第4話 救われない、救われない。
「心中しよっか」
「そだね」
彼女はそう言ってさっきまで林檎を向いていた包丁で手首を切り、そしてその手で私の胸を刺した。多分これで全てが終わったのだろう。私たちは死ぬ。
私の胸から血が噴き出す。そして痛い。心臓に達していたならばもっと血が吹き出るのだろう。でもそんなには出てないという事は深くは刺さっていないのかもしれない。包丁を胸から引き抜く。そうしたら血がさっきより吹き出た。
「彩、最後に食べたいものあった?」
「うーん、カップおしるこかな」
「好きだよね、毎日ドラックストアに行って買ってくるし」
「まとめ買いしたいんだけどやっぱ通販なのかな」
「ググれば出るんじゃない?アマゾンとかは定価と送料だろうけど」
「やば、スマホ、隣の部屋だ」
「取ってくれば?」
「めんどい」
「そっか」
「そう言う織歌は何か食べたいものある?」
「うーん、キャラメルかなあ」
「買ってこないと無いね」
「食べたかったなあ」
彩の手首から血が、私の胸からも血がどばどばと出ている。けれどこのままでは死ねないのかもしれない。
「彩、包丁貸して」
「どうするん?」
「もう二か所くらい刺してみる」
「まあ私は手首だけだしね。いいよ」
「胸は結構痛いよ?」
「だよね。間違ってごめん。ほら」
私は彩の胸を突き刺した。死にたい理由など何もないのに。
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