禁書戦線 FanDL
第一章 禁じられた頁(ページ)
——判決を言い渡す。
裁判官の冷徹な声が、重苦しい法廷に響き渡った。
「被告人、結城 迅……貴様が成人向け漫画雑誌を所持していた罪は明白である。この国の青少年健全育成法に基づき、貴様を死刑に処す」
傍聴席がざわめく。だが、それは当然の反応だった。この国では、成人向け漫画雑誌は悪魔の書とされ、所持するだけで極刑に処される時代が来ていたのだから。
被告人席に座る俺——高校生の結城 迅(ゆうき じん)は、呆然としていた。たった一冊の雑誌を持っていただけで、なぜこんな目に遭うのか。
(……終わった)
裁判長が木槌を振り下ろした瞬間、俺の人生は確定した。いや、終わったはずだった。
——その時、法廷の天井が爆音とともに吹き飛んだ。
「っ!?」「な、何だ!?」
瓦礫が降り注ぐ中、黒ずくめの男たちが現れる。顔には特徴的な仮面——レンズのような形をしたゴーグルを装着し、黒いロングコートを翻しながら銃を構えていた。
「裁判所はいただいた! 我ら、FanDLの名において——この不当な裁きを破棄する!」
リーダーらしき男が、堂々とそう宣言した。その男は黒いスーツに白い手袋をはめ、鋭い眼光を光らせていた。
「さあ、少年。貴様を救出しに来た」
——俺の運命は、まだ終わっていなかった。
第二章 解放の銃弾
裁判所内は一瞬で戦場と化した。
FanDLのメンバーたちは次々と銃を撃ち、警備の兵士たちを制圧していく。閃光弾が炸裂し、視界が真っ白になる中、俺の腕を誰かが強く引いた。
「来い! ここで裁かれるわけにはいかんだろう!」
リーダーの男が、迷いのない眼差しで俺を見下ろしていた。
「で、でも……俺、死刑囚だぞ?」
「そうだ。だからこそ、お前を救う。FanDLの理念は『成人向け漫画雑誌を守ること』。貴様の罪は、俺たち全員の罪でもある」
彼の言葉は、まるで戦士の誓いのように響いた。
「……っ!」
俺は迷う暇もなく、彼の手を取った。
第三章 FanDLの秘密基地
裁判所を脱出した俺は、FanDLの拠点に連れてこられた。そこはかつて廃墟となった地下鉄駅を改造したもので、無数の本棚には、かつてこの国で発禁となった「成人向け漫画雑誌」がずらりと並んでいた。
「これは……!」
「圧巻だろう? ここにはかつての名作たちが、すべて保管されている。我々はこの文化を未来へと繋ぐために戦っている」
リーダーがゆっくりと語る。
「……まるで、レジスタンスみたいだな」
「その通り。我々は『FanDL戦線』——悪しき規制と戦う、最後の砦だ」
俺はこの瞬間、理解した。俺の戦いはまだ終わらない。いや——ここから始まるのだと。
「悪しき規制に銃を——成人向け漫画雑誌に栄光を!」
俺たちは今日も戦場へ向かう。
第四章 FanDL最期の日
FanDLの戦いは続いた。成人向け漫画雑誌の自由を求め、俺たちは数々の戦闘を繰り広げた。政府の取締部隊と銃火を交え、地下出版ルートを守り、禁書を密かに印刷し続けた。
だが、それは同時に、俺たちの首がじわじわと締められていく戦いでもあった。
そして、ついに——その日が来た。
第五章 地下鉄基地、陥落
警報が鳴り響く。政府の取締部隊が、我々の拠点に突入してきたのだ。
「敵襲! 第3書庫を守れ!」
「くそっ、あいつら火炎放射器まで持ち出しやがった!」
FanDLのメンバーたちが必死に応戦する。しかし、敵の数が多すぎる。制圧用ドローンが空中を舞い、機関銃が火を吹き、戦友たちが次々と倒れていった。
俺はリーダーの横で銃を握りしめながら、ある違和感に気づいた。
「リーダー……俺たち、ここまで情報が漏れるようなヘマしたか?」
リーダーは苦々しく答えた。
「……いや。裏切り者がいる」
その瞬間、地下鉄基地の入口が爆発した。
——そして、彼が現れた。
第六章 裏切りの真実
黒いスーツに身を包み、政府の紋章を刻んだIDをぶら下げた男。かつて俺たちの仲間だった編集長が、静かに歩み寄ってきた。
「……悪いな、みんな」
その目には迷いも後悔もなかった。ただ、淡々と事実を語る者の眼だった。
「俺も昔は、お前らみたいに信じてたよ。成人向け漫画雑誌には価値があるって。でもな——そんなもん、所詮は時代遅れだったんだよ」
「貴様……!」
リーダーが憤怒の表情を浮かべ、銃を向ける。だが、その瞬間——
ドンッ!
響いたのは、編集長の銃声だった。
リーダーが胸を撃ち抜かれ、膝をつく。
「リーダー!!!」
「……すまん、少年。どうやら、ここまでのようだな」
リーダーは血に染まりながら、最後の力を振り絞って俺に本を渡した。
「これは……?」
「最後の一冊だ。未来に、この文化を伝えてくれ……」
そして——リーダーは、息絶えた。
最終章 文化は死なない
FanDLは壊滅した。俺も捕まり、今は政府の取締施設の地下牢に囚われている。
——しかし、俺の心は折れていない。
なぜなら、リーダーから託された最後の一冊は、俺が隠し持っている。いつかまた、この文化が蘇る日が来ると信じて。
だから、俺は静かに呟く。
「成人向け漫画雑誌よ……永遠なれ」
そして——暗転。
【完】
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