斯くして世界は分たれる
卯月ミヅキ(旧・卯の花)
第壱章 異端の鬼
第壱節 斯くして異端の鬼は生まれ落ちる
第壱話
平安の世の日本とよく似た、けれど全く異なる世界。
『鬼』と『退魔師』が争う混沌の世。
そんな世界のとある村。
そこで……
「忌子め!!!」
そんな叫び声と共に、体中に青あざをつけたボサボサの長い白髪無造作に束ね、布で目隠しをした少年に石が投げつけられた。
「ぅ……」
少年は少しよろけ、倒れそうになるもなんとか踏みとどまってそのまま文句も言わずにその場に立ち続けた。
少年の名は『
この世界において忌まわしいものとして扱われる『白髪』と『赤目』を持って産まれてしまった者。
本来であれば、その特徴を持つ者は産まれてすぐに殺される。
しかし、この村の村長は考えた。
村人が不便な村で溜まったストレスをぶつける相手として丁度いいと。
それ故に名無は殺されず、必要最低限の食事と睡眠だけ与えられ、生かされてきた。
名無の親は既に鬼によって殺されており、文句を言う者はいなかった。
名無は、ずっとこの生活が続くのだと思っていた。
何度も死のうと思った。
しかし、幸せそうな村人たちの
そんなある日のことだった。
村が鬼に襲われた。
鬼は1体。
されど、その力は退魔師ではない人間程度ではどうすることも出来ないほどに強力だった。
村は鬼によって壊滅するかに思えた。
しかし、村は救われた。
他ならぬ、名無の手によって。
名無は、最初は村人を助けることはせず、いつもの場所で立っていた。
そして、鬼は動かない名無に襲いかかった。
このまま死を受け入れることすら考えた。
しかし、まだ幸せになっていないと、そう考えて抗った。
そして、名無は勝った。
名無には、霊力を扱う才能はなかった。
しかし、その才能を補って余りあるほどの生への執着があった。
それ故に、霊力を無意識の内にその拳に霊力を纏い、鬼を攻撃した。
鬼も反撃したが、これまでの虐待によって痛みを感じにくくなっていた名無の攻撃が止まることはなく、最後に立っていたのは名無だった。
名無が鬼を倒すと、名無の周りに生き残っていた村人たちが集まってきた。
名無は思った。
これで、この状況が変わるのではないかと。
自分が生き残る為とはいえ、村を救ったのだ。
これで、自分は人間として扱って貰えるのではないかと。
しかし、現実は無情だった。
「お前……自分が何をしたか分かってるのか?」
「村を……救っ……」
「お前のせいで何人も死んだ!!!」
「あの鬼はお前が連れてきたんだろう!?!?!?」
「自分が功績を上げるために何人もの被害を出しやがって!!!!!」
「この人でなし!!!!!」
村人たちは名無が自分で鬼を連れて来て、自分で倒すことでそれを功績として今の状況から脱したかったのだと思った。
それ故に、名無を責め立てた。
そう、責め立ててしまった。
「忌子など、生かしておくべきでは無かったのだ!!!死nッ」
その言葉が言い終わる前に、その村人の胸を名無の手が貫いていた。
「ああ、もう……いいや」
〜新作です〜
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