13話 綾乃と肝試しその2
「ひぃっ!!?」
森に入ってまだ五分も経ってないというのに、綾乃はすでに俺の腕にしがみついていた。
「お、おい篠宮さん、めっちゃくっついてるぞ……!」
「む、無理です! だって何か今、後ろでガサガサって音しましたよね!? 絶対誰かいますよね!?」
「まぁ、多分風とか動物とか……」
「こ、こっち来たらどうするんですかっ!?」
悲鳴をあげながら、さらに密着する綾乃。
……ちょ、ちょっと待て。近い。いや、普通にくっつきすぎだろ!? 綾乃の背が低いからか、俺の腕に当たるものが……。
「うわぁぁぁ!? 今、目の前で何か動いた気がします!」
「ちょ、篠宮さん! そんなにしがみつかれたら……!」
柔らかい感触が確かに俺の腕に……。いやいや、これはもう肝試しどころじゃない! 俺の理性が試されてる!!
俺は必死に意識をそらしながら歩みを進める。
「お、おい篠宮さん、とりあえずもうちょっと離れて……!」
「む、無理ですっ!絶対離れません!」
だめだこりゃ。
結局、綾乃はほぼ俺にしがみついたまま、俺たちは肝試しルートを進んでいく。
「城咲さんってこういう肝試し系は得意なんですか……?」
「まぁ、それなりにかな?」
「すごいですね。私こういう肝試しとかお化け屋敷苦手なんです……」
「そ、そうだったのか」
確かデートイベントの時も悠斗がお化け屋敷行こうって言った時も、めっちゃ嫌がってたな。
「まぁ、何かあったら俺が何とかするから、安心してくれ」
「城咲さん!頼りにしてます!」
ちょ!満面の笑みでさっきより密着するのは良いんだけど、さっきよりももっと当たってるんですけど!?やばい……推しのヒロインの胸の感触で本当に理性がどうにかなってしまいそうだ……。
そうして半ば放心状態で数分歩き、 なんとかゴール地点までたどり着いた俺たちは、放心状態で座り込んだ。
「……や、やっと終わった……」
「はぁぁ……本当に心臓止まるかと思いました……」
それはこっちの台詞なんですけど……。終始胸が腕に当たって理性が崩壊しそうだったわ!
「す、すみません……! その……いっぱいくっついちゃって……」
「い、いや……まぁ、気にしてないけど……」
いや、気にしてないって言ったけど、正直めちゃくちゃ気になってた。でも、そんなこと言えない。
「でも、私……怖がりすぎて、ちょっと恥ずかしいところを見せちゃいました……」
「別に気にしてないぞ?あんなにも暗くて不気味な場所だったし……。怖くなるのは当然だよ」
「で、ですよね!でも、城咲さんあんなに暗い場所なのに冷静で、すごくかっこよかったです!」
「そうかな? 何も仕掛けも脅かし役もなかったしそこまでかな?」
もっと仕掛けとかしてるのかな?と思ったけどそうでもなかったからな。ただ暗いだけだったし。
「でも、城咲さんのおかげでなんとか乗り切れました! ありがとうございます」
綾乃はそう言って俺の顔をじっと見上げる。焚き火の名残の灯りが微かに周囲を照らし、彼女の頬がほんのり赤く染まっているのがわかった。……いや、やめてくれ。そんな純粋な目で見つめられたら、こっちが意識してしまう。
「そ、そうか。なら、まぁ……良かったよ」
「でも……本当に……いっぱいくっついてしまって、ごめんなさい……」
「い、いや、別に……俺はそんな、気にしてないというか……」
嘘だ。本当はめちゃくちゃ気にしてた。というか、むしろ意識しまくりだった。けど、ここで「めちゃくちゃ当たってたぞ!」なんて正直に言ったら、それこそ変な空気になるだろう。
「でも、すごく恥ずかしいところ、見せちゃいました……」
綾乃は俯きながら、指をもじもじと動かしている。
その仕草がやけに可愛く見えて、俺は思わず喉を鳴らしそうになる。
「そんなことないぞ。怖いものが苦手なのは別に普通のことだし。それに、俺としてはビビってる篠宮さん可愛いなって思ったし……」
「えっ?」
しまった!ついプレイヤー目線の感想が出てしまった。まずいまずい!絶対きもいと思われちゃったじゃん……。何やってんだ俺!
「え、え、えええっ!? か、可愛いって……!?」
それを聞いた綾乃は一瞬驚いた顔をした後、さらに顔を真っ赤にしてパニックになっていた。
「ご、ごめん、今のきもかったよな?謝るよ」
「い、いえ!お兄ちゃん以外の男の人にあまり可愛いって言われたことがなかったので……。お気になさらず!」
「そ、そうか!なら良かった!」
「それより、終わったので施設に戻りましょう!」
「おう、そうだな」
こうして、無事何事もなく肝試しイベントは終了したのだった。
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