バイト先の常連が学校の先輩だったけど…。

有栖悠姫

第1話

「じいちゃんのとこでバイト?俺が?」


リビングのソファーに寝そべりサブスクで映画を見ていたあおいは帰宅した母に祖父の喫茶店でバイトをしないかと勧められた。スーパーの袋を持った母は「そうなの、おじいちゃん困ってるみたいでね」とため息を吐きながら詳しい事情を教えてくれた。


蒼の母方の祖父は三つ隣の駅にある街で喫茶店を営んでいる。母と母の弟、叔父が就職すると脱サラして喫茶店を始め、現在も細々と続けていた。数年前に祖母が亡くなってからは祖父と2人のバイトで店を回している。何でもこの春で1人が進学で辞めて以来2人で切り盛りしていたが、もう1人のバイトも家庭の事情で辞めることになってしまったらしい。バイトを募集しているが中々集まらない。流石に1人で店を回すのは厳しく、新しいバイトが決まるまでで良いから蒼にバイトを頼めないか、と祖父に頭を下げられたと母は言う。


「俺バイトしたことないよ?人手不足なのに俺が入っても役に立たないんじゃね」


蒼は自分で言うのも何だが社交的ではないし要領も良くない。いずれバイトをしようと考えてはいたが、抜けたバイトの穴を埋められるわけがなく、寧ろ足を引っ張る未来しか見えない。


「猫の手も借りたい状況なのよ。それにそんなに身構えなくても、接客とレジは慣れれば誰でも出来るようになるわ。ちゃんと教えてくれるし。当然バイト代も出るわ。あんた新しいゲーム欲しいって言っていたでしょ?」


乗り気では無かった蒼だが、バイト代という言葉に心が揺れる。高校生は何かと入り用だし、毎月のお小遣いだってそんなに多くない。バイト代が入るというのは何とも魅力的な話だ。それに祖父の店は幼い頃から通っており、頻度は減ったものの月に数回は行っている。人見知りする傾向のある蒼にとって身内のいる店は初バイトにうってつけなのではないか。蒼は悩みうんうん唸る。そして。


バイト代に釣られ、蒼が首を縦に振ったのだった。

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