第26話
「やっぱりバレてたんだね」
「ああ。アイツは自らの口でそう言ってた」
二回目のジャンケンが終わり、既に三回目の投票時間が始まっていた。
修也はさっきの事をみんなに聞こえるように語り、それを聞いた生徒達は愕然と視線を落とした。
相手クラスの生徒が自分の口でそう公言した。
そしてそれは投票が見えていた事の事実を示す。
つまり、今回の試験の負けを意味する。
「はぁ……今回は完敗ね」
「やっぱり強かったね。私達じゃ何も出来なかったよ」
周囲からそれに似たような諦めの声がボツボツと漏れている。
皆はこの試験の負けを確信した。
しかし、そんな意気消沈な空間の中、修也は両手をポケットに入れ込み、瞼を落としていた。
気づけば残り時間は一分になっていたが、今の状況ではもはや誰が投票に行っても同じ。
なので、特に相談時間も設けられず、今回の投票はハリエットが行くことになった。
そして、ハリエットが一人、控室を出ようとした時――
「――待ってくれ」
そう言ってハリエットの歩みを止めたのは修也だった。
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その頃青服の生徒達はというと。
「これで二試合目もこちらが二連勝。もう俺達の勝ちに揺るぎはないな!! 」
「おうよ!! アタシ達、レオンを信じてよかったぜ!! 」
「このまま上昇気流に乗って勝利するですー」
「どうやら今回の試験には天才である僕の力は必要なかったみたいだね。でも、僕は末恐ろしいよ。この僕の力がまだ発揮されてない中でも、ここまで圧倒しているというのに、まだ後ろにはアルト・アレグロという超越した存在が控えているのだからね」
「でも、なんか相手に申し訳ない気持ちになるね。魔法感知が出来るレオンがいなかったらこんな事にはならなかったのに」
「お前らもようやく兄貴の凄さに気づいたみたいっすね!! これからは安易に逆らうんじゃないっすよ!! 」
「ふん。この俺がいればこの先の試験も楽勝だ」
皆が嬉々として気持ちを口走る中、ただ一人エルサは懸念の表情を浮かべている。
最初にそれに気づいたのはレイだった。
「どうしたのエルサ? 」
「いや……少し気になる事がありまして」
エルサの発言に皆は視線を送る。
特にレオンなんかは不服なのか、少し鋭い視線を向けていた。
「えっと……もしなんですけど……もし、相手にレオンさんの力がバレてしまっていたら……」
「なるほど。そう言うことか」
レオンにはエルサのいいたい事が分かったのか途端に表情を柔らかくした。
一方で他のみんなはよく分かっていない様子。
「ど、どういう事? 」
「つまり、それを知った相手がもしかしたら逆手に取ってくるかもしれない、ってコイツはいいたいんだろ」
レオンの発言に皆は瞳を大きくしてハッとするした。
「そうか!! その線を考えていなかった!! 」
「でも、レオンの力がバレたとしても、相手に取れる策なんてあるの? 」
「実は一つだけ……」
エルサの呟きに皆は驚愕の表情を見せる。
一方、そのエルサの視線はレオンへと持っていかれていた。
しかし、そんな視線を向けられても、レオンは至って冷静だ。
「なんなのだその策とは!! 」
「おい!! 早くその策ってのに対処しないとアタシ達!! 」
「まぁ落ち着け。それなら大丈夫だ」
レオンの言葉に少し落ち着きを取り戻した皆だったが、安堵するまでとはいかないようだ。
して、レオンは赤裸々に紡ぎ始める。
「確かに、俺の力に気付いたら、相手は間違いなくこの魔法感知を利用してくるだろうな。俺に敢えて別の魔法を感知させるとか、な」
「ど、どいうことだ!! もっと詳しく説明してくれ! 」
「つまり、投票する前に誰か別の人物に投票室で魔力を放出させる。そうすれば、俺はそれが投票した属性なのだと勘違いする。そしてそれに気づかない俺は間違った投票をし、相手はそれを逆手に取ってそれに勝てる属性を投票。こうすれば、相手が必ず勝てるんだよ。これが俺の魔法感知を逆手に取った策だ」
「マ、マジかよ……じゃあアタシ達どうすれば」
皆が不安な表情をする中、レオンは鼻で笑ってそれを否定した。
「だからさっき言っただろ。大丈夫だって」
「な、何が大丈夫なんでしょうか……」
「そもそも、相手はもうそんな策を取れない」
「と、というと……? 」
「俺達がそんな策をみすみす見逃さないからだ。俺達は勝つ事も出来るが、相手を勝たせない事も出来る」
「……逆手に利用するのを更に逆手に取ろうと言う事ですか……」
「ああ。簡単に言えば俺達は投票時間ギリギリに投票すればいいんだ。そうすればギリギリまで相手の属性を知る事が出来るし、相手が同じようにギリギリに投票しようしてきたら、俺達も引き分け狙いで適当に投票すればいい」
「なるほど……その結果、困るのはこっちじゃなくて向こうのチーム……なにせ向こうは勝たないといけないから……すごい……でも、一体いつからこんな事まで考えていたんですか……?」
「最初からだ」
レオンの常に数手先を見ていた。
皆がどうすればいいのかとあたふたしている中でレオンはもうそこまでの未来を見ていた。
「俺はこの試験が始まった時から、既にこの試験の勝ち筋を見出していた。その上で大事だったのは、相手の投票した属性を知る事、三試合目までに誰がどの属性かなのかを特定する事の二つ。この二つが出来ていれば百パーセント負ける事はない。つまり、俺達は何があってももう負ける事はない」
その瞬間は皆はまた歓喜の声を上げて、レオンに感謝の言葉をぶつけていく。
そして同時にこの男が味方で良かったと、心底思うのだった。
そうして時間は残り一分。
負けがなくなったたと確信している青服の生徒達は、軽い足取りで投票室へと向かう。
それからはいつもと同じ流れだ。
「今日の投票はリリアンだ」
「はいですー」
レオンは先に投票室へと入り、相手の投票した属性を特定。
その結果、今回の投票はリリアンとなった。
そうして三回目の投票時間が終わり、リリアンは大広間へと入っていった。
向かいには既に待っている一人の女子生徒。
「よろしくですー」
「ああ。よろしくたのむ」
リリアンとハリエットが軽く挨拶を済ませ、結果公表の時間となる。
その結果はリリアンの勝ち。
緑服のクラスはまたしても敗北を喫した。
「やったですー」
リリアンはその場で両手を広げると、扉を開けてそそくさに大広間を出ていった。
「勝ちましたー。これで五ポイント目ですねー」
控室へと帰ってきたリリアンは勝利の報告し、エルサの隣に腰を下ろす。
皆は勝利報告に安堵したあと、そんなリリアンに労いの言葉を与えた。
それからは青服の一方的な試験になっていた。
四回目のジャンケンは、青服クラスがロルン、緑服クラスはルクスが投票。
結果は、ロルンの勝利で終わった。
そしてこの瞬間、三試合目に譲渡される選択権は青服クラスに確定した。
五回目の投票。
緑服のクラスからはナリが選ばれ、青服のクラスはそれに対しアルトを差し向ける。
結果はもちろん、アルトの勝利で終わった。
六回目の投票。
緑服のクラスはアン、青服のクラスはレイで始まった勝負。
して、結果はやはりレイの勝利で終わってしまう。
七回目の投票。
残すところもあと二回戦だけとなったジャンケン。
緑服クラスからはセドア、青服クラスからはマサが選ばれる。
結果は予想通り、マサの勝利で終わった。
そして最終ゲームである八回目のジャンケン投票。
緑服のクラスからはオレット、青服のクラスからはウィルが登場。
しかし、緑服クラスは最終ゲームも勝利する事が出来ず敗北。
見れば、この二試合目はすべてのジャンケンで青服が勝利するという結果で終わった。
二試合目が終わり、現在のポイントは緑服クラスがポイント無し。
青服クラスは十ポイントを獲得。
気づけば緑服クラスは十ポイントもの差をつけられて沈んでいた。
更に、青服クラスはこの二試合目で相手の属性を全て特定してみせ、かつジャンケンの選択権も持っている。
もう青服クラスの勝利は揺るがない状況。
一方で、ここから緑服クラスが勝つには次の三試合目で少なくとも五回はジャンケンに勝たないと相手の十ポイントに追いつけず負けてしまう。
更に勝つ場合となると、七回以上の勝利が必要。
もしくは、六回の勝利かつ相手の勝利が一つもない状況でも勝利が狙える。
ただ、青服クラスはジャンケンの選択権を持ち、なおかつ緑服クラスの全員の属性を特定している。
普通に見れば、緑服クラスが勝つ事なんて不可能に近い。
もう、緑服クラスには為す術すもなかった。
――ピンポンパンポーン
「ただいまをもちまして二試合目のジャンケンは終了となります。また、三試合目の開始は三十分の休憩を挟んだ後に行われます。休憩の間は自由にしてもらって構いませんが、大広間を通る事は禁じます。それでは後ほど」
そうしてアナウンスは途切れ、三十分の休憩タイムに入った。
見れば、控室の空気は対照的だった。
修也達は一言も発さず、ひたすら沈黙を貫いていて、レオン達青服は勝利したとばかりに場が和んでいる。
して、三十分の時が流れ勝利を左右する三試合目が今始まる。
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