第五話 オカルト案件(四)

 「心当たり?」

 「そう。失せモノ探しのプロってのがいるらしくてさぁ。なんでも不思議な力で失くした物を見つけてくれるんだとか」

 「はぁ……」

 周は少し呆れた感じで小さく息を吐いた。

 何をおかしなことを、と思っているのだろう。それは僕も同じだった。いくら幽霊が存在するとはいえ、『不思議な力』というのはちょっと承服できない。

 「あ、それ知ってるかも」

 呑気な声をあげたのは間宮だった。

 「一種の都市伝説みたいなものなんかな? 一時期オカルト板に盛んに書き込まれてたわ、そういえば。いやー、気にはなっとったんよね」

 「おぉ、イケる口だねぇ間宮君は」

 橘さんはニヤニヤとおかしそうに笑った。

 「盛り上がってるところ悪いんすけど、が本当だったところで、プロはどこにいるんすか? 指輪を探す前にその人を探さなきゃならないんじゃ?」

 あぁ、確かにそうだ。

 間宮が都市伝説みたいなものというくらいだから情報もさぞ少ないのだろう。

 「ふふふ、心配には及ばないよ。だって掲示板に住所が書いてあったしね」

 なんだそれ!

 「いや、それならむしろ絶対に悪戯だろ!」

 橘さんはわざとらしく「ええ!?」と言って両手をあげた。絶妙にイラっとくる言動だ。

 僕は追撃すべく口を開いた。が、それを察知したのか周が割って入って来る。

 「悪戯かどうかは別として、住所が分かってるならそこがどんな場所なのか、ということもわかりますよね?」

 「いいね。鋭いね。周さん。私もそう思って以前調べてみたんだよ。ストリートビューでね」

 親指と人差し指で輪っかを作った橘さんはそれを右目に押し当てる仕草をした。言われなくとも調査済みというわけだ。

 「なんてことはない、ただの団地だったよ。ま、書き込まれてた住所にも団地名があったから『まぁそうだろうなぁ』って感じではあるけどね」

 「というか、悪戯ならまだいいよ。もし悪意の書き込みだったら? 訪れた者を犯罪に巻き込むのが目的だったりして」

 「うーん……この間の件があるからね。100%ないとはもちろん言い切れない。でも少しでも可能性があるのなら行くべきじゃない? それとも他に案がある?」

 それを言われてしまうと何も言い返すことはない。うだうだ言ってはみているが結局意味はないのだろう。

 「まー行かないことにはなんも始まらないというわけやな。うんうん」

 お前はただ行ってみたいだけだろ。

 「だったら行きましょう。私は賭けてみたいです。この可能性に」

 いつになく真剣な周がグッと拳を握る。

 「どうやら僕が少数派みたいだな。わかった。でも少しでも危険だと思ったらその時点ですぐに撤退するから」

 「オッケイ。仰せの通りにいたしましょう」

 橘さんは少しおどけてぺこりと頭を下げた。

 あぁ、これでもう引き返せない。

 と思ったが、もっと早い段階から引き返すことなどできなかったのではないだろうかと思い直す僕だった。

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