限りなく人間に近い僕達
cowori
第1話 真冬の山
北海道の有名な観光地に新たなスキー場がオープンした。
今日はオープン記念式典が行われており、それに合わせたイベントが開催されている。
屋台や出店が並び、多くの観光客や地元の人々で賑わっていた。
隣接して建てられたホテルは煌びやかにライトアップされ、中では特別に招待された会員限定のカクテルパーティーが開かれているらしい。
何でも、有名な芸能人や政治家の人達も参加しているようだ。
小雪がチラつく今夜は、クリスマスイブ。デートには最高の演出ではないだろうか。それぞれが幸せそうに、この特別な夜を楽しんでいた。
毎年この時期には腰の辺りまでの積雪があるのだが、今年はまだ足首位までしか無い。それでもスキー場がオープン出来たのは人工で雪を積もらせる機械を駆使した結果だった。スキー場のオーナーは外国の資本家らしいので、それも可能であったのだろう。地元企業や自治体では、ここまでの資金力など無かった。
実際に観光客の呼び込みや施設で働く人々の雇用などの経済効果は、この過疎化した地方に暮らす多くの人達に期待されている。
そのスキー場から少し離れてはいるが、若者達で作っているエコビレッジがあった。森に囲まれ、車の通れるほどの道も無い小高い丘の上。大き目のログハウスを中心に、バンガロー風の小さな家が3軒。自分達で建てたのであろうか、多少不格好だが温かみのある家がある。
ログハウスの煙突から立ち昇る煙がなだらかに流れ、まるで天に昇る階段のようだ。窓から漏れる灯りも優しく揺れて、ギターに合わせて楽しそうな歌声が聞こえる。
チラついていた小雪が、いつの間にかヒラヒラと舞うような雪に変わり、これから積もりそうな空模様である。風も殆ど無い森の夜は、只々静かに更けてゆくのだった。
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