5話 綾乃と下校をする

 ようやく作業が終わったころ、外はもう暗くなる直前だった。図書館から出た俺達は急いで校門から出る。


「まだ空いてて良かったぁ……」

「そうだな……。だいぶギリギリだったな」

「今日は本当にありがとうございました。ではまた明日」


 そう言って、綾乃は自分の家に帰ろうとする。

 

 1人で大丈夫かな?この前の事もあるし、綾乃を1人でかえらせるのは心配だな……。


「もう暗いし、途中まで送って行くよ」

「良いんですか?」

「うん大丈夫」

「じゃあ、お言葉に甘えて……」


 それから俺達は、2人で並んで歩きだした。綾乃と一緒に帰る日が来るなんて思わなかったな……。こんな事ないと思ってたからすごく嬉しいぞ。


「それにしても城咲さん、噂で聞いてた時よりもお優しい方なんですね」

「まぁ少し足を洗ったからね」

「何か変わるきっかけとかあったりしたんですか?」

「うーん……。特にきっかけとかはないんだけど……。何となくかな」

「いろいろ訳がありそうですね……。これ以上は詮索しないようにします」

「うん、その方が助かるかな」


 本当は俺がこいつの体を乗っ取っただけなんどけどな。


 まぁ、そんな事を言っても綾乃は信じてくれないだろうけど。


「まぁ、でも私は変わって良かったと思いますよ」

「ありがとう、篠原さん」


 暫く、綾乃と会話を続けながら歩いていると、綾乃は「ここで大丈夫です」と立ち止まった。


「家まで送って行かなくて大丈夫か?」

「いえ、もうすぐそこなので大丈夫です。それに……」

「それに?」

「またお兄ちゃんが出て来て、怒られてしまいますよ?」

「まぁそうだね。じゃあまた明日」

「はい、また明日」


 俺達は、2人はそう言って別れた。


 まさか綾乃を途中までとはいえ、送り届けられるとは思わなかったな。悪役が主人公みたいな事して破綻しないんだろうか?まぁ、悪役である俺が何もしていなくても変化がないので大丈夫なのか……。


 というか気になるのは、悠斗の動向だよな。妹の手伝いをほったらかして何処へ行ってるんだろうか?まさか、妹ルートではなく、あの3人ヒロインのうちの誰かのルートに向かってるんじゃないのか……?そんな懸念を俺は抱いていたのだった。








綾乃視点



「ただいまー」


 家に帰って来ても、まだお兄ちゃんは帰ってきていない。放課後も図書館に来てくれないし……。一体どこへ行っているの?帰ったら絶対問い詰めてやるんだから……。


 それにしても、城咲君。図書委員でもないのに、閉門ギリギリまで手伝ってくれてとても親切な人だったし、好きな漫画の事でつい熱くなって早口で語っても、全くドン引きせずに楽しそうに聞いてくれて嬉しかったな。


 お兄ちゃんは、全く私の趣味に興味を示してくれなかったけど、城咲君はすごく興味を示してくれた。私の中ではそれが一番嬉しかったんだよね。


「城咲玲司君か……ⅬUNE交換すれば良かったな」


 噂では、かなり悪評高い人らしいけど、本当にそうなのかな?この前ナンパされていた時も助けてくれたし、本当はすごく良い人なのでは……?私と趣味も共通してるし、お友達になれないかな?


——— ——— ——— ———


ここまで読んでいただきありがとうございます!少しでも面白いと思った方は、応援コメント、作品のフォローや☆3をもらえるととても励みになるのでよろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る