番外編:case88
橘未明の怪談蒐集ノートより case88 産まれた
20××年7月1日 城里運動公園にて
語り手→安藤 中学三年生 男
以下、録音データの書き起こし。
安藤:……うわっ!こんなので録音するんだ。へー。(ゴソゴソとボイスレコーダーを動かす音)
私 :あ、それ置いておいて。もう録音してるからさ。
安藤:そっか。ごめんごめん。そしたらー、すげー怖い話っていうかキモイ話するわ。
安藤:去年の話な。夏休みにじいちゃんの家にひとりで遊びに行った時のことでー、あ、じいちゃん家は北海道ね。
安藤:そんでさ、じいちゃん家には犬が二匹いて、そのうちの一匹が妊娠してたんだよな。ちょうど俺がじいちゃん家に泊まった時、陣痛が始まって、俺とじいちゃんとばあちゃんで見守ってた。
安藤:産むの自体は無事に終わったんだよ。こんっな小さい犬が四匹産まれてさー、すげー可愛かったなー。
安藤:でもさ、母犬が産まれた子犬の……羊膜?だっけ、まぁ子犬の世話をしようとしなかったから、じいちゃんとばあちゃんが代わりにタオルで拭いたり、へその緒を切ったりしてたわけ。
安藤:んで……なんだっけ、あぁそうそう。じいちゃんとばあちゃんが色々忙しくしてる間、俺は母犬……みっちゃんのことを見てたんだよね。じいちゃんが「みっちゃんが苦しそうにしてたり、辛そうにしてたらすぐ教えろよ」って。
私 :おじいさんとおばあさんは犬の出産に慣れてたんだ。
安藤:たぶんそうだと思う。じいちゃんとばあちゃんがもっと若い時に飼ってた犬も出産したって言ってたから。
安藤:それで俺はじっとみっちゃんのこと見てた。そしたらまだお腹が膨れてるような気がしたんだ。もしかしたらまだ一匹産まれてないのかもと思った。だからじいちゃんとばあちゃんを呼ぼうとしたんだけど、その前にみっちゃんがもう一匹産んだんだよ。それがさぁ、あーもう思い出すだけでキモイ。俺がもっと小さかったらトラウマになってたわ。
私 :何が産まれたの?
安藤:……信じないだろうけど、小人だよ。小さいおっさんがみっちゃんから産まれたんだ。ありえねーって思うだろ?でも俺は確かに見た。あれは小さいおっさんだった。
私 :具体的には?サイズとか……様子とか。
安藤:うーん、サイズは十五センチくらい?わかんねーけど。顔はしっかり人間だったな。なんかどこにでもいるおっさんって感じ。そいつ、みっちゃんから産まれた後にみっちゃんになんかしたんだよ。太ももの辺りに……嚙みついたっぽい。キモイだろ?
安藤:だから俺、そいつを追い払った。近くにあった団扇をこう、盾にしてさ。そしたらそいつはなんかキーキー言いながらどっか行ったよ。
私 :噛みついたところはどうなってたかわかる?
安藤:確認したけどなんにもなってなかった。でも……みっちゃん、その二日後に突然死んじゃって……。じいちゃんとばあちゃんは出産後の肥立ちが悪かったとかなんとか言ってたけど、俺はあの小さいおっさんのせいだと思う。
私 :それから小さいおっさんを見かけたことは?
安藤:ううん、ないよ。夢に見ることはあるけど。俺が大人になって奥さんが妊娠してて、奥さんからあの小さいおっさんが産まれてくる夢。あー、キモすぎる。正夢になったらマジでキツイよ。
以上。
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