とある(福祉)事業所 M 新刊 2
あらいぐまさん
第1話 輝きを奪われても、意志は折れない
■序章
人生のどこかで、人は必ず自分に問いかける。
——私は、何のために生きているのだろう。
栗田学もまた、その問いを胸に抱えながら生きてきた。
日々の仕事に追われ、憤りを飲み込み、それでも明日を信じて歩き続ける。
そんな「ごく普通の人々」と同じように、学もまた数々の試練を越えてきた。
だが、彼の道のりは決して順風満帆ではなかった。
困難を前にして手放したこともある。敗北を受け入れたこともある。
それでも、諦めきれずに一歩だけ前へ進もうとする姿には、どこか光が宿っていた。学には、忘れがたい苦い記憶がある。
輝こうとしない者たちは、自分たちが「黒社会」の側にいることを認めようとせず、むしろ輝きを放つ学を疎ましがり、辱め、脅し、暴力で支配しようとした。
彼の成果も、尊厳も、未来への希望さえも奪い取った。
奪ったものを独り占めし、あるいは勝手に再分配し、まるで自分たちこそ「白社会」の側に立つ権力者であるかのように振る舞った。
地位も財産も持たない学が対抗するには、学び、人間関係を築き、財を蓄え、彼らを超える知恵を身につけるしかなかった。
対人戦では一定の強さがあったが、力で戦うことは選ばなかった。
逃げ、隠れ、親玉の汚点を拾い集め、“ペン”で彼らを倒してきた。
しかし、倒したところで胸が躍ることはなかった。
それはいつも後味の悪い勝利だった。
戦いが上達し、勢いで数名を倒せるようになっても、
それは学の幸せには結びつかなかった。
それでも、彼には理想があった。
まだ見ぬ彼女と、心を許せる数人の友と、穏やかに生きていく未来。
仲間は多いが、心を預けられる友はまだ少ない。
寿命の影、資金の枯渇、壊れゆく機器——。給付金でわずかに余裕がある今こそ、負の連鎖を断ち切る賭けに出る必要があった。
小説『とある事業所No.1』が完成し、学はそれを携えて縁を求め歩き回った。
どうしても、この山だけは逃せない。
彼は遠い虚空を睨んだ。
——輝きは奪われても、意思は折れない。
ここから、学の新しい物語が始まる。
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