天下無双のダンス大会
星之瞳
エントリー
「浩一!これを見てくれ」父はチラシを俺に渡した。
「何々、『天下無双のダンス大会』なんだこれ?」
「敬老の日に行われるイベントなんだよ。これに昌子と出てみようと思ってな」
「参加するって、親父たち踊れんのかよ!」
「馬鹿にするなよ。俺たちの若いころはバーなんかで踊っていたんだ。昌子とのデートでよく行ったものさ」
「解ったよ。えっと参加基準は満たしているよな。親父スマホ貸してくれ」
「俺のか?」
「本人のスマホからしておかないと、俺は仕事があるから、連絡が付かないだろう」
父は俺にスマホを渡した。
「えっと、これを読み込んで、お!出たな。エントリーするには、うん、住所はいらないのか、名前と、歳だけでいいのか」暫くすると画面に『エントリー終了OK』が表示された。
「エントリー終わったよ。当日マイナンバーカードで、市民であることを確認するそうだ」
「そうか、それでは練習しなくては、昌子エントリーしてもらったよ」
「そうですか、久しぶりですね、頑張りましょう」
「なあ、なんで急にエントリーする気になったんだ?」
「それがね、副賞見て頂戴。羽毛掛け布団があるでしょ。それが欲しくてね」
「近ごろ綿布団が重くてな、羽毛布団を買おうか迷っていたんだけどこの大会の副賞にあったからな。ま、取れる確率は低いけどやってみようと思ってな。近ごろ運動不足だしちょうどいいだろう」
「大会に出るのはいいけどケガするなよ。もう若くないんだから」
「解ってる、解ってる」二人はにこにこして部屋を出て行った。
入れ替わりに妻が入ってくる。
「お義父さんたちダンスの大会に出るの?」
「ああ、そうらしい。副賞の羽毛布団が欲しんだとさ」
「でも・・・」
「ああ、おそらく副賞は貰えないだろうな。姉に相談するつもりだけど、用意しておこうか、敬老の日の贈り物に」
「それがいいと思うわ」
俺は姉に電話を掛けた。
「もしもし姉さん久しぶり」
『どうしたの、珍しいわね、あなたから電話してくるなんて』
「それがさ(俺は経緯を説明した)当日は見に来れるの?」
『それは無理ね。昼は主人の方に行かないといけないから』
「それなら」俺は姉と敬老の日の打ち合わせをした。
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