手記

X月XX日

 聞いたことのない村の取材に行くように指示された。しかも、明日から。編集長は独身をなんだと思っているのか。他のメンバーは育児時短と派遣と新卒だし、なぜか新卒の教育係は俺だし。暇そうな編集長が行けばいいのに。こんな売れないオカルト雑誌部なんて、さっさと廃刊になって責任問題で飛ばされてしまえ。俺はこんなことをしたくて出版社に入ったわけじゃないんだ。


X月XY日

 取材先の村──山々村というらしい、は変な村だった。ちょっと前にSNSでバズった因習村を体験できると銘打ったツアー(と呼べるかすら定かではない)が今回の取材対象だ。とにかく命令を聞け聞けうるさい。スタンプも民家だの井戸だのイマイチ設置基準が分からないし。そのくせ、村民もニコニコ笑っていて不気味だ。そこまで村ぐるみでやるか? 普通。


X月XZ日

 今日は朝から気持ち悪かった。朝食中は知らん奴(おそらく神主の身内だろう)にじっと見られているし、目玉の企画らしい祠壊し体験もかなり年季が入った祠で、俺が壊さなくても勝手に崩れるだろって感じで壊した感が無かった。しかも、祠を壊した後はあれやれ、これやれ、が昨日以上にうるさかった。目玉企画だからなのか、村人はみんなテンション高いし疲れた。昨日とは別の部屋に移されるし、なんなんだ。


 月  日

ふざける な

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