とある(福祉)事業所 M 新刊 2

あらいぐまさん

第1話 輝きを奪われても、意志は折れない

 人生の旅路において、誰もが一度は、自分の存在意義を問いかける。「私は、何の為に、生きているのだろうか?」と。

  確かに、日々の仕事に追われ、憤りを感じながらも、それでも明日の希望を胸に、生きているのが、普通の人である私達だ。栗田 学も、私達の様に、数々の試練を乗り越えてきた。


  試練を乗り越える度に、どんなに困難でも、正しい道(王道)を進もう……と心に何度も誓いながら生き抜いてきた。


 だが、最初から順風満帆な訳ではなかった。常に障害を、乗り越えて来たとは、言い難い。ある時点まで、障害の克服が困難とみると、手放して敗北を受け入れる事が多かった。

 それでも、一歩一歩、前に進む姿が、キラキラと輝いていた。


  奴らは自分達が、輝いていない、輝こうとしない、黒社会の側にいる事を認めず、学を、辱め、脅し、暴力を使って、下僕しもべの様に扱い、輝いている、学の貢献や成果や、尊厳を奪い取った。学には、そう言った、苦い思い出がある。


 そして更に、憎らしい事に、奴らは学から奪った大切なものを、独り占めにしたり、お下がりを、気前よく勝手に再分配する事で、自分は、白社会の側で、富や権力のある偉い人間であると、周りの人達に思わせた。 ……許せない……


 地位や権力や財産の無い学が、奴らに、対抗する為には、ひたすら学び、人間関係を作り、財を蓄え、奴らを超える、知恵を、身に付けるしかなかった。


 学は、力任せに闘ったら、対人戦(格闘)には、一定の強さがあったが、敢えて戦わずに逃げ回り、集団に隠れて、親玉の汚点を拾い集め、力でなくペンの力で、倒してきた。


 しかし、倒したからといって、歓喜に胸が踊る事はなかった。それは、いつも、後味が、悪いものだった……。ある時点を境に、戦いが上手くなって、相手を倒せる様になり勢いで、数名を倒したが、しかし、それは、学の幸せには結び付かなかった。


 そんな、学には、目指すべき理想があった。それは、まだ見ぬ彼女と数人の友達と共に、楽しく生きていく事だった。仲間はたくさんいるが、心を許せる友達は、まだ、少ない。


 迫る、寿命、資金の枯渇、壊れる機器……。 給付金の受給を受けて、資金のある今の内、学は、今までの負の連鎖を止める為、賭けに出なくてはならなかった。


 小説の「とある事業所・No.1」が完成した。学は、それを、引っ提げて、縁を求めて、歩き回っていた。どうしても、この山は、逃せない……。学は、遠い虚空を睨んだ。


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