第13話 二人が重ねた時間

 俺達は重なりあった。初めて行なう生の感触。

 間男に明け渡してしまった領域を取り戻すため、俺は怒りと、憎しみと、情熱と、愛情と、溢れ出してくる全ての感情を希美にぶつけながら愛し合った。


 希美もそれに答えてくれた。


 自分が熱病にかかって価値観を狂わされていたことを認め、それを正し、自らが犯してしまった罪を認めて、二人で歩んでいく誓いを立てたのだ。


「はぁ、はぁ、はぁ……これ、しゅごい……ィ……こんなの知らないぃ……」


 多分だけど、希美の子宮が人生で一番深く降りきっている。


 それもまた勝利の証に思えた。


 圧倒的に短い持ち物である筈の俺のが、間男よりずっと深いところに届いたということは、希美に最も深い快感を与えた何よりの証だろう。


「希美」


「はぁ、はぁアッ君……分かった、のぉ。私、やっと気が付いたぁ……」


 俺は黙って先を促す。希美の口から出たのは、絶対的な勝利宣言だった。


「アイツ、全然……上手じゃ、なかった……。いつものアッ君の、繊細なセックスに……、荒々しさが加わった、だけ、で、比較にならないくらい、気持ち良かった……」


 深く深くキスをして、うわごとのように名前を呼び合い続けた。


「乱暴なだけのセックスに……惑わされてた……もう、間違えない、から……二度と、間違えない、からぁ……」


「そうだな。希美は、誰の、女だ?」

「アッ君……アッ君、です♡ 望月、希美はぁ……はぁ、はぁ、佐久間、昭久君……の、女、です、から……」


 トロトロに蕩けた愉悦顔でキスをしながら、希美は何度も何度も……それこそ二人の共通意識に擦り込むように同じ言葉を繰り返したのだった。












「希美、俺のプロポーズ、受けてくれるかい?」

「うんっ。嬉しいです……私、アッ君のお嫁さんになりますっ」



 そう言って、俺はあの日に床に落としていたエンゲージリングを彼女の左手薬指に嵌めた。


 希美の目尻から、再び大粒の涙がこぼれ落ちてくる。


 しかし、今度はその涙の意味が違って見えた。



「アッ君、私、世界一のお嫁さんになるね」


 希美は薬指に嵌まったリングを愛おしそうに抱きながら、潤んだ瞳に浮かんだ滴を零れさせた。



「ああ。その前に、俺達の人生に泥を塗った汚物を排除しなきゃな」


「うん……。私も、償いをする。アッ君の側で、世界一幸せになって、アンタなんかより私の旦那様の方が、男として圧倒的に格上だって、突きつけてやるから」


「その意気だ希美」


 希美は身体を起こし、優しくキスをした後で胸板に手を這わせた。


「希美?」


「お掃除、させて……今度は私がご奉仕するから……こういうことしたのって、ずっと無かったよね? 最初は、あいつに仕込まれた後追いになっちゃうけど、もっともっと勉強して、アッ君しか知らない私を作る努力するから」


「ああ。俺しか知らないエッチな希美を、沢山見せてくれ」


「うん……」


 まだまだ上書きは終わらない。奴にやったことは、全て上書きする。


 その上でアップデートすればいい。やったことのないプレイを、沢山経験すれば良いのだ。


 それは俺にしかできない事。俺達にしかできないこと。


 希美が救われる、唯一の方法なのだ。


 俺達はその日、一晩中愛し合った。


 人生で経験したことないほどの回数セックスをこなし、希美の膣奥に何度も射精した。


 それから俺達の上書きの日々が始まった。


 強姦魔が侵した俺達だけの領域は、あっという間に30回ごときの回数など超えて上書きすることに成功した。



◇◇◇



 ※希美が罪の告白をした記念日から数日後※


「チッ……希美のヤツ飛びやがったな。彼氏にバレたか」


 希美を罠に嵌めて寝取った男は連絡の取れなくなったことに強く舌打ちをした。


 徹底的に仕込んで自分なしでは生きられない身体にしてやったはず。


 もうあの女は俺に依存するしかないはずなのに。


 これまで数々の女を貶めてきた自信から彼は強く信じていた。


 彼氏との記念日にはラブラブのセックスをするだろう。


 それをグチャグチャに犯して上書きしてやるつもりだったのに。


 こちらから送ったメールには既読が付かない。無視されているのだ。


(彼氏に浮気がバレたか? だがこのまま手放すにはもったいねぇな、あの身体は)


 歴代犯してきた女のなかで、希美はかつてないほど極上の女だった。


 前に犯した女の写真フォルダの中に希美を見つけ、解放することを条件に罠に填める手伝いをさせた。


 自分のレイプ仲間が経営しているバーで女子会を開かせ、数人の仲間で乱入。


 睡眠薬入りの酒をしこたま飲ませてホテルまで運ばせた。


 結果は大成功ww。


 気弱で意志薄弱で、脅せば抵抗することなく言いなりになる都合の良い女。


 だが彼氏との関係だけは強情に守ろうとする意固地な女だった。



 そこを責っ付いて犯して、自慢のモノでよがらせて自分の方が優れていることを認めさせるのがたまらなく興奮したのだ。



 これまで何度も何度も心をへし折ってやったのに、中々堕ちなかったのでそろそろ焦れてきたところだ。



『彼氏にバラされてもいいの? ネットに上げちゃうよ?』


「これでよし。これを見ればたまらず連絡してくるだろう」


 ◇◇◇


 それから更に数日経っても、希美から連絡が来ることはなかった。


 その間、男は仲間達と共に罠に填めた数多くの女達を犯すのに忙しく、希美のことはしばらく放置していた。


 だが何日経っても一向に連絡が来ないことにイラついた彼は、いよいよ行動を開始する。


(チッ……。完全に無視しやがって。ばら撒くには俺が映り込んでない奴をセレクションしないとな。それか家に乗り込んで仲間と輪姦まわすか)


 下劣なことを考えながらほくそ笑む男。


 希美の住所は把握している。家に乗り込んで仲間達と共に肉奴隷のように扱い、最後は薬漬けにして風俗にでも売り飛ばせばいい。


 こんなことは慣れっこだ。


 意志薄弱で抵抗することをしない女だけをターゲットにしてきたこの男にとって、希美程度の抵抗など何度も経験しているので慣れっこだった。


◇◇◇


「チィッ! あのクソアマッ、本当に飛びやがったなッ」


 男は希美のマンションに乗り込んだ。

 しかしインターホンに電源が入っておらず、誰も住んでいないことが分かり、本格的に逃げ出したことをようやく悟る。


 だが居場所は察しが付いている。恐らく彼氏のところにでも逃げたのだろう。


 この男は知らないことであるが、希美が教えたのは引き払っていなかったダミーの住所だ。


 もともと彼女は一人暮らしで、ほとんど昭久の家に同棲状態になっていたため、ここはたまに帰ってくるのみとなっていた。


 呼び出される時に昭久にバレない為に使った住所でもある。

 今回のことを機に完全に引き払い、既にもぬけの殻となっていた。


 男は会話の中から聞き出した昭久の住所にも向かったが、そこも既に引き払った後であったことに、更に強く舌打ちをした。


 その日、家に戻った男は希美の痴態を納めた動画をネットにばら撒くための編集作業に入った。


 こんなケースは慣れっこであるため、編集は一時間もしないうちに終わる。


 さあいよいよネットにアップするボタンをクリックする直前、希美からの連絡が入る。


 待ちに待った希美からの連絡であったが、それはもうこの関係をやめにしたいという懇願であった。



 男はほくそ笑む。話し合いをしたいから喫茶店に来て欲しいと望む文面に笑いが止まらなかった。


 その気になればすぐにでもネットにアップすることもできるが、自分の立場を分からせるためにカードを切るのはやめておく。


 男は希美にとどめを刺すため、昂揚感を抑えきれずに呼び出された場所へと赴いた。

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