セイレンと感情のしずくの星

まさか からだ

第1話 感情の星からのささやき

 セイレンは、村はずれの丘にあるお気に入りの大きな木の下で寝転んでいました。夜の空には、星がたくさん瞬いています。ひんやりとした風が肌をなで、草の香りがふんわり漂います。セイレンは星を見上げながら、小さな声でつぶやきました。


 「どうして星って、こんなに遠いんだろう?手が届いたら、きっと何か秘密を教えてくれるのに…」


 そのときです。ひときわ明るく輝く星が、静かに光りながらセイレンに向かってささやいたのです。


 「セイレン…聞こえますか…?」


 「えっ!?」セイレンは驚いて飛び起きました。星がしゃべった?でも、そんなはずない!


 もう一度、声がしました。今度は少しはっきりと聞こえます。


 「セイレン…あなたにお願いがあるのです。助けてほしい…」


 星の光がゆっくりと揺れながら、まるで涙を流しているように見えます。セイレンは胸がぎゅっと締め付けられるような気持ちになりました。




 「誰なの?どうして僕の名前を知っているの?」


 星の声は静かに続けます。


 「私は感情の星。この宇宙のどこかにある、小さな星です。でも今、その光が消えかけています。感情のしずくが、ひとつずつ失われてしまったのです…」


 「感情の…しずく?」セイレンは不思議そうに繰り返しました。


 「怒り、喜び、悲しみ、恐れ…。それぞれの感情が、星の光を支えているのです。でも、それが失われると、星は闇に包まれてしまいます。セイレン…あなたには、感情のしずくを集める旅に出てほしいのです…」


 星の声は、まるでお願いするように優しく響きます。セイレンは迷いました。自分にそんなことができるのだろうか?でも、星の悲しそうな声を聞いていると、どうしても放っておけませんでした。


 「わかったよ。その旅、僕にできるかはわからないけど、やってみる!感情のしずくを集めて、星を救うよ!」


 その瞬間、星の光が少し明るくなり、セイレンの胸の中に小さな温かさが宿りました。それは、旅の始まりを告げる「感情のしずく」からの最初の贈り物だったのです。

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