32話 兄妹の想い
綾乃視点
「ただいまー……」
ドアを開けると、すぐにリビングのドアも開く。お兄ちゃんがこちらを見ていて、何か言いたげな表情をしている。
「綾乃、おかえり。って……え? お前、その傷だらけの状態は何?」
「えっ?」
あ、やっぱりバレた。腕とか膝に貼った絆創膏を見て、お兄ちゃんの目が鋭くなる。
「どこかで転んだのか? ケンカでもしたのか? 誰かに襲われたとか?」
「ち、違うよ! そんな物騒なことじゃない!」
「じゃあ、どうして?」
お兄ちゃんの問いかけに、ちょっと口ごもる。玲司くんと練習してたって言ったら、どうせ過剰反応するに決まってるし……。
「えっと……友達と、体育祭の二人三脚の練習してただけ」
「二人三脚?」
「うん、そうそう。人数少ないから、私が頑張るしかなくて……ね?」
「……本当にそれだけか?」
「うん、本当にそれだけ!」
無理に笑顔を作ってみせる。嘘はついてない。確かに二人三脚の練習をしてたんだし……ただ、玲司くんと二人っきりだったのは秘密だけど。
「そっか……まぁ、お前がそう言うなら信じるけど。でも、無理するなよ。怪我するくらいなら本番だけ頑張ればいいんだから」
「ありがとう、お兄ちゃん。心配しすぎだよ、もう」
そう言って笑ってみせると、お兄ちゃんは少し安心したようにため息をついた。
「分かった。でも、怪我してるならちゃんとケアしろよ」
「はーい」
部屋に戻る途中、心の中でひっそり反省する。
やっぱり、お兄ちゃんには言えないな。玲司くんと一緒に練習してたなんて。
だって、絶対に余計な心配されるに決まってる。
でも、そんなモヤモヤを抱えたままお風呂に入るのも嫌で、私は軽くシャワーを浴びただけで部屋に戻ることにした。
悠斗視点
晩御飯を綾乃と食べた後、俺はベッドに寝転ぶ。
「はぁ……綾乃も大変そうだな」
俺はスマホを取り出し、通話履歴の中から一人の名前をタップする。数回のコール音のあと、電話の向こうから元気な声が響いた。
『もしもし? 悠斗くん? どうしたの?』
「麗奈か。ちょっと聞きたいことがあってさ」
『何? 真面目な相談? それともまた綾乃ちゃんの話?』
「ま、まぁそんな感じ」
つい声が小さくなる。俺が妹を心配しすぎるのは自覚しているし、麗奈にもよくからかわれる。
『で、どうしたの?』
「さっき帰ってきた綾乃がさ、傷だらけだったんだよ」
『傷だらけ? なにそれ、バトルでもしてきたの?』
「いや、なんか友達と二人三脚の練習してたって……でもさ、あいつ普段運動とかしないだろ? 無理してるんじゃないかって思ってさ」
『ふふっ。悠斗くん、それくらいで心配しすぎだよ。体育祭に向けて一生懸命なんじゃない?』
「そう、そうなんだけど……」
『まぁ、もし綾乃ちゃんが無理してるなら、本人が言うはずでしょ? それを信じてあげなきゃダメだよ』
麗奈の言葉に、少しだけ気持ちが楽になる。でも、まだ完全には納得できない。
「でもさ……やっぱり俺としては、綾乃が大事だからさ。何かあったらって思うと、放っておけないっていうか……」
『……ほんと、悠斗くんはシスコンだよね』
「うるさいなー」
俺がそう言うと、麗奈はくすくす笑うだけだった。
『でも、そんな悠斗くんも悪くないよ。妹想いのお兄ちゃんって感じで、可愛い』
「べ、別に可愛いとか言われたくねぇし」
『ふふっ、じゃあね。あんまり心配しすぎないこと。綾乃ちゃんだって自分のことくらい分かってるんだから』
「……わかった。ありがとな」
『どういたしまして♪』
通話を切って、俺はスマホを枕の横に投げ出す。
やっぱり、綾乃のことが気になって仕方ない。妹が傷ついてる姿なんて見たくないし、守ってやりたい。
だけど、麗奈の言う通りだ。少しだけ、妹を信じることにしよう。
でも、次に同じように傷だらけで帰ってきたら、その時は絶対に問い詰めてやる。
そんなことを決意しながら、俺は天井を見上げた。
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現在新作も連載中です。こちらも合わせて良ければ読んで頂けると嬉しいです。貴族たちの陰謀で左遷された俺は、呪いの館で再会した幼馴染に『もう二度と離さない』と囁かれる「https://kakuyomu.jp/works/16818622171398700224」
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