第15話

「……え? 」


 そんな驚いたような声が出たのは修也だけでは内。

 ラズやクラスメイト、青服の生徒達もだった。

 

 そしてそんな生徒達を見て、うふふ、と笑う学園長。


「そのような反応になってしまうのも無理はありませんね。ですが、決して嘘などではありません。皆さんには正真正銘じゃんけんで試験の勝敗を決めてもらいます」

 

 学園長がそう言うと、途端にモニターから姿を消し、画面はすぐにこのゲームの説明する映像へと移り変わった。


「じゃんけん。それはかねてから存在する誰もが知っている娯楽。それはグー、チョキ、パーの三つで構成されていて、勝負事なんかでもよく用いられるとてもお手軽なゲームですよね。そして、みなさんにはこのじゃんけんでゲームをしてもらいます。ですが、今から普通のじゃんけんをして勝ち負けを決めても華がないですよね? 何より試験として面白くありません。なので、私はこのじゃんけんを更に面白くしようとこんなルールを考えてみました。その名も――属性じゃんけん」


 学園長が発言した後、画面に属性じゃんけんと書かれたフォントが大きく現れた。

 

「とは言っても内容自体はものすごく簡単です。属性じゃんけんは従来の三つの関係を八すくみに変えただけですから。そしてそれぞれの勝敗関係はこのようになります」


 モニターに映し出されたのはこんな感じだ。

 水→火→氷→風→土→雷→光→ノーブル→水。

 これはじゃんけんで言うところの相性を示していて、この図でいえば水は火に勝つ事が出来て、その火は氷に勝つ事が出来る。

 この図はそんな八すくみの相性を表したものだ。

 

「さて、では相性関係を見ていただいたところで次はこのゲームの流れを説明しましょう。先ず、この試験の勝敗についてですが、ジャンケンに勝つと勝ったクラスにポイントが入るようになっています。そして最終的にこのポイントの高かったクラスの勝ちとなります。ジャンケンが始まりますと、皆様には二階の控室へと移動していただきます。控室の出入りに制限はありませんが、試験の間はこの大広間に足を踏み入れる事は禁止となります。扉の向こうの移動は自由にしてもらって構いません。そして控室に入ると、後にじゃんけん開始のアナウンスが流れるかと思いますのでその際に、誰を、つまりどの属性を選択するかを皆様で相談してもらいます。制限時間はアナウンスが鳴ってからの十分間だけです。なので皆様はこの十分の間に誰を選択するかを決め、そして投票してください」


「投票? 」


 青服の一人が学園長に聞こえるような声で返答する。


「そうです。実は、控室の近くには投票する為だけの個室が用意されています。ですので、相談によって選ばれた生徒はこの投票室まで足を運んで投票してください。ただし、投票室は制限時間から残り一分になると開放されます。つまり、十分間の内九分間は相談、残り一分で投票。このように覚えておいてくたださい。投票のやり方についてですが、投票室には魔素水晶が設置されています。投票する生徒はその魔素水晶に手を翳してください。魔素水晶が光るとその時点で投票が完了となります。あとは控室へと再び戻っていただき、結果が出るのを待つだけ。結果は控室にあるモニターに表示され、勝敗だけが映るようになってます。なので、誰が投票しどの属性で勝ったのな負けたのかが分からないようになっています。これがこのゲームと一通りの流れになり、皆様にはこの流れを八回繰り返していただきます。一回勝つ事に一ポイント入り、全てのじゃんけんに勝てば最大八ポイントが手に入ります」

 

 そうして試験の流れである映像はここで終わり、次に試験の詳しい内容へと変わる。


「このジャンケンは属性の選択回数に制限はありません。つまり、八ゲームの内に同じ属性を何回も投票する事が出来ます。ただし、投票室に入れるの一名だけ。もし、投票室に複数人入った事が確認されればペナルティとなりマイナス一ポイントが科せられます。そしてもう一つ。例えば時間が足りずにやむを得ず投票できなかった場合や意図的に投票を放棄する事もペナルティになります。特に投票の連続放棄はその時点でそのクラスの敗北とみなしますので気をつけてください」


 修也は長々とこの説明を聞いていたが、少し疑問の表情を浮かべていた。 

 中でも特に疑問に思ったのが、このゲームの意味である。

 もっと言えば学園長がこのルールにした意味だ。


 確か学園長はじゃんけんを更に面白くしようして、このゲームを思いついたと言っていた。

 でも、この説明を聞く限り従来のじゃんけんと特に変わりがない。

 言えば、なにも面白みを感じないのだ。

 

 して、そんな修也の思考が届いたのか、途端にモニターに学園長の姿が表示され、大袈裟にパンっと手を叩いて笑みを浮かべる。


「今、これの何が面白いんだ、投票制なだけで何もジャンケンと変わらないじゃないか、と思った人。実はその考え、とてもごもっともです。でも安心してください。このゲームにはまだ面白いルールがあるんです」


 学園長がそう言うとまたモニターはゲームの説明を映していく。


「簡単に言うとですね、今の流れは一試合目に適応されるルールなんです。つまり、このゲームには二試合目が用意されているのです――そしてなんとまさかのまさかで三試合も用意しちゃいました。大盤振る舞いですね」


 学園長はとても楽しそうにしているが、皆は訳が分からず困惑な視線でモニターを見つめていた。


「こほん……では、二試合目の流れも説明していきましょうか。まぁ流れ自体は特に一試合目と変わりないんですが、先ず最初に投票について少し変わります。一試合目では同属性でも連続の投票を認めていましたが、この二試合目からはその連続投票はペナルティとなります。また属性の重複もペナルティとなります。つまり、この二試合目は一人一回までしか投票する事ができません」


 生徒の人数はそれぞれ八人で、勝負は八回行われると学園長が言っていた。

 つまり、二試合目は一人一回は必ず投票しないといけない。


「そしてもう一つ、結果表示の際のルールにも変更があります。一試合目では控室のモニターにて結果が表示されますが、二試合目からはこの大広間のモニターで行われるようになります。なので皆様には投票が完了した後にこの大広間に来てもらいます。つまり、この二試合目では対戦相手と対面した状態で結果を確認するという事です。ただし、この大広間に入れるのはそれぞれ一人だけとなります。複数人入った場合はペナルティとなります。さて、ではここで質問です。何故この二試合目では大広間での結果表示になるのか。じゃあ……アウス君!! 」

  

 学園長が何故自分の名前を知っているのかという不信感を抱きながらも修也は口を開く。


「……投票した人物の属性を特定する為ですかね。もし、勝敗が決まれば相手の属性が自ずと分かるので」  


「正解です」


 修也の言う通り、これは生徒の属性の特定が出来る仕組みになっている。

 例えば水属性の修也が投票したする。 

 もし、その勝負に修也が勝った場合、相手の青服は火の属性であると分かる。

 しかも、この大広間には一人づつしか入れないので、このように相手の属性を確実に特定出来るという訳だ。 


 ただ、それが分かったところでなんの意味があるのか。

 それはこの場にいる誰もが思っていた。


 なぜなら、この投票はお互いに顔を合わせる前にするからだ。

 なので、相手がどの属性なのかを知れたところで後に役立つ事は殆どない。

 ただ、この二試合目では必ず一人一回の投票が義務付けられているので、終盤になれば相手の属性を絞れる事くらいはできる。

 だが、確実に勝ちにいくことは到底不可能だ。


「うふふ。確かにそのタイミングで相手の属性を知れても殆ど意味はないですよね。ですが、それが次の三試合目を面白くしてくれるのです。では、次にその三試合目の流れについて説明いたしましょうか」

  

 モニターは次に三試合目の流れを説明した映像が表示される。


「三試合目からはルールが大きく変わります。先ず、三試合目まで行われていたと思います投票が、この三試合目からはなくなります。では、三試合目ではどのようにして勝敗をつけるのか気になりますよね? では説明しましょう。この三試合目の勝敗はですね、今この場にいる大広間で決してもらいます。みなさんには三試合目が始まると同時に控え室から退出していただき、今いる場所まで降りていただきます。そしてその場で誰が誰とじゃんけんするのかを決めていただきます。そしてその相手を選ぶ選択権は、一試合目と二試合目で獲得したポイントの高いチームに譲渡されます。つまり、二試合目までに勝っているチームが誰とじゃんけんするのかを決められるのです」

 

「なるほど。相手の属性を知る意味はここにあるのか」


「そうなのですよアウス君」


 学園長は今モニターに映っていないが、声色からでも、さぞご機嫌である事がうかがえる。

 ただし、青服の男子生徒は反対に不満気な声を上げている。


「でも、それだとポイントの高いチームが有利じゃないか。これじゃポイントの低いチームはただ追い討ちをかけられるだけだろう」


「確かに一見はそう思えますよね。でも安心してください。なんと、この三試合目ではポイントの低いチームにも大逆転の可能が残されています」


「え? 」


「なんとこの三試合目では、選択権の持つクラスがじゃんけんに負けてしまうと、その相手のクラスに二ポイント入ってしまいます。つまり、一試合目二試合目はこの三試合目までの前座。この試験の勝負どころはこの三試合目にあるといってもいい。さて、これが今回の試験の全容になります。何かご不明な点はありませんか」 

 

 学園長の説明でこのゲームの大凡の事が分かっであろう生徒達。

 説明も比較的わかりやすかったし、特に手を上げるような人もいない。

 まぁ、中にはちんぷんかんぷんな生徒もいるようだが、少なくとも修也は十分に理解する事が出来た。

 そうして再び学園長がモニターに現れると――


「――それではこれより試験を開始します。みなさんのご健闘をこの目でしかと見させてもらいます」

 

 そうして、学園長の姿がモニターからぶつりと途絶えた。

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