いつも上から目線の美人な先輩彼女を捨て、色んな年下女子達と仲良くしてたら先輩が壊れ始めた
田中又雄
第1話 100回目の告白
「...中間テスト、せっかく私が教えてあげたのにどれも70点台とか...本当呆れるぐらいの馬鹿よね、あなたは」
「あはは...すみません。け、けど、いつも50点くらいの俺にとって、70点台って結構すごいというか、なかなかの成長だと思うんですけど...」
「はぁ...。えぇ、すごいわね。逆に。普通の人なら90点台は余裕で取れるわ」
「...そうですよね...ごめんなさい」と、俺は苦笑いを浮かべる。
こんな会話をしているが、一応俺たちは彼氏彼女の関係である。
しかし、元々が先輩後輩の関係であり、更に俺が100回も告白して何とか付き合ってもらったという経緯もあったため、付き合ってもなおその上下関係がなくなることはなかった。
心のどこかでは告白を受けてくれたのだから、2人きりの時は俺に甘えてくれたりするのか期待していたが、付き合って3ヶ月目に入ってからもそんなことはなかった。
彼氏彼女っぽいことといえば、デートの時にたまに手を繋ぐ程度で、それも彼女が仕方なくしてあげていると言った感じで、嫌々感をもろに出してくるため、こちらも申し訳ない気持ちになって最近はしなくなっていた。
もちろん、キスなんてしたことはないし、エッチなんて論外である。
改めて紹介すると、この綺麗でかっこいい先輩が俺の彼女である。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093093161558119
名前は
圧倒的なスタイルとその美しい容姿に加え、頭もめちゃくちゃよく、運動神経もずば抜けている。
欠点らしい欠点はないと言っていいが、強いて言うなら人を見下しがちなその性格と毒舌くらいである。
しかし、それも俺にとっては魅力的な彼女の一部だったのだが、付き合っても変わらず彼氏の俺を見下し続けてることに、最近耐えられなくなってきていた。
彼女からすれば仕方ないことなのだが、彼氏なのだからもう少し柔らかい言い方をしてくれてもいいと思うのだが...。
そんなドライな関係なのだが、周りからは不釣り合いなカップルということで、嫉妬の目を向けられ、あることないことを色々と囁かれる。
段々とそういうのに疲れてきてしまっていた俺は、ある日初めて彼女に反抗するのだった。
◇
学校帰りに彼女の家でおうちデートをしている時のことだった。
不意に「
「あー...でも、ほら、剃ったら余計毛深くなるって言うじゃないですか。これ以上毛深くなるのは...」
「...馬鹿なの?剃っても毛深くなるわけないじゃない」と、鼻で笑う灰奈先輩。
「え?でも実際剃った後、めっちゃ毛深くなってるように見えますし...」
「馬鹿なの?切ったばかりだと断面が平に見えて、見かけ上太く見えることはあるけど、本当に太くなってるわけじゃないから。毛深さは遺伝やホルモンで決まるものだし、剃った程度で変わるわけないでしょ。...本当に無知で愚かね。私のような博識な彼女を持ったことを誇りに思いなさい」
「...」
いつもであれば「すみません」と言って、流すところだが、積もり積もったものが突然爆発してしまい、余計なことを言ってしまう。
「...そんなに言わなくても良くないですか...。確かに俺は...頭はあんまり良くないですけど...そんなに馬鹿とか無知とか言われたら...傷つくんですけど」
「...はぁ?事実だから仕方ないじゃない。何よ、今更。私みたいな聡明な彼女...賢い彼女が根気よく付き合ってあげているのに全く頭が良くならないあなたが悪いんじゃない」
「...馬鹿なのはわかってます。けど、わざわざ何回も言ったりとかはしなくてもいいと思って言うか...」
「じゃあ、私に言われないように努力しなさいよ」
俺なりには結構努力しているつもりなのだ。
けど、彼女は努力を認めてくれないし、いつも俺を鼻で笑って、見下してくる。
毎日そんなふうにされたら、俺だって傷つくし、彼氏彼女関係ですることではないと思うのだ。
「...頑張ってるつもりなんですけど」
「つもりじゃ意味ないのよ。結果が出てないんだから。私の貴重な時間を使ってるのに全然成長しないあなたが悪いんでしょ。こっちに責任転嫁するのやめてくれる?馬鹿のくせに」
彼女が折れることは一度もなかった。
どれだけ理不尽なことを言われようと怒ることはなく、笑って誤魔化してきた。
たくさん我慢してきた俺に対して、彼女は一切我慢することなく、やりたいこと、言いたいこと、そういうのを我慢することなく全部吐き出していた。
ずるいと思った。
嫌われたくない俺に対して、彼女は何を言ってもいいと思っている気がした。
だから、何だか突然冷めてしまったというか、俺と付き合ったのも俺のことが好きだからではなく、面白いやつだから弄んでやろうとか、勘違いしてる俺を笑うためだけに付き合っているのではないかと思い始めてきた。
俺も相当卑屈になっていたが、そうなっても仕方ないくらいの状況だったと思う。
「...俺のことなんて好きじゃないですよね」
「...何、突然」
「そうやって...いつも馬鹿にしてきて...先輩が俺のこと好きって言ってくれたこと、一回もないですよね。付き合ってくれたのも...面白そうだからとか...きっとそんな理由ですよね」
「...そうね。そうかもしれないわね」
「...ですよね。もう分かりました。別れましょう」
「え?」
何かいいだけな先輩を置いて、俺は鞄を手に取り先輩の家を後にした。
先輩が俺の後を追ってくることもなければ、それから連絡がくることもなかった。
◇1週間経過
あれから灰奈先輩とは話していない。
そして、先輩と別れたことはすぐに校内に広がった。
理由は単純であり、いつもは昼休みなど3年の教室で一緒にご飯を食べていたはずなのに、それがなくなったからだ。
しかし、人の噂も七十五日どころか、1週間もすればそんな話題は過ぎ去っていた。
俺と灰奈さんが別れたという話題が少し落ち着いたくらいで、教室でいつも通り友達と話していると、クラスの女子に声をかけられる。
「おーい、風間くーん。なんか1年生が呼んでるよー」
そう言われて、廊下に向かうとそこには可愛らしい小さめの女の子が立っていた。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093093161567226
「...初めまして
「...初めまして。えっと...どちらさん?」
「1年A組の
「...どうも。風間優です」
「はい、どうも。それで一つお願いがあるのですが...私を弟子にしてくれますか?」
「...はい?」
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