もふもふにゃんこ ゴマくんの冒険記

戸田 猫丸

第1話〜小生意気なネコちゃんの、冒険の始まり〜


 ニャンだここは?

 

 少しピンクがかった空。

 五角形とか、丸くて細かったりとか、見たことのねえ形をした、いくつもの建物。

 青やら紫やらオレンジやらのカラフルな葉っぱに、やたら真っ直ぐだったりうねってたりした形の、見たことのねえ植物。

 照りつけるお日様が、心なしかひと回りデカく感じる。


 ボクは、ネコの【ゴマ】だ。

 ニンゲンの【アイミ姉ちゃん】に飼われている、ただのネコだ。白黒模様の、1歳のオスネコさ。

 ちなみにネコ同士は言葉が通じるんだが、ニンゲンにはなぜか「ニャー」とかしか聞こえねえらしいんだ。


 それはさておき。

 ただの飼いネコのボクが、どういう訳か、来た事もねえ不思議な場所にいたんだ。

 それに――。


「フニャ!? ニャンだ、これはぁ!?」


 体毛にベッタリ張り付くような感覚。見ると、ニャンとニンゲンが着ているような“洋服”とやらを着ている。さらに。


「……は!? そんニャ、バカな!!」


 ニンゲンと同じように、後ろ脚だけで楽々と立ち上がり、そのまま歩ける。

 一体、ニャンなんだ、ボクの身にニャニが起きてるんだ?


「……ゆ、夢でも見てるのか?」

「何言ってるの兄ちゃん。ボーッとしてると置いてかれるよ?」


 話しかけてきたのは――ボクの弟の【ルナ】。

 ボクと一緒にアイミ姉ちゃんに飼われている、ボクと同じ白黒模様の、チビネコだ。

 だがコイツも、ボクと同じように、ニンゲンみてえに服着て、にゃんの疑問も無えように後ろ脚だけで立ち、歩いている。


「いや、ボクらニンゲンかよ! おかしいだろ! それにどこだよここは!?」


 気を紛らわすように言葉を吐きながら、周りを見渡してみる。

 変な形の建物のうちのいくつかが、崩れ落ちて煙を上げていた。


「おおーい、ゴマくんとルナくん。君たちが住むアパートはこっちだよ」


 爽やかな声が、耳に入った。

 

 見ると、青色の上着と真っ黒なズボンをピシッと着こなした、キジトラのオスネコがいた。

 もちろん、後ろ脚だけで立っている。ボクと同じくらいの体格だ。

 上着の下は白いワイシャツ、オレンジ色のネクタイが着けられている。宝石みてえに透き通ってる青い目をした、清潔感のあるネコだ。


「ごめんなさい、ゴマ兄ちゃんが急に変な事言い出しちゃって。【プレアデス】さん、案内を続けてください」

「ううん、いいよいいよ。さ、あと少しの道のりだからついて来てね」


 プレアデス? 誰だそいつ。いつ知り合ったんだ。


 ボクは自分の頬をつねり、ヒゲを引っ張ってみた。こんなの、夢に決まってらぁ。

 思いっきり引っ張って、こんな変な夢とはおさらばしてやる。

 うりゃ!


「い゙っ……!?」

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