キミがそこに立つ理由
kita
第1話
「ねえ、これ見てみろよ」
朝、いつものように学校に登校して教室に入るといつもより騒がしいことに気が付く。
「おはよう」
僕は、自分の席の周りに座っているクラスメイトたちにいつもと同じように挨拶をすると今までのざわめきが波の引くように過ぎ去り、静寂が教室全体を包み込みだした。
「ちょっとこっちに来て」
席が近い佐々木美香が僕の服の袖をひっぱりながら教室の外、階段の踊り場のとことまで連れていかれた。
「これ見て欲しいのだけど」
美香は僕にそう言いながら、スマホを見せてくる。
そこの画面には僕の彼女である、高橋理恵が見知らぬ若い男と共にラブホテルの中へ入っていく様子が写し出されていた。それを目にした瞬間から全身の血の気が引くのが分かった。僕たちは、同じ中学の同級生で高校に入学するタイミングで僕から理恵に告白し、付き合い出したのだ。理恵はクラスで1、2を争うほどの美貌を誇り、平凡で特にこれといって特技があるわけではない僕と付き合ってくれたのが不思議ではあった。だが、関係は良好、おとといも買い物デートをしたばかりでその時もこれといった変化はなかった。
「ショックだとは思うけど、ちゃんと理恵と話し合った方がいいよ」
美香は心配そうな顔をして僕にそう伝える
「ありがとう、そうしてみる」
僕は適当に美香をあしらって、冷静になるべく一人になるためにトイレに向かう。
どうしてこんなことになったのだろうか。理恵は僕に何らかの不満を抱いていたのだろうか。確かに、彼女と僕とではつりあっていなかった。だけど、理恵がそんなに簡単に人を裏切るような性格ではなかったのだ。彼女は、まじめで浮気など人を裏切ることを嫌う性格だった。それは、中学からの付き合いであるから確かなことだった。だから、彼女が裏切ったことが今でも信じられないでいた。もしかしたら、彼女が浮気していること自体が何らかの誤解なのかもしれない。
「一度、教室に戻って昼休みにでも理恵に事情を聴こう」
僕は、心にそう決めて昼休みに3階の空き教室まで来るようにと理恵にメールを送信し、教室に戻った。
昼までの時間は意外と短いもので理恵のことを考えているだけであっという間に昼休みになってしまった。僕は、素早く教室から廊下に出て3階の空き教室に向かう。その間も僕はずっと理恵のことを考えており、あの動画は何らかの間違いであれと祈り続けていた。空き教室に着くと僕の彼女であり、疑惑の張本人ある理恵が教卓の一番前の席に座って待っていた。
「どうしたの、用事って」
理恵は僕が教室に入ってきたことに気が付くとそう問いかける
「これ、見て欲しいんだけど」
僕は、美香から朝見せられた動画を理恵にも見せる
すると理恵の顔が少しずつ青白くなっていくのに気が付く
「違うの、これはその、、、、、、」
理恵は立ち上がり僕の胸をつかみながら泣きそうな顔つきで僕にそう言う
僕は理恵の行動から信じたくもない事実に目を向けなければならないと気付いた
「違うって何が、ねえこの男だれ」
僕は、今にも泣きだしそうになりながら声を振り絞ってそう尋ねる
「それは、、、、、、」
理恵は黙り込んで泣き出してしまう
「理恵、僕じゃ嫌だったんだね、僕みたいな男じゃ君とはつりあっていないもんね。ごめんね、今まで付き合ってくれてありがとう、別れよう」
僕は、それだけを告げて教室から飛び出す。
僕の目からは涙が止まらなかった。
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