主人公の妹を寝取ろうとするエロゲーの悪役に転生した俺は破滅フラグを回避するため真っ当に生きようとしたが、なぜか妹は俺に好意を寄せている。
瓜生史郎
プロローグ 悪役転生
「やっとクリアしたぁ!」
PCの画面に映し出される「妹と紡ぐ恋の旋律」というエロゲーの綾乃ルートのエンディング画面を見て、喜びのあまり椅子から立ち上がる。
ここまで来るのに、かなりの時間と苦労があった。このゲームはヒロインである
ただし、妹ルートは「隠しルート」であり、プレイヤーが特定の条件を満たさなければ到達できない特殊なエンディングとして設定されている。そこに辿り着くためには最難関の選択肢を通過しなければ到達できない。その難易度が故に幻のエンディングとまで言われたほどだ。
「でもその難易度にあった、最高のシナリオだったな……。あの悪役さえいなければもっといいシナリオになってたと思うけど」
あの悪役とは、このゲームに出てくる城咲玲司の事だ。どのルートでも主人公兄妹にいじめのようなことをしてくるけど、妹ルートではそのいじめが目も当てられないくらいエスカレートするので、ファンの間では、名前を言ってはいけないあの人と言われるくらいに嫌われている。
けど、最後には皆から見放され、プライドもズタズタに引き裂かれて、孤独の中で路頭に迷う事となって自ら命を絶ってしまうんだよな。
本当にどうしようもない悪役の典型的な例みたいなものだ。
「さて……。綾乃ルートも見られたし寝るか―!」
俺はそう呟きながら、ベッドへ横になる。
「あー……。一度で良いから、綾乃に会ってみてぇなぁ……」
まぁ、2次元の女の子に会えるなんて無理なことは分かっている。
でもそんな願いが叶ったらなぁと、思いながら俺は眠りについたのだった。
翌朝。俺は目を覚ますと大学に行こうと起き上がるが、部屋の家具の位置や模様が変わっていることに気がつく。
「あれ……?」
ていうかこの部屋の感じ、俺には見覚えがある。いやいやまさか……そんなはずはない。
その疑惑を振り払うために俺は近くにあったスマホのカメラを内カメラにすると、画面へ映し出された顔に絶句する。
「嘘だろ……? 俺、城咲玲司になってる!?」
そこに映し出されていたのは、鋭い目つき、金色に染められた髪。まさしく「妹と紡ぐ恋の旋律」に出てくる悪役、城咲玲司の顔だった。
どうやら俺は、寝ている間に「妹と紡ぐ恋の旋律」の世界に転生し、城咲玲司の意識を完全に乗っ取っているようだ。
「いやいや、そんなはずはない。試しに頬をつねってみよう……。いった!」
本当にリアルで起こっている事じゃん。
確かに俺は寝る前、綾乃に会いたいと願ったけど、何も悪役にする事ないじゃないか……。前世では真っ当な大学生だったのに……。こんなのあんまりじゃないか……?
そんな事をぼやいていてもしょうがない。このままシナリオ通りに進んでしまうと、俺は破滅して死んでしまう。
それだけはまっぴらごめんだ。幸いまだシナリオが始まる入学式までは2日もある。それまでに対策を練らなければ……。
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現在新作も連載中です。こちらも合わせて良ければ読んで頂けると嬉しいです。貴族たちの陰謀で左遷された俺は、呪いの館で再会した幼馴染に『もう二度と離さない』と囁かれる「https://kakuyomu.jp/works/16818622171398700224」
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