第6話 トカゲの化け物

「ふー、さぶっ」


時計を見ると朝の6時。すっかり冷えてしまった室内。吐く息さえ白くなっていた。LEDランタン片手に、ストーブに薪を焚べて火を付ける。


「かなり積もったな。」


再び毛布に包まりながら外を眺めると、庭の物干しが半分位雪に埋もれていた。


「今日は1日雪かきだな。」


ぼんやりそんな事を考えていると、ストーブの上のヤカンが沸いてきたので、インスタントコーヒーを入れる。起きてからここ迄が、冬の朝の習慣になっていた。

コーヒーを半分ほど飲むころには、部屋も暖まってくる。モゾモゾと着替えを済ませ、ストーブで目玉焼きとパンを焼き、マヨネーズたっぷりのオープンサンドにした。カイは、ここ10年ほど毎日このメニューだ。


「毎朝食べてるけど、飽きないんだよな」


雪はほぼ止んで、薄い雲が明るく白み始めていた。

皆んな昨日は遅くまで飲んでいたから、まだ寝てるだろうしな。もう少しゆっくりするか。

そんな事を考えながら、雲の切れ間から登って来る朝日を見ていた時、


「うわー!!」


ヒロの叫び声だ。外に出て見ると、ヒロがログハウスから下着姿で飛び出して来て、雪をかき分けながら叫んでいた。


「カイ!カイ!助けてくれ!!」


「おい!落ち着け!」


ログハウスとこの小屋は15メートル程しか離れていない。それでも雪が腰の辺りまで積もっているので、ヒロがたどり着くまでに身体は赤く腫れ上がってしまった。

転がり込む様に小屋に入ると扉を閉め、寒さからか顔面を蒼白にして震えている。


「おい!しっかりしろ!」


タオルと毛布で包みストーブの近くに連れて行く。


「化け物だ!あそこに!」


「おい!ヒロ!?」


「アキが食われちまった!」


「なんだって!?」


「あそこに!ログハウスのベットに、トカゲの化け物がいるんだよ!!」


パニックになっているヒロは理由のわからない事を叫び、ガタガタと震えていた。





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