第3話
「失礼しまーす」
ガラガラと引き戸を開けると、1番奥の机に鷹瀬先生がいて、その前に女の人が立っていた。
こちらに背を向けていたけれど、後ろで髪の毛を一つに結んで、紺色のスーツを着たそのひとは、きっと同じ教育実習の白崎先生。
この学校に、そんなにきっちりとした服装の女の先生はいないから間違いない。
先にそのひとが振り返ってこちらを見た。
思った通り、白崎先生。
どうしよう……
白崎先生がいるなんて思ってもみなかった。
そもそも鷹瀬先生に何って言って話しかけたらいいのか考える前に、勢いでドアを開けてしまったのに、想定外のことまで起きて、ますます言葉が出てこない。
その場に突っ立ったままでいると、白崎先生で隠れていた鷹野先生が身を乗り出して、声をかけてきてくれた。
「長田先生に用だったらいないよ」
それは美姫によってリサーチ済みです。
「じゃあ、また今度にします」
白崎先生の前で連絡先なんて聞けるわけがない。
そのままドアを閉めようとして、鷹野先生に呼び止められた。
「待って。授業の質問に来たんだったら俺でも役に立てると思うよ? これでも一応、化学の教師になろうとしてるんだから」
「あ……えっと……」
「じゃあ、鷹瀬くん、また後でね」
白崎先生がわたしのすぐ横をすれ違って部屋を出て行こうとした時に、耳にピアスの穴が見えた。
ふわりと花のような香り。
わたしが白崎先生と入れ替わりに部屋へ一歩入ったことで、白崎先生が取っ手に手をかけるのが見えた。
その指先は手入れされていて、爪にはごくごく薄いピンクのネイル。
どうやら真面目風なのは教育実習の間だけのよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます