第5話 オモチャの指輪

「そうやって私のこと、お前って呼ぶとこが嫌いだったの」


「でも、滴をまだ好きな私も、大概か…」


左手の薬指には、婚約指輪も、これからつける予定の結婚指輪もなくて…


ただあの頃、滴がくれたオモチャの指輪が、色褪せながら、それでもなお、輝いていた。




「好きだったよ。好きだったけど、あなたとじゃ生きていけないと思ったの…」




私はオモチャの指輪を、雪が降り始めた真っ白な空へ放った。

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