悪魔に力を貰って命令したら、最後にこうなっちゃった。

仁志隆生

第1話

 お昼休み。

 会社の屋上でぼうっと遠くを眺めていた。

 他には誰もいない、私だけだった。


 課長に仕事できないって怒られた。

 そりゃ自分がダメダメなのは分かってるわ。

 けど先輩達は忙しくてロクに仕事教えてもらえない。

 それなのに業務命令だのなんだので、無茶な仕事ばかり。

 出来ないって言ったら責め立てられるだけで、何も解決しない。

 サービス残業しても追い付かない。


 ……もう何もかも嫌。

 そうだ、もうこのまま……。

 ここ、フェンスも何も無いし。


 そう思いながら屋上の端に行き、つま先を上げて下を覗いた時だった。


「ダメだってば」

「きゃあああ!?」


 私は何かに引っ張られて後ろに倒れた。 

「ねえ、飛び降りたら後片付け大変で迷惑なんだよ、分かる?」

 誰かがそう言ったので声がした方を見ると。

「え?」


 そこにいたのは、全身真っ黒で背中に蝙蝠みたいな羽がある小学校高学年くらいの背丈の……。


「え、あ、悪魔?」

「うん、そうだよ」

 その小さい悪魔は当然とばかりに頷いた。


 ただの仮装とかじゃないのは分かる。

 だってこの子、浮いてるもん。


「ねえ、なんで死のうとしたの?」

 悪魔が腕を組んで聞いてきた。

「……あんたには関係ないでしょ」

「ブラック企業なんかの為に死んでも仕方ないでしょ」

「!?」


 そうだよね、やっぱここブラック企業だよね。

 けど、ダメダメな私じゃ他所行ったって……。


「それがダメなの。死ぬくらいなら他所行きなよ」

 悪魔が私を睨んで言った。って、

「あんた心読めるの?」

「読めないけどだいたい分かるよ。お姉さんみたいな人はいっぱいいるからね」

「……そう。でも」

 やっぱ私じゃ上手くいかないかも……。


「ねえ、どうせ死ぬなら復讐してからにしたら?」

 悪魔がそんな事を言った。

「え? 復讐って」

「聞いた事ない? 悪魔に願いを叶えてもらう代わりに命をっての」

「……あるけど」

「オイラも三つまでなら叶えてあげられるよ。あ、人類滅亡とか地球をぶっ壊してはダメだからね」

「なんで? 悪魔はそれがじゃないの?」

「そんな事したら天界と大戦争になってしまうからダメだって、初代魔王様が全悪魔に命令したんだよ」

「そうなの?」

 勝つ自信が無いのかな?

 それとも勝っても被害甚大だからかなあ。


「それはいいとして、どうする?」

 え、うーん……。

 あ、そうだ。


「ねえ、こんなのはあり?」

 私がある願いを言うと、


「うん、大丈夫だよ。けどそれでいいの?」

「まだ二つあるし、とりあえず試したいの」

「そっか。じゃあ」

 悪魔が私の額に指を当てた。

 すると、

「きゃあっ!」

 一瞬全身が痺れたけど、すぐ治った。


「これで出来るようになったけど、願いの都合上で使えるのは10日だけだよ」

「……え、うん」

「そんじゃね。あ、オイラに用があったらここに来て祈ってね」

 悪魔はそう言った後、スッと消えた。



 ……夢、だったのかな?


 あ、お昼休みが終わっちゃう。

 

 私は自分のフロアへ戻った。

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