ハーレム崩壊、十二年後

風祭 憲悟

序章 魔王を倒した勇者、ハーレム崩壊の現実を突きつけられる

第1話 伝説の勇者、十二年ぶりの生還! お前、生きてたのかって

「国王陛下、無事、魔王を倒して戻って参りました!」

「ま、まさか……しかしボロボロになりながらもその剣、

 三つに割れているものの、そのペンダントの紋章は、紛れもなく!」


 俺はまるで捧げるように割れた『勇者の証』を見せつける、

 激しい戦いで荒く砕けたのを粘着スライムの液で強引にくっつけた、

 捨てずに持って来ておいて良かった、俺は年月で変わっても、これは変わらないからな。


(ようやく、帰ってくる事が出来た……!!)


 玉座から腰を抜かして落ちる国王陛下、

 すっかり老けて……戻って最初にたどり着いた街で聞いた話だと、

 あれからもう十二年か、時間感覚がすっかり狂っていて、わからなかった。


(王宮広場にあった俺の巨大像が、あの頃の若さを思い出させてくれた)


 陛下が玉座に座り直し、改めて尋ねてくる。


「勇者ラスロよ、本当にラスロ本人で間違いないな?

 報告では十二年前、魔王と共に溶岩へ落ちたと聞いていたが」

「はい、実はそのマグマは幻影で、中は魔界に繋がっておりまして、その先で十二年かけ全ての魔王を倒して参りました」


 でないと帰れなかった。

 突然の単騎の冒険となったが、


『俺の婚約者たちがきっと待っているに違いない』


 その一心で今日まで頑張ってこれた、生きてこられたと言って良い。


「さぞかし辛かったであろう、大変な長旅、ご苦労であった」

「一応、魔王を倒した証拠も全て持って参りましたが」

「そんなものは後で良い良い、勇者凱旋だ、大々的にやろうではないか!」


 良かった信じて貰えて、

 これで金目当ての狂言と疑われる心配は杞憂に終わった、

 さあ、後は、さんざん、十二年も待たせ続けた婚約者たちだ!


(みんな、きっと喜んでくれるに違いない!)


 とはいえ、ここに来ていないというのは、どういう訳だろう?

 考え込んでいても仕方がないな、うん、ここは素直に聞いてみよう。


「それでその、俺の、いや、私のパーティーメンバーは」

「……そうか、それがあったか……」


 急に複雑そうな表情で白髭を撫でる国王陛下。


「どう、いえ、いかがなさいましたか」

「それだがの……うむっ、お前の婚約者だった者達だが……」

「婚約者、だった……?!」


 一気に血の気が引く俺。


「いったい何が」

「落ち着いて、心して聞くが良い」

「は、はいっ」


 あの時、

 ハーレムパーティーのみんなは落ちて行く俺を上から見ていた、

 特に大きな怪我とか、残っていた魔物とかは無かったはずだが……?!


「皆、勇者である婚約者を亡くした悲しみを乗り越え、

 立派に新たな生活を過ごしておる、当然、十二年経った今現在もな!」

「つ、つまり」「パーティーが、ハーレムが崩壊したのだ、仕方あるまい」


(……ハーレム、崩壊……!!)


 俺は頭を抱え、その場で蹲る。


「待っては……貰えなかったのか……」

「完全に死んだと思われていたのだ、仕方あるまい、

 ひとりは西方の侯爵家に嫁ぎ、一人は南方のエルフの森へ、もう一人は東方の魔導都市へと嫁いだ」


(ああ、ああっ、俺のハーレムの記憶も、崩壊しそうだっ!!)


「そう……ですか」

「ただ、ただひとりだけ『結婚は』していない者がおる」


 涙を拭きながら陛下を見て、尋ねる。


「それは……それは誰ですか」

「聖者アリナだ、遥か北方にある大陸一厳格なマベルス修道院で、

 残りの人生、一生涯、勇者ラスロのために冥福を祈り続けると言っておった」


 そんな、一度入ると『死んでも出られない』と言われる、あの……!!


「それじゃあ、もう」

「面会できる申請は私からしておこう、事情が事情だ、可能性はゼロでは無いかも知れぬ」

「でも、限りなくゼロに近いのでは」「……国王とて宗教が相手ではな、すまぬ」


 ある意味、結婚よりタチが悪い。


「わかりました、では俺は、俺はこの先、どうすれば……」

「ラスロ様!!」


 駆け寄ってきたのは、お姫様のような姿をした女性だ、これはいったい……?!


「ええっと、誰だっけ」

「ミオスです! ずっと、ずっとお慕いしておりました!」

「えっ、グレナダ公爵家の?!」


 確か会った当時は九歳だったはず、

 という事は今は、十二を足すと二十一歳か!!


「大きく、いえ、綺麗になられましたね」

「はい、この日をずっと、ずーっとお待ちしておりましたわ」

「えっじゃあ、俺を十二年も待っててくれたの?」「はい、結婚しましょう!!」


 ゴホンと大きく咳払いする国王陛下。


「うむ、まず正妻はそちらのミオス=グレナダで良いな?」

「まずって!!」

「側室は追って決める、出来るだけ早いうちに結婚式を挙げると良い」


 ……こうして俺は、

 十二年後の『ハーレム崩壊』という現実を知らされたのだった……

 俺は謁見の間から出て、思わずつぶやいた。


「そっかぁ……あぁ……さよなら、聖者アリナ、剣士ヨラン、弓使いエミリ、魔女ネリィ……」

「ラスロ様、私が、いいえ、わたくしたちがおりますわ、新しい『ハーレム』を、作りましょう!!」


 こうして自身が死んだことになっってしまったハーレム崩壊後、

 十二年も経ってから帰還してしまった伝説の勇者ラスロであったが、

 しかし、その『勇者帰還』を知らされた元ハーレムの面々は、というと……!!

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