第14話 今日の百合俳句とショートショート



夏の影 そっぽ向きつつ 手はつなぐ 

小指が揺れて 生意気な顔




夏の光がじりじりと降り注ぐ。

細く伸びた影が重なり、手はつないだまま。

「暑いなら離せば?」

そっぽ向く声に、不機嫌が混じる。

「…別にいいし」

小指が揺れるたび心臓まで引っ張られる。

「何見てんの」

「暑そうな顔してるなって」

「……あんたも」

二人の影がまた少し重なった。



朝焼けの 窓辺で沈む 髪の花 

壊れるまでは そばにいさせて




朝焼けに染まる窓辺で、彼女の髪を指に絡める。細い首筋に唇を寄せると、わずかに震えた。「逃げないで」と囁くと、潤んだ瞳がこちらを見つめた。熱が高まる中、沈むように絡み合い、すべてが崩れ落ちることを願った。壊れるまでは、そばにいさせて。もう戻れなくても、かまわない。



朝焼けに ほどけた帯を 隠し合う 

消えたいなんて君は言う


朝焼けが畳を染める。君は帯をかき寄せ、うつむいたまま「消えたいなんて」とつぶやく。「言わないでよ」ほどけた布を巻き直しながら、私は君の手をそっと握る。指先がひどく冷たい。「じゃあさ、消えないで」泣き笑いの顔で、君は頷いた。朝日は昇る。世界はまだ終わらない。


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