第2話 適当で良いんだよ人生ってのは
幼馴染に浮気されて死のうと思った。
そして自殺しようと思い近所の駅まで行ったのだが。
いきなり初めて見る見知らぬ女子生徒に自殺を止められた。
それから今に至っている。
俺は普段通り通っている県立の高校に来てから友人の一文字信介(いちもんじのぶすけ)に全て説明した。
そしたら愕然として「...死ぬなよ。マジに」と必死めいて止められた。
一文字もショックを受けて涙を浮かべていた。
そんなに俺が死んだら迷惑だったのだろうか...。
「...やれやれ」
そう言いながら俺は立ち上がる。
それから廊下に出て歩いていると「オイ。佐沼」と声がした。
俺は「?」を浮かべて背後を見る。
教員の大和望(やまとのぞみ)先生が居た。
「朝方に転校生が俺のクラスに来る予定だったんだ」
「え?ああ。そうなんですね」
「ああ。で。その少女に聞いたら何かお前知り合いだそうじゃないか。お前、校内案内してやれよ」
「...は?どちら様の...少女?」
「花園だ。花園美幸。お前の知り合いだっていうぞ」
顎が落ちた。
そして愕然としていると「んじゃ。そういう事だから宜しく」と大和先生は去って行ってしまった。
ちょっと待て俺はまだ納得していない。
そう思いながら大和先生を呼ぼうとしたが階段を降りて行ってしまった。
「...花園が俺の学校に?」
そんな事を呟きながら歩いて職員室まで向かっていると「おい。めっちゃ美少女じゃね」「可愛い」とか声が聞こえた。
俺は「?」を浮かべてその方向を見る。
花園美幸が居た。
「なっ」
「あ。佐沼くん」
「...な!?」
そしてその美少女は俺に駆け寄って来る。
それから俺の手を握った。
「あぁ?」となる学校の生徒達。
「うぉう。彼氏持ちかよ」とも言って解散して行った。
俺は汗をかきながら花園を見る。
「な、何をしているんだお前は」
「だってこうでもしないと周りがねぇ」
「周りがねぇ、じゃない!!!!!俺は良いのか!?」
「え?こんな美少女が貴方を彼氏扱いしているんだから良いじゃない」
「良くない!?」
俺の噂がヤバい事になるだろ!
もう手遅れだけどさ!
そう思いながら俺は汗をかきながら花園を見る。
花園はニコニコしながら俺の手を握っている。
「は、放してくれるか」
「うん。...ゴメンね。いきなり手を握って」
「い、いや。勘弁してくれ。もうするな」
「いや?それは無いよ。これからもにぎにぎするよ?」
「何でだよ!?」
「君、自殺しちゃうから」
「もうしないって!」
「それは嘘だねぇ」
俺をジト目で見てくる花園。
勘弁してくれ。
そう思いながら俺は「職員室に用事なんだ」と首を振ってから職員室に向かう。
すると花園は「じゃあ私も」と付いて来る。
何でだよ。
「花園!付いて来なくて良いから!」
「いやいや」
「いやいや、じゃないって!面倒な事になる!」
「私は構わないよ?」
「構わなくない」
大慌てで花園を見ていると「やあやあ」と声がした。
それは大和先生だった。
俺達を見ながら「仲良さげじゃないか」と笑みを浮かべる。
無精髭を撫でながら白衣を整える。
「どこがですか!」
「どこがですかってお前な。可愛い生徒じゃないか。何処が嫌なんだ」
「そういう問題じゃないですよ。...あくまで神聖な学校でこんなベタベタ...」
「良いじゃないか」
「はい?!規律は!?」
「まあどうでも良いじゃないの。...イチャイチャするって事は若者って事だ」
「適当過ぎませんか!」
「まあまあ適当で良いんだよ。若いってのは過ちを犯して成長するんだ」
大和先生はそう言いながらニヤニヤする。
それから「...お前は律儀すぎるからな」とニコッとする。
は?律儀?
「お前は青春を楽しんでない気がするからな。...だから俺は嬉しいよ。人生の楽しさに火を点けそうな女子が現われてな」
「...!」
「つーかマジな話...お前最近、鬱っぽかったしな」
「...」
俺は大和先生を見る。
すると大和先生は「頭を柔和にな。飴食うか?」と飴玉を差し出してくる。
何でもアリか?
そう思いながらも受け取る。
カン○飴だ。
「先生。私も欲しいです」
「おお。幾らでも」
「いやいや」
大和先生はニヤニヤしながらカ〇ロ飴を10粒ぐらい渡してきた。
どんだポケットにけ入れてんだよ。
っていうか四次元ポケット?ドラえ○んか?
飴玉の気配無いんだが。
白衣だから何でもして良い訳無いだろ。
「なあ。花園」
「はい?」
「お前ってもしかして佐沼が心の底でお気に入りか何か?」
「は?」
何て事を聞くんだよ。
教員の聞いて良い事では無いと思うんだが。
そう思いながら俺は絶句する。
すると花園は「はい。その通り、お気に入りです」と即答した。
まさかの答えに俺は見開く。
「そっかそっか。...それは嬉しいな」
「...?」
「...花園。佐沼の事、知ってるか?」
「...喋り過ぎですよ。先生」
俺は流石に口が滑り過ぎている大和先生を止める。
大和先生は「そうか」とニコッとする。
それから「喋り過ぎた。すまん」と時計を見る。
「そろそろ戻りな。次の時間、保健体育で俺だけど。...あ。花園はまだこの場所に居てな」
「...大和先生」
「...ん~?」
「ありがとうございます」
大和先生は手をひらひらさせた。
それから俺は大量の飴玉と一緒に帰宅する。
そして花園の事が紹介された。
だが特に驚きが無い。
というか俺の恋人として定着されてしまった。
先程の事もあって、だ。
何でだよ。
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