第6話 トキメキ

萩原と大喧嘩して別れた後。

俺は花園を家に招いた。

花園は俺の家を見渡してから「ご家族は...」と言ってから俺を見る。

その言葉に俺は「ああ。ちょっと遅いんだ。帰るのが」と話す。

花園は「そうなんだね」と呟いた。


「佐沼くん」

「?...何だ?」

「止めてくれて本当にありがとう」

「...花園は...本当に優しいよな。...お前自身の幸せを願ってるよ」

「...あはは。有難う。佐沼くん。私も...君の幸せを願っているよ」

「情けない俺だけどさ。これからも宜しくな」

「うん。佐沼くん」


俺は花園を柔和な感じで見る。

花園はそんな俺に対して「...でもね。佐沼くん」と真剣な顔を向ける。

俺は「?」となりながら花園を見た。


「私は佐沼くんは情けないって思わない」

「...花園?」

「私は...佐沼くんは最高に良い人だって思う。だからそんな事を言わないで」

「そうかな。俺は...」

「自信を持って。大和先生も言っていた。貴方はとても良い人だって。だから貴方には...色々と自信を持ってほしいって思う」


花園はそう言いながら立ち上がった。

それから俺に向いて真剣な顔をまたしながら見てくる。

そして何故か花園は俺に歩み寄って来た。

俺はその事に動揺する。

な、何だ?


「佐沼くん。貴方は...自分が思っているより世界を救ってる。私の世界もだけど」

「...確かにな。その通りだけど。...なんか折れたんだ。アイツの言葉にな」

「あんな女に負けるぐらいなら」


花園は近付いて来る。

それから俺の胸に手を添えた...な、何をしているんだ!?

俺は動揺しまくりながら花園を見る。

花園は俺に寄り添って来る。


「ば、馬鹿な。お前は何をしている!」

「見て分かる通り。寄り添ってる」

「見て分かるけどってお前!?」

「...佐沼くんはイヤ?」

「い、嫌じゃないけど!」

「...私も。ふふ」


俺は胸をバクバク鳴らしながら異性の感触を確かめる。

それに耐えられなくなり俺はそのまま花園を引き剥がした。

そして「ふ、ふざけるのも大概にしろ」と怒ってから花園を見る。

花園は俺を見ながらニコッとしていた。


「私は貴方が...貴方らしく居られるなら何でもするよ。佐沼くん」

「!」

「佐沼くん。私は貴方が不安な時、ずっと側に居るから。これからは」

「何でそこまで」

「私は貴方にあの日、救われた。それから私は決めたの。貴方を救いたいって」

「痴漢から救っただけだ。俺は...」

「私は痴漢が滅茶苦茶にあの日、怖かった」


そう言いながら花園は震える。

俺はそんな様子に「...」となって花園を見る。

花園は俺を見てから「だからこそ私は貴方を救いたい。この気持ちを...恩返しがしたいの」と言う。

それから見つめ合う俺達。

俺は赤面してから顔を逸らす。


「...全面的に全て考え直したい」

「うん。...私、貴方を救う。これから先も必ず。だからそうやって自信持ってね」

「...ありがとう」


それから俺は花園を見る。

花園は俺に微笑む。

そして「私は萩原とは違うから。必ず貴方を幸せにしてみせる」と話した。

俺はその言葉に花園に「ああ」と言ってから頷いた。


「...お前は不思議な奴だよな」

「具体的には?」

「...いや。魅力があるっていうか、さ」

「魅力...」

「ああ。魅力だよ。魅力的だな。外見も魅力的だけど中身も魅力的だ」

「...そんな事を言われたのは初めてかも。あはは。ありがとう。佐沼くん」


花園は恥ずかしがりながら頬を掻く。

それから笑みを浮かべてから俺を見た。

俺はその顔を見てそのまま苦笑していると花園はゆっくり立ち上がる。

そして花園は少し離れて座る。


「ねえ。佐沼くん」

「...何だ?」

「...萩原とは幼馴染だから付き合ったの?」

「...実際、俺は心から萩原が好きだった。...だけど萩原はこうして裏切ったから...正直マジにダメージがある」

「そっか。...そうだったんだね」

「幼い頃から一緒だったからな」


そう説明しながら俺は「...皮肉だな。恋愛ってのは」と呟く。

花園はそんな言葉に「...佐沼くんは経験すべきではない事を経験してきている。...もう過去の事は忘れて幸せになってほしい」と真っ直ぐに俺を見る。

そんな言葉に「確かにな」と返事をする俺。


「...なあ。花園」

「何?」

「何かしないか。遊びか何か」

「どういう遊び?」

「このままじゃ息が詰まりそうだからな。...テレビゲームでもしないか」

「佐沼くんが良いなら」


そして俺はゲーム機を持って来て客間に偶然あったテレビに繋いだ。

ニンテン〇ーのゲームキュ○ブ。

俺達の時代のものじゃないけど...珍しいもので遊んでみたかった。

これは俺の両親のもの。


「古いゲーム機だね」

「そうだな。任天○だけどな」

「64?」

「違うな。...ゲームキュー○っていう代物」

「へー。詳しいんだね」

「...まあ...これぐらいしか知らないけど。最近のゲーム機は詳しくは分からない」


そう説明しながら白赤黄のコードをテレビ裏に嵌める。

それから俺は古びた2つの白い手垢で黄ばんでしまったコントローラーを取り出す。

そして花園に渡す。

すると手が触れあった。


「...あ」

「...!」


俺達はその事に赤面しながらそっぽを見る。

何だよこれ...こんな。

そう思いながら俺は咳払いをした。

それから準備をしていく。

心臓が...。

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