー!
今からこの5枚のカード、そのうち1枚を引いてもらうよ!
カードの中身は毒、麻痺、鈍足、私へのダメージ、私が鈍足になる……だ!」
ハニワはそれを無視して、ギャンブルさんを殴ろうとするが謎の壁に守られる。
本当に、このギャンブルが終わるまでは全員が全員無敵状態ということらしい。
「なるほど、じゃあ引いちゃうぜー!」
ハニワは迷うことなく、カードを引く。
出てきたカードは、毒。
「賭けに勝ったのは私……ふふっ、やはり私はギャンブルにすこぶる強い……」
いや、あんたこの前財産ほぼ失ってただろ。
無敵状態が解かれて、毒がハニワに付与される。
……が、あまり変わらないように見えた。
「おっとー!残念でしたー!
そういえば、俺身体が陶器で出来てるから状態異常とか効かないんだったー!」
「……ふっ、すまない。
私の攻撃はどうやら無駄だったみたい……ぶっ!」
今度こそ思いっきりぶん殴られたギャンブルさんは身体がとんでもないスピードで吹っ飛ぶ。
「スーパーヒール……流石に相性悪かったですね……」
「でも、俺も準備ができた。
俺が殴ったらすぐ回復よろしく!」
次は俺の番だ、両手につけた爆破罠で思いっきりハニワのことをブン殴る。
結構な威力の爆発、これはハニワもただじゃ済まない。
「……なんて、思っちゃったかなー!?
ザンネーン、俺は身体が陶器で出来てて火や熱に強いから問題なし!」
……くそっ、俺の攻撃も全く通らない。
そもそも防御力もちゃんと高いらしい。
「嘘……頼みの綱である二人の攻撃が届かなかったらもうダメじゃないですか!」
「いや、どうかな」
「どうかなって、残ってるのは私とアリビアだけ……」
そうヒーコが言った瞬間、アリビアはもう飛び出している。
「軽量化!」
そういって遺跡内を走り回るアリビアとつい最近した会話を俺は思い出していた。
―
「ねぇ、颯太に相談なんだけど。
私にも、攻撃を届かせる手段ってないかな?」
「攻撃力を上げずに……まあ、こっから攻撃力上げ始めたらどうしても、他の騎士の劣化になっちゃうもんね」
「そうなの!だから素早さを活かしたこうげき……颯太みたいに攻撃力に依存しないやつ……」
「うーん、一つだけ……一つだけならアイデアはある。
それにはまず、武器を変えてもらわないといけない」
―
少し前まで、アリビアの武器は剣だった。
だけど今、彼女の手に握られているのはレイピア。
「走れ、走れ、走れ、走れ!」
彼女はどんどんと自分のスピードを加速させていく。
ハニワ、お前は自分で言ってたよな。
自分の身体は陶器で出来てるって……。
だったら、苦手なんじゃないのか?
狭い一点に当てられる、超速の突きは!
「いっけー!!
これが私の必殺技だあああああああああ!!」
アリビアが撃ち放ったその突きは、ハニワの身体にヒビを入れる。
どんどんと広がっていくそのヒビで身体を保てなくなったハニワはバラバラに崩れ去った。
「「やったあ!!」」
俺たちの勝利、アリビアが嬉しそうに俺へピースサインを送ってくる。
俺もアイデアが通用したのが嬉しくて、照れたように彼女に笑顔を返す。
「……あーあ、陶器……いいと思ったのにな」
そんな声が聞こえた瞬間、ハニワの破片がガタガタと震え出す。
「やっぱり……信じるべきは……」
欠片が浮き上がり、集結して黒光したその姿を見せる。
「信じるべきは……マッスルだー!!!」
倒したはずのハニワは姿を変えてまた俺たちの前に立ち塞がる。
……ふざけんな、これっていわゆる第一面のボスだろ?
だったら何で、第二形態なんかあるんだよ!!
「今度はこのマッスルで、お前らを潰すYO!」
どうやらここからが、地獄の始まりのようだ。
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