希う(三)
石階段を上がり切った先には色とりどりの出店が等間隔に並んでいる。時間も時間だし、大盛況とまではいかないがそれなりの賑わいを見せている。昔からの地元住民にとっては毎年恒例のお楽しみなのかもしれない。
「おぉ!結構人いるじゃん。あ、私焼きそば食べたい! 出店の焼きそばがいちばんおいしいんだから!」
「ええなぁ! 俺はなんか長いポテトにしよかな」
「それは後でな。先にお参りしよう」
和泉君はあらゆる所から流れてくる出店の匂いにつられて立ち止まる私と間宮さんの背中を両手で押し、向かって左手にあった手水舎へと向かわせた。
確かに挨拶は大事だ。
階段を上って火照った体に心地いいくらいの冷水で手を清めた。そういえば気づかないうちに鳥居はくぐり抜けていたみたいだった。
立ち並ぶ出店を左右に見ながら歩く。いよいよ拝殿だ。
拝殿の辺りに人はほとんどいなかった。初詣のように順番待ちをすることもなくお参りできそうだった。
私は財布から五円玉を手に取った。ご縁がありますようにという語呂合わせだ。
普段から参拝の習慣があるわけじゃないので少し不安を覚えたが、とりあえずの作法として、二礼の後二つ拍手を打つ。
聞きかじりの知識だけど、こういう場では神様にお願いをするのではなく、感謝と敬意を表するべきなのだという覚えがあった。
でも神さまなんだから小娘の願いのひとつやふたつ、ちゃちゃっと叶えてほしいよね。
結局、私は念入りにお願いをした。間宮さんと付き合えますように!と。
先に参拝を終えていた二人と合流し、いそいそと出店へ向かう。
「えらい長いことお願いしとったなぁ」
「僕も思った。五円じゃ追加料金が必要だろ」
「うるさいなぁ。日頃の行いが良いからいいんですー」
ニヤニヤする二人は無視して、出店へと早足に向かう。
「あ、そうだ。後でおみくじも引きましょうね。定期考査前の運試し!」
「俺、なんや大吉引く自信あるわ」
「じゃあ、各自好きなもの買って来てあそこのベンチで食べませんか」
私の提案は採用され、しばらく別行動となった。この方が効率がいいだろう。私はとりあえず童心に返って、出店を一通り見て回ることにする。ベビーカステラ、唐揚げ串、たこ焼き等定番のモノが並ぶ。いくつか買って、二人と分けるのもいいかもしれない。
そうやってブラブラと歩いている内にいつの間にか境内の端の方まで来ていた。出店はこのわたあめ屋で終わりらしい。
元来た道を引き返そうとしたその時、視界の隅に古びた木製の看板が入った。気になった私は側に寄ってそれを見る。何か文字が書いてあるようだが、雨風に曝された為か劣化していて殆ど読めない。それでも辛うじて先頭の『こ』と最後の『池』だけ読み取ることが出来た。
あー、そういえばこっちに池があったよね。なんて名前だったか忘れちゃったけど。懐かしい気分になった私はその池まで言ってみることにした。二人には先に食べていてもらえばいいや。
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