ボクのバレエな日常
かもライン
ボクはバレーがしたかった
日曜の午前9時半。平日ではないからラッシュはない。
電車に乗り込むと席はあちこちに空いているが、2人揃って座れるところは無かった。
ふと、こちらを見ていたオジサンが、何か嫌らしい目をしている気がした。
自慢ではないが、ママは美人だ。昔はタカラジェンヌだったと聞いたことがある。そのタカラジェンヌは辞めてパパと結婚したが、未だにその色は褪せていないと思う。ボクはそんな綺麗なママが大好きだ。
ママはその視線を、気にするでもなく無視するでもなく、さらっと
「この車両じゃダメね。隣に行きましょう」
ママはそう言って、連結から隣の車両に移動。ボクは黙って、その後ろから付いて行った。
隣の車両に来たが、この車両にも2人分の空は無い。ギリギリ座れない事もないスペースはあったが、ちょっと話しかけるには怖そうな大人が足を広げて座っている。
「ダメね。もう一つ隣行きましょうか」
隣の車両との扉を見たら、女性専用と書かれてある。
「ママ、女性専用車だよ。ボク行けないよ」
「小学生は大丈夫よ。ママと一緒だし」
「でも」
ボクは、今のこの車両内を見渡した。2人揃っては無理だが、1人ならゆったり座れるスペースはある。
「ここで良いじゃん。ボク立ってるよ」
「良いのよ。一緒に来なさい」
ママはさっさと女性専用車に入っていく。
「あ……」
ボクは付いて行くしかなかった。
入ってみたら、当たり前だが女性ばっかりだった。一瞬、みんなの視線がこっちを向いた。
『うわ』
嫌だな。この感じ。
やはり女性専用車だから、他の車両よりは空いていた。2人揃って座れるところも幾つかあった。
「ここでいいわ。座りましょ」
「でも……」
「いいの。貴方は小学生なんだから」
これは他の乗客たちにも聞こえるように言ったのか?
ボクは小学5年生だが、他のクラスメイトより背は高い。155cmはある。
でも顔はそれ程ゴツくない。ママに似て女顔で可愛いと言われる。嫌だけど。
ママは本当は娘が欲しかったんじゃないかと思う事がある。でもボクは一人っ子。下に妹も弟も出来なかった。
ちなみに今、ボクはピンク色の服を着ている。一応は男物の服だし、デザインもそんなに女の子っぽくないから良いけど、ちょっとユニセックスな感じもする。Gジャンとか黒ジャケットとか男々している服はママが買ってくれないし、野球やサッカーチームに入りたかったけど、ママが許してくれなかった。野球やサッカーは、もはや男女関係ないと思うけど、やはり男子主流のイメージがあるからか。
今回も何とか頼み込んで、スポーツセンターでやっているバレーボール教室の体験会に行く事は許してもらった。男女関係なく出来る、というより女子の方が主流なイメージの競技だからかな?
市民スポーツセンターはちょっと離れていて、最寄りの駅までは電車移動するしかなかった。
電車移動は良い。座席が無いのも仕方ない。でも男の子のボクが女性専用車で座るのは、はっきり言って居心地悪い。
今、こうしてママの横で座っていても、回りから好奇心の目つきで見られている様な気がする。
『あの子、男の子でしょ?』『何で、女性専用車に?』
そう思われている気がして、じっと目を瞑る。いっそ寝ているフリでもしようか。
ガタンガタン。
適度に揺れ、適度な騒音が、眠気を催してくる。
いいんだ。知らない、知らない。知らないふりして眠ってしまえば……。
☆
「ほら、アユミ、起きなさい。もう着くわよ」
ママの声だ。
いつしか、本当に眠っていた様だ。
「ホラ、こんなに足を広げて。ズボンだからいいけど、はしたないわよ」
え? どうして。いいじゃん、足広げたって。
それにアユミって、ボクはアユムだけど。
目を覚まして、前を見る。電車が駅に着く様だ。
「降りるわよ。早く立って」
「う、うん」
立ち上がって、足元のカバンを持つ。
ようやく女性専用車から出られる。
ドアが開くと同時に、電車から出た。
あれ? 何か違和感。なんだろう?
別に、何も変わっていない筈なのに、何かフワフワして、自分の身体じゃないみたい。
ママと一緒に、階段を降りていく。
まだ何か、夢の中みたいな。
あれ? あ……。ちょっと尿意。
「ママ、トイレ行く」
「そう? じゃ、ママも行くわ」
階段を降りたところに、駅のトイレがあった。
「じゃあ」
と言って、普通にトイレに行こうとしたら
「コラ。まだ寝ぼけて。あなたはこっちでしょ」
そう言ってママは女性用トイレの方に引っ張った。
『え? どうして?』
と、思ったけどママは強引に女性用トイレに引っ張っていく。
女性専用車はまだ良いけど、女性用トイレはダメでしょ。
そう思ったけど、強引に引きずり込まれ、開いていた個室にドンと押し込まれた。
ちょっと! と思ったけど、もう中に入ってしまった。
尿意はだいぶ強くなってきたから、仕方ない、ズボンとパンツを下ろして、洋式便座に座った。
元々家でも、洋式便座には座って、おしっこする習慣が身についている。
立ってしたら、おしっこが跳ねたり2方向に別れたりして、便器や床を汚してしまうから、男でもちゃんと座ってしなさいとママに怒られるから。
その為、外のトイレでも洋式なら座ってするのが当たり前になっている。
だから、最初は気付かなかった。
座って、オチンチンを下に向けようとした。
そのままでして、オチンチンが上の方を向いていたら、便座におしっこがかかってしまったり便器の外に出ていくから、無意識にでも手で上から押さえようとした。でも、手が何にも当たらなかった。
「あれ?」
シャーっと、おしっこが出たけど、何もしなくてもおしっこは、ほぼ真下に向かっている。勢いよく出ているせいか、たまに便器に当たって跳ねて、お尻にしぶきが当たる。
こんな事、今までなかったのに。
足を開いて、股間をじっくり見た。
「え?」
股間にオチンチンは無かった。オチンチンの代わりに、何か縦のスジが割れていて、そこから直接おしっこが出ていた。
『そんなぁ』
ボクは女の子になってしまったのか?
おしっこはもう勢いを無くし、お尻の方に垂れて流れて落ちていった。
お尻が気持ち悪い。これはトイレットペーパーで拭かないと。
おしっこが全部出たので、トイレットペーパーを折って、濡れたお尻を拭いた。
その後で、こっちも拭いた方がいいのかな? と股間の割れ目にも、もう一回何重にも折って、上からポンポンと叩く様に当てて拭いた。
ぐぎゅっと、割れ目の中にもペーパーごしに中指が当たっている。
変な違和感が、指と股間の両方から感じる。
拭いて、ペーパーは便座の中に捨てて、立ち上がってパンツを上げた。
朝に履いていたパンツはボクサータイプだが、オチンチン出す穴が開いていないユニセックスなもの。
どうせその穴から出す事は無いでしょと、ママが買ったもの。
パッと見に、穴が無い事を友達に気付かれたことは無いが、着替えの時とか、いつもドキドキしている。
そのパンツを持ち上げて履くと、全体的に優しくフィットして、股間に何もなくなった事の違和感と、優しく包み込んでくれている安心感と両方感じた。
ズボンも持ち上げて履く。
このズボンも含め、上に来ているピンクのシャツも、朝から着ているものと全く一緒だ。
シャツの上から胸を触ってみるが、こっちは特に大きくなった感じはしない。下に着ているタンクトップもそのままで。ブラジャーもスポーツブラも着ている訳ではない。
服も下着も。
違和感は、この股間だけ。
ジャーっと、水を流して外に出た。
ママはいない。
洗面台で手を洗う。
鏡に映った自分は、女の子だと思えば女の子に見えるが、別に普通に自分だ。髪も特に長くなっている訳ではない。
「あら、もう出たの。じゃあ行くわよ」
隣の個室からママが出てきて、洗面台で手を洗った。
ボクが手を洗うと、背中を押して
「ママ」
「え? なに?」
「ボク、女の子になっちゃった」
そうボクが言うとママは小首をかしげて
「変な子ね。あなたずっと女の子じゃない」
と言って、何も気にせず、さっさとトイレを出て行った。
何だろう? ボクが女の子になっちゃったのに、ママはそれが当たり前の様に言っている。
ボクが女の子になり、ボクが女の子の世界に入り込んでしまったのか?
でも良くある物語の様に、今ボクはスカートをはいていないし、髪も伸びていない。
胸も大きくない。とはいえ、小学5年生なんだから、こんなものなのだろうか?
分からない。
分からないけど、なぜかボクはそれ程パニックにもならず、ただ急がなきゃと思ってママの後ろを付いて歩いていた。
☆
スポーツセンターは、以前行った事がある。この駅を出て北に5分位歩いた所だ。
その時は夏のプールで利用した。プール以外でも体育館とか併設されていて、色々な教室も開催されている。
入ってすぐ正面に、大きな体育館があった。ダン・ダンとボールが跳ね音、その大きく開いたドアから、バレーボールやバスケットボールをプレイしている人達が見える。
ボクはさっそく、そっちの方向に行こうとした。
「どこに行くの? そっちは男子ばっかりよ」
「え?」
ボクは男子……じゃなかった。もう、女子になっちゃったんだ。
「女子は、こっち」
ママはエレベーターの方に行き、ボタンを押す。
仕方ない。女子に混じってだけど、やっとバレーボールが出来る。
エレベーターで3階に上がり、その奥の方に歩いて行ったので、付いて行く。
中から、女の子達達の声。
扉を開ける。
「え?」
中には、体操着・レオタードを着た女の子たちが、集まっている。早く集まった子同士でしゃべりながら、ステップ踏んだり、クルクル回ったりしながら、見せ合ってたり教え合っている。
入口の看板には、日曜・ジュニア・バレエ教室と書かれたプレートが掛けてある。
「ママ、これバレーじゃなくて、バレエ」
「何言っているの。貴方がバレエしたいって言ったんじゃない」
「違う。僕がやりたいのはバレーボール」
「ダメよ。もう申し込んじゃったんだから」
そう言ってママは受付をした。
「もうレッスン料は払っちゃったんだから、このレッスンは最後までやりとげなさい」
「そんなぁ」
もはや、このバレエのレッスンを受けないという選択肢は無くなっていた。
「分かったよ。でも今回だけだからね」
「はいはい」
「本当に、今回だけだよ。絶対だよ」
「分かった、分かった」
ママに手を引っ張られ、更衣室の方に向かった。
「着替えるわよ。こっちへ来なさい」
中には、ボク位の小学生から幼稚園児位までの女の子達が着替えをしていた。
ほぼ同い年の女子が着替えする中に堂々と入って行く。今のボクも女子小学生だから、別に誰も気にする様子はない。皆の着替えが目に入ってくるのも、ちょっと恥ずかしいけどそれ以上に、この同じスペースでボクが着替えをするという事の方が恥ずかしい。
ママは空いているロッカーを見つけ、そこにカバンを置いた。
「ほら、着替えるから服を脱ぎなさい」
「え!?」
ママが出してきたのは体操着ではなくレオタードだった。しかも派手なオレンジ色。
「え、やだよ、こんなの。こんな恥ずかしいよ」
「何言っているの? バレエするんだったら普通よ、ホラ」
周りの子達見たら、これと同様のレオタード半分、体操着とか短パン・Tシャツの子半分。
「でも……」
ママは強引にボクの服を脱がせ、まずは真っ白なタイツを突き付けた。
「ほら、グズグズしないで」
ボクはママの肩を持って支えてもらいながら、そのタイツに足を通した。小麦色だった足が真っ白になり、白いから光と影の明暗が出て、足の筋肉のラインがぴっちりと浮かぶ。
「その上から、これを着るの」
そう言いながらオレンジ色のレオタードを貰う。それを白いタイツの足を滑らせる様に入れて身に着ける。首のところから両袖に腕を入れて通す。ぴっちりとした半袖の生地が肩と上腕をカバーする。このレオタードはスカートの様な余分な飾りは無いから、ボクの身体のラインがくっきり出る。何も無くなった股間からお尻にかけて。そして普通に服を着ていた時には全く無いと思っていた胸も、このレオタードを着る事でそのラインがくっきりと出て、ほんのちょっと膨らんでいる事が分かった。
「髪は短いから、ひっつめなくて良いね。でも髪が動くと気になるだろうからコレ付けておきなさい」
そう言って、ボクの髪に細目のカチューシャをはめた。何の飾りもないが、それを付けるだけで一気に女の子の顔になってしまい、恥ずかしさで、また顔が赤くなった。
「服とかは全部ママのお古だけど、靴はそういう訳にはいかないからね」
新品のトウシューズを出してきた。履いたら今のボクの足にぴったりだった。
「ほら、いくわよ」
着替えが終わり、ママに手を引かれて練習場に入った。
壁に大きな鏡があって、そこに自分の全身の姿が映る。
「うわぁ」
カチューシャつけて、もう女の子にしか見えない顔。
レオタードとタイツで、もう裸でいるのと同じ、いや全身のラインがさらにくっきり出る分、裸である以上に自分が女の子の身体になってしまった事を自覚する。
「思った以上に似あっているわよ。本当、女の子って良いわね」
ママの機嫌が良い。ボクがバレエするから?
待ってよ。本当はボク、バレエはやりたくないんだよ。でもそうしないとママの機嫌が悪くなるから仕方なく。でも……。
「はーい。みんな、揃ったかな?」
中央に、紺タイツにTシャツを着た大人のお姉さんが来て、皆に声をかける。
途端に、それまでガヤガヤとうるさかったのがピタっと止んで、皆がその中央の先生の方を向く。
「それじゃ、今日も元気にレッスンを始めましょう。今日から始める子もいますが、焦らずに、皆と一緒に身体を動かして、出来なくてもいいから、まず音楽に合わせて楽しんでね」
ボクの事を言われたのかな? でも、同様に戸惑っている子達もいるから、初めてはボクだけじゃないよね。
「じゃアユミ、頑張ってね」
ママは、そう言うと他の保護者達が集まっている方に移動した。
移動しながら、小さく手を振る。
ママが見ている。うん。頑張らないと。
あれ? ボク、バレエはやりたくないのに……。
その中央の先生以外にも、何人かタイツにTシャツの大人の人が回りに散らばる。その内の一人が、ボクのすぐ横に来た。
「今日は、初めてだよね。一緒に頑張りましょ」
そう言って、ボクの横に付きながら、回りの子達の方も観察している。
改めて全体を見ると、教室の子達は下は幼稚園の年少さん位から、上は中学生位。格好も、ボクみたいにレオタードもいれば、そうでない子もいる。でも年齢が高いから上手という訳ではないんだろうな。だってボクはこの中で、かなり年齢は上の方だと思うけど、初めてなんだし。小さいのに、ピシっと綺麗に立ってクルクル回っている子もいる。あの子も白タイツに黒いレオタード着ていて、足に履いているのはトウシューズ? バレエシューズ? ちょっと分からない。この集団の中でレオタードを着ている子は、ほぼ半数以上だが、おそらくトウシューズまで履いているのはボクを含めて数人くらいか。
えと、女の子ばっかりじゃなくて男の子もいるな。幼稚園ぐらいの子か。タイツは履いているけど肩ベルト短パンだ。でも、さすがにボクと同じ位の小学生の男の子はいないよね。
あれ? ちょっと待って。
ボクは今、女の子だから、当たり前みたいにこんなレオタード着てバレエのレッスンしているけど、もし男の子のままだったとしてもママはバレエのレッスンさせたのかな?
まさか、このレオタード着ろとまでは言われないだろうけど、元々バレーボールするつもりだったTシャツ・短パンで参加しろって言われただろうか。
それは絶対に嫌だ。他に小学生男子いないのに、女の子達に混じって参加したくない!
あ、あれ? ボク何かおかしい。
女の子になっちゃったけどバレエしている自分と、男の子のままでバレエする自分だったら、男の子なのにバレエする方が嫌だ、と感じている。
バレエする事を嫌だと思う事より、女の子になって嫌だと思う事の方がまだマシだと思っているの?
ひょっとして、もうボクは自分が女の子だという事を、平然と受け入れちゃっているのかも。嫌だな……。
そう思っている間に、中央の先生は手をパンパンと打って、
「では、まずストレッチから始めましょう。みんな、床に座って」
その合図と共に、みんなペタンと床に座り込んだ。
ボクも皆に遅れながらも、床に座った。
これが定例のプログラムなのか、何も言われなくても、既にストレッチ始めちゃっている子もいる。座って、足を揃えてピンと伸ばして、身体を足の方に折り曲げている。
「じゃ、始めましょう。って、もう始めちゃっている人もいますね。みんな、いっしょに、足を前に揃えて」
足を揃えて、前に伸ばした。初めてだから、先生とか他の子の動きを見て真似る。
「まずはそのまま、つま先を前に伸ばーす。戻ーす。伸ばーす。戻ーす。」
足首からつま先だけの運動。足の筋肉がほぐれていく。
「つま先はピンと伸ばす。足の指、折り曲げちゃ駄目よ」
あ、力入れていたせいか変に曲がっている。ピンと伸ばす。こうかな? 隣の子の足先を見ながら真似てみた。
「次は、手は横から上へ、そのまま前の方に、ペタンと倒―す!。膝は曲げなーい」
みんなの行動を真似て、手を横から上に持ってきて、前に倒した。膝は曲げない様にだよね。あ、この時もつま先はピンと伸ばした方が格好いいね。みんなやっている。それも真似して。
「で、もう一回。よーこ、うーえ、前にペタンと」
もう一回繰り返す。
「はい、そのまま10秒。いーち、にーい……」
折りたたんだまま、しばらく我慢。先生の声に合わせて。
「あら、とても柔らかいのね」
先ほど横に来てくれたお姉さんが、声をかけてくれる。
「それじゃ、もう一回。よーこ、うーえ、」
身体を起こして、腕を横に伸ばす。
「もう少しピンと伸ばして」
お姉さんが、柔軟の方でなく、手の動きの補助をしてくれる。横から上へ、で、ペタン。
「苦しくない?」
「あ、大丈夫です」
「よしよし」
そう言うと、お姉さんは他の子の様子を見に行った。
「次は、開脚。そのまま足を横に開いて」
みんなの真似をして、両足を左右に開く。
「数字の1になる様にー」
まっすぐ伸ばす。
さすがにこれは、しっかり出来ない子が多い。120度位だったり、膝が曲がっていたり。
でも、膝は曲げない様にしないとね。で、つま先はピンと伸ばして。
「そのまま右に倒―す。はい、今度は左に倒―す」
みんなと一緒に右に、左に。
見ていたら、普通に柔軟運動の筈なのに、とても優雅な動きをする子がいる。まだ小さいけど、経験は長いのかな?
「はい。フラフラしなーい」
体勢がキツイのか、フラフラとぶれる子が多い。
やっぱり優雅に見えて、バレエって結構キツい。
「今度は、そのまま前にペターンと」
開脚して、前に倒れる。足は左右一直線に伸ばしたまま。
「膝は曲げないよ。はいそのまま10秒、いーち、にーい……」
手は、前に伸ばすのか。ピンと伸ばして。
「次はそのまま、足を後ろに。カエルさんをしようか?」
後ろに足を伸ばして、そこで足のうら同士を合わせる。
「ダイヤモンド。ダイヤモンドを作って」
脚が、綺麗な菱形になる。曲がらない様に、床にくっつける。
そのカエルさんの後も、カメさんとかアザラシとかシーソーとか、演目を進めていく。
「次はブリッジやりましょう。ブリッジ」
これまでの演目は言われても動作は全然見当つかなかったけど、これは分かる。仰向けのまま、手足を床に付けて腰を上げる。
うわ、凄く曲がって高いブリッジしている子がいる。とても腰の位置が高い。ボクの知っているブリッジを超えている。なら、とりあえず真似しよう。
「はいそのまま、いーち、にーい……」
動きを止める。ギュッと腰をそらして
「きゅーう、じゅーう。ハイよく出来た。起き上がれるかな?」
何人か、そのままの状態から立ち上がる。大半は崩れる。
腕にギュッと力入れて、反動つけたら出来るかな?
よっ! あ、出来た。立ち上がれた。
「うわぁ、凄い凄―い!」
先生が出来た子を褒める。
出来た人、出来てない人、出来なくて勝手に再チャレンジする子達もいて、けっこう騒がしくなった。
「はーい。じゃ最後にスピリッツ行きまーす」
先生は手をパンパンと叩く。騒がしいのが、すっと止んで皆、一斉に立ち上がる。
やっと最後か。でもってみんな立ち上がっているから、立ったところからするストレッチなんだと、自分も立ちあがったまま、中央の先生を注目する。
「まずは右足前の5番でポーズ」
皆、ちょっと変わった立ち方をしている。足を揃えてまっすぐだけど、交差している様な、右足は前に出しているけど。
そうしたらお姉さんがやってきて、足の位置を教えてくれる。
「まず右足を前に出して、そのかかとに左足のつま先をくっつけて、そのかかとは内側にするの。そう」
うわ、何かバランス取りづらい。フラフラする。
「その状態で、手をお腹に持ってきて、両手で何か持っている様な。アンナヴァンっていうの。そう、格好良いわよ」
フラフラしてボク自身は格好悪いけど、来ているみんなは、本当にバレエの立ち方をしている感じで格好良い。ボクも練習したら、あんな格好良い立ち方出来るかな?
「そうしたら、手を上にして、ゆっくり下ろしながら、つま先を前にー。はい出来ましたか?」
右足を前に左足を後ろにした股割りかな。お相撲さんとかファーストの選手がする様な。
下に降ろした手を床に、両足で前後に1の字を書く。さすがに完全にお尻がペタンと付くのは無理だ。両手で身体を支える。
「背筋を伸ばしてつま先も伸ばして、前にー」
身体を前に、倒していくが、これも両手を床で支えながらじゃないとフラフラする。
「そして後ろ。天井から後ろを見てー、後ろ見えるかな?」
うわ、ちょっとキツイ。さすがに身体が痛いし、バランスも取りづらい。
「起きたら今度は前~。諦めないでもうちょっとー。後ろ~。ハイ、じゃあ立って。今度は反対の足で」
一回、立ち上がる。痛かった全身を、少し休ませて、また立ってポーズ。あ、足が逆になるんだ。左足が前に。
「両手を上から下ろして、つま先を前に」
さっきとは逆の足を前にして、前後に。両手で床を持って支えながら、前に、後ろに。
かなりキツイ。回りを見たら、やっぱり皆、フラフラ。
それでも掛け声に合わせて、身体を前に、後ろに。
「ハイ、よく出来ました。それでは最後にご挨拶します。5番で立って」
さっき教えてもらった立ち方で、腕を前に。アンナヴァンだっけ?
「では、これでストレッチ終了です」
そうしたら皆、その5番のポーズから足を一つ分前に出してつま先までピンと伸ばし、手を上からくるっと横に降ろしながら両手を広げて一礼。スカートはないけど、カーテシーの様な優雅な一礼だった。そして、
「「「ありがとうございました!!」」」皆で、声を揃えて挨拶。
え? え? と思いながら、遅れて同じポーズを取って礼をした。
ボクも、優雅に決める事、出来たかな?
「良く出来たね。とても素敵よ。最後はキツかった?」
お姉さんに言われて「はい」と頭を下げた。
褒められて、嬉しかった。
「身体柔らかいね。ポーズはぎこちないけど、すぐ覚えるわよ」
そう言いながら、また皆を見て回って行った。
ここにいる子達は、皆、小さいのにしっかりと良く出来ている。
ボクより年上の中学生くらいのお姉さんも何人かいるが、多分ボクは年上の方だろう。身長だけなら一番高いかもしれないけど。
柔軟だけなら、かなり良いところまで行っていると思ったけど、それだけじゃダメだ。
☆
「では、ここからバーを使いまーす。みんな、バーのところに並んで」
教室の真ん中にバーが2列並んでいる。高いのと低いの。
当然ボクは高い方。低い方には、小学校低学年とか幼稚園の子が並んでいる。
「あなた、背が高いね。中学生?」
ボクと背が同じくらいの女の子に声をかけられる。
「いえ、小学5年生です」
「へぇ、私中二だけど、私より背が高いんじゃない。今まで見なかったけど、バレエは初めて?」
「ええ。初めてです」
「へぇ、この教室が初めてなのは分かったけど、バレエも初めてだったとは」
「え、この教室初めてって分かるんですか?」
「そーよ。だって今日初めては貴方だけ。あとは皆、ここの常連」
「そ、そうだったのですか」
中二女子は、他の子達に手を振った。皆、振り替えしてくれる。
「あ~、ネギぃ。もうお友達になってる~。ずるいのだ~」
小学校低学年ぐらいの赤いリボンの子が、ネギと呼ばれた中二女子に話しかけた。
「ネギさんなんですか?」
つい、聞いてみた。
「姓が根岸なんだよ。でもって、そのリボンの子はキーちゃん。3歳の時から始めているから、大ベテランよ」
「えへん」
キーちゃんは胸張って威張っている。
「私もバレエは長いけど、もう惰性でやっているだけで来年は受験だから、さすがにもう今年度いっぱいなの」
ネギさんはそう言いながら、後ろから抱きついてきた。
「うわわ」
抱きつかれた背中に、ネギさんのおっぱいが当たっている。
「ストレッチで、凄く身体柔らかかったから、経験者かな? って思ったけど、立ちポーズとかも全然知らない様だから、あれ、と思ったけど」
「そーなのだ。そんな超初心者なのに、キーより開脚が一直線なのだ」
「あ、あはは」
笑って誤魔化すしかない。
気が付くと周りの子達も、皆こっちに注目している。みんな仲間内だから、誰が自分に声をかけるか牽制し合っていたらしい。
「もー離れるのだ。ずるいのだ」
キーちゃんが間に入って来ようとする。
「だめよ。もうこの子は私の妹なんだから」
「妹って……」
ずっと一人っ子だったから戸惑ってしまうが、姉がいたらこんな感じなのかも。
何か、お姉さんが出来て嬉しい。
妹と呼ばれて、嬉しい。
「キーも妹になるのだ!」
キーちゃんが、割ってボクの腰に抱きついてくる。
さらに妹まで出来てしまった。
「はいはい。そろそろ始めるわよ!」
先生が、パンパンと手を叩いて号令する。
ネギさんも、ようやく解放してくれた。でも、バーでは私のすぐ後ろのポジションに着いた。
「バレエは専門用語多いけど、その内覚えられるわ。今日はみんなの動き見ていたら大丈夫よ。後ろから見ていてあげる」
「あ、ありがとうございます」
どうやらイジメられることなく、みんな仲良くして貰えそうだ。
「それじゃ、ここからピアノ入りまーす。ピアノの先生に、お願いします」
「「お願いしまーす」」
皆で合唱だ。ピアノの先生も、こっち向いてお辞儀した。
「まずプリエするね。1番、1番で立ちまーす」
みんな直立して、膝はピンと伸びながら足だけ左右に大きく開いて、180度の一直線の子もいる。
「そうよ、コレが1番ポジション。基本だから覚えて」
後ろのネギさんに教えてもらう。
見よう見まねで、一直線に揃える。
「凄いね。いきなり180度開くんだ。膝は曲げちゃだめよ」
「あ、はい」
バーを掴んで、背筋を伸ばして、身体も一直線に。
すると、
「ダメよ、無理に力入れたら、胸とお尻が出ているわ」
ストレッチの時のお姉さんが来て、悪い所に手を当てて修正してくれる。
お尻のところをちょっと引いて、背筋を頭の方に持ち上げる感じで伸ばす。
「この時、お尻の穴をキュッと引き締める感じで」
そう言って、お尻から足までスッと延ばすように撫でる。
「では始めまーす。ドゥミプリエ!」
ピアノが軽い演奏を始める。
その音楽に合わせるように、皆が動く。
その1番ポジションの足から、膝を両横に開いて腰を落とす。
パッと見にガニマタだが、動きはとても優雅だ。
「2番からドゥミプリエ」
1番よりちょっと足を広げて、また膝を曲げて腰を落とす。
「4番ー」
2番から幅を一気に狭め、それぞれのかかとを通り越して、足が前後2列に並ぶ。そのポジションからまたドゥミプリエ。
「5番ー」
これはストレッチの最後にやった。足をL字に並べるヤツ。さっきはフラフラしたけど今はバーを掴んでいるから大丈夫。5番からドゥミプリエ。
「今度はグランプリエ入れて、1番からー」
軽やかな音楽に合わせ、腕を大きく羽ばたく様に優雅にくねらせながらプリエをする、1番からのドゥミプリエを2回して、大きく膝を曲げて腰を落とすグランプリエを1回。
「うわ」ふらつく
「ドゥミプリエは、かかと床に付けたままだけど、グランプリエの時はかかと浮かせて良いから」
「う、うん」
「2番ー」
足をちょっと開いた2番から、同様に。言われた通り、グランプリエではかかとを浮かせて大きく沈みこませた。
「いいよーグランプリエは、そうやって思いっきり。バランスは後で付いてくるから」
「4番ー」
4番は一番フラフラする。バーを持って、なんとか。
「ほら、手が遊んでいるよ。優雅に、羽ばたいて」
「うん」
ああ、手が休んでいた。忘れない様に。
「5番ー」
今度はしっかり手も入れて。5番も足元あぶないけど、みんなのマネ。みんなのマネ。
「頑張れー」
周りから声かけられている。
あ、こんなところででも注目されている。
ちょっと恥ずかしい。
「じゃ、もう一周プリエで、1番!」
本当なら、ここで新しい演目に移る筈だったのかもしれないけど、多分私の為にもう一回同じ演目にしてくれたのか。
さっきよりはマシなプリエが出来る様に、手も入れて、ステップの優雅さも加えてチャレンジする。
あ、あっちのバーでキーちゃんが、バーを掴んでいるフリして実は掴まずにプリエしている。ボクに見せるつもりで?
上達したらこんな事も出来るっていう事?
「次はダンデュで、1番から」
1番ポジションで右足を軸にして、左足を移動させる。
ピンと伸ばして前につま先は床に付ける。で戻す。ピンと横。戻す。ピンと後ろ、戻す。
なるほど、足の捌き方か。
「もう一回」
同じく1番から前・横・後ろと来るんだけど、横の終わりで
「次、4番の前」と声がかかった。
1番の後ろの後、1番に戻すのではなく4番での右足の前に左足を戻した。
「そのまま4番ー」
4番に戻す形で、また一周ダンデュをする。そしてまた横の終わりで
「次、4番後ろに」と声がかかった。
じゃ、足は前じゃなくて、後ろのポジションに戻すんだな。
それでやってみる。
周りを見ると、普通にダンデュだけでなく、腕をぐっと上げてポーズ取る様にダンデュする子もいた。見せつけているのか?
「あ~、勝手な動きして!」
それ見て先生が苦笑いしているけど、怒って注意している訳ではない。
バレエは群舞だから、本来全員が同じ動きをしないといけない。
でも、おそらくボクに見せる為、というのもあって特別なのだろう。
「次、ダンデュ&ジュテ」
これは4番から始まった。2回前にダンデュして3回目は宙に浮かせて伸ばした。4回目も。そして、それを横に、後ろに。
その後、フォンデュしたり、フラッペしたり、ジュテしたり、デヴェロッペしたり。
これらはおそらく基本。
皆にはちょっと退屈なのかもしれないけど、初心者のボクに合わせてくれているのだろう。
でもその基本が大切なのだろうから、さしあたって周りから不満は出てい無さそう。
実際、しっかり出来ていなくて、お姉さんから修正入っている子、たくさんいるし。
デヴェロッペなんかはかなりオーバーアクションだから、見様見真似でも全然決まらない。何回か繰り返した
ふとそのデヴェロッペ、横に対してがY字バランスみたいなのだけど、何となく決まったかなと思ったら、何か周りから拍手が来た。
いや、皆に比べたら全然凄くなんかないんだけど。
そうやって一通り回ったら、色々と組み合わせたり、前屈おじぎみたいなの入れたり、もう必死で付いて行った。
周りからも、励ましの声。もう先生も注意しない。今回だけの特別・特別。
そんなに励ましの声に応える様に、しっかり付いて行く。それほどハードな動きした訳でないけど、もうヘトヘトだ。
でも何だろう。凄く楽しい! 本当に楽しい!!
その後また、基本をぐるっと一周した。何回かした動きだから、少しはマシになったかな?。
難しいポーズが出来たら嬉しい。しかも、それが優雅に見えれば、もう。
ボクは、ボクは、バレリーナになれたかな?
「はい、それじゃあ、これで終わりまーす」
と、先生の号令が入って、ピアノもジャン!となって終わった。
皆バレエ式に、両腕を斜め下に伸ばし、右足を一歩前に出したまま、優雅になお辞儀を決めた。レヴェランスというらしい。
ボクもそれを皆の真似をして、やってみた。
皆、凄く綺麗だ。ボクも、ちゃんと出来たかな?
「さて、」
終わって、先生はぐるっと皆を見回っているが、ふとボクの方を向いた。
「今日はアユミちゃん、初めての練習でしたが、どうでしたか?」
いきなり、振られた。
「あ、あの、難しかったです……」
そう言うのが精いっぱい。
「初めてにしては、良く付いてこれました。みんな、拍手~!」
あ、皆からパチパチと拍手や「頑張ったね」とか「良かったよ」とかの声援。
「では、今日のレッスンは、これで終わりです!」
「「ありがとう、ございました!!」」
解散になる。
ママが走ってこっちに来た。
「もう、良かったわ。本当に初めてじゃないみたい」
手放しで褒められた。ママに褒められるなんて、もう何年ぶりだろうか。
でも気持ちはとても複雑だ。
何か色々考えていたら、涙が出てきた。
「どうしたの、アユミちゃん。そんな泣いて。興奮しすぎた?」
「違う。違うの。楽しかったの。とてもとても楽しかったの。でも……」
他の子達が、そんなボク達の横を通りながら「バイバーイ」とか「またねー」とか声かけたり、肩や背中を叩いて行ったり。
そんな今日出来た友達たちに、小さく手を振った。
そして彼女たちを見ていたら、また涙が出てきた。
「でも、今回だけだからって。ボクが決めたから。だから」
「あらあら」
ママはそんなボクの肩に手を置いた。
「それは始める前に、アユミが勝手に言っただけでしょ。承諾した覚えはないわ。今回のレッスンが終わって、どうしても嫌って言われたらそうしたかもしれないけど」
「え?」
ボクはママの顔を見た。とても満足そうに笑っていた。
「きっとアユミだったら、続けたいって言うと思ったから」
ボクは涙をぬぐってママの方を見た。
「いいの? 続けていいの? また来週も来ていいの?」
今日出来た友達、ネギさんやキーちゃんや、他の子達ともまた会える。
「続けたいんでしょ。その方がママも嬉しいわ」
そう言ってママはギュッと抱きしめてくれた。
「ありがとう。私が好きだったバレエを、アユミちゃんも好きになってくれて」
「ママ……」
下を向くと、無意識か? ママの足が5番ポジションになっていた。
と、そこに、今日補助してくれたお姉さんが近付いてきた。
「お疲れ様~。今日は良く頑張ったね」
そう言って、頭をなでなでしてきた。
「本当に初めてと思えない位。身体はとても柔らかいし、一回やった動きもしっかり覚えているし、バランス感覚も良いし。もう最高よ」
「ご指導、ありがとうございます」
ボクの代わりに、ママが応えた。
「それで、相談なんですけど」
お姉さんの声が、ちょっと内緒話っぽくなった。
「アユミちゃんの才能、凄く見込みあるから、良ければウチの教室に来ませんか? 週3回のコースもあります」
どうやら、このお姉さんや先生は、ちゃんと自分たちの教室を持っていて、日曜日のスポーツセンターはバレエを広めるための広報の一環らしい。
「今から本格的にやれば、一流のバレエダンサーになるのも夢じゃありません!」
断言した。きっぱりと断言した。
ママはボクの顔を覗き込む。ボクはただ、当惑している
「すみません。まだこの子、バレエを始めた興奮が冷めないようで、この先まで考えられないみたいです。でも」
ママはくるっとお姉さんの方を向きなおし、
「来週からもこの教室は続けますので、やっていて、もっと上を目指したいとか、バレリーナになってみたいとか。そういう気持ちになったら、是非お願いしたいと思います」
そう言われて、お姉さんもちょっと表情を緩めた。
「急ぎ過ぎちゃったかな? 今日、初めてバレエ始めたんだからね」
そう言いながら、またボクの頭に手を置いた。
「アユミちゃんなら身長もあるし、その気になったらタカラヅカのトップスターも目指せると思います」
「まぁ」
そう言われてママも目を見開いた。
「そうね、ママは身長足りなくてトップスターになれなかったけど、この子だったらなれるかもしれないわね」
ママがタカラジェンヌだったことは知っている。でも大活躍したという話は聞いていない。トップスターになれなかった理由は、身長だけでは無いんじゃ……と言いたかったけど、流石に今、それは言えなかった。
「そうね、アユミはちょっと男顔だし、男役が似合うかもしれないわね」
今朝、ここに来るまでは正真正銘の男だったのに、ここに来る途中で女になっちゃってバレエのレッスン受けて。もし、タカラヅカで男役になんかなったら……、もうボク自身アイデンティティ保っていく自信が無い。
でも、これだけは自信を持って言える。
バレエをやりたい。これからもバレエをやって行きたい。
その為に今、女の子になって良かった。
でも今、男に戻ったとしても、もうバレエをやりたいとは全然思わない。
だって、
この教室内に貼ってあるバレエの公演のポスターに、男女のペアが並んで踊っている。そしてその男の方はピッチりしたタイツを履いて股間をこんもりさせている。
アレは絶対嫌だ。仮にバレエを続けるにしても、男としてのアレだけは絶対嫌だと、心の底から、そう実感していた。
―― 終わり ――
まず最初に謝らないといけないのですが、実は私、バレエ全然知りません。やった事無いのは当然としても、色々な演目も公演観た事もない。物語の展開的に、やっぱバレエやったら面白いだろうな、とバレエ編に突入するも、全然知らないから、情報は全部ネットからの付け焼刃。
しかも落ち着いて読み返したら、入門動画を全コピしたから、柔軟やらバーレッスンが必要以上に頁取っていると、実感。
これは……ちょっと引くかなぁ。でもかなり力入れたところだから、今更割愛するのは惜しいし。
とはいえ、今回は書いていてとても楽しかったので、特にバレエに詳しくなくて、こういう展開が好きな人は、充分楽しめるんじゃないでしょうか?
(今更バレエレッスンの初心者向き講座見せられても、との指摘もありましたが)
でもって、もっとエロエロにする展開もありましたが、あえて止めました。
さて、まだいくつか当時のストックを使い切ってはいないんですが、そのままじゃ使えないんで色々手を加える事考えます。
そんなところで、またお目にかかりましょう。
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