第31話 最後の1日
藤井翔吾side
俺たちはいろんなことがありながらも4日間のバイトを終え、大谷も魂紙を手に入れて、残すところ最後の1日になった。
「集合!!!」
俺たちは他のクラスメイトを探すためにこの最後の1日を費やすと決めていた。
そのための資金稼ぎだったのだ。
「みんなに!話がある!」
「「「「「「なんだー!」」」」」」
「俺たちには!今!お金がある!」
「「「「「「そうだー!」」」」」」
「だからこそ!俺たちは今日、何チームかに分かれて行動することにする!」
「「「「「「そうだー!」」」」」」
ちなみに、点呼をとっているのは太陽だ。
俺らの学校の体育祭ではこういったことをするという謎のしきたりがある。
それを元にして作戦会議中だ。
まだ店の中にいて、店員が耳を塞いでいる。
すみません本当に。
「A〜Cの班に分かれるんだが、内容はこの紙に書いた!みんな知りたいよな!」
「「「「「「そうだー!」」」」」」
「これから配るから…翔吾!配るの手伝って〜!」
「「「「「そうだ〜!」」」」」
「いやだ〜!」
「はい、お願いね〜。」
太陽が俺に紙を渡した時に小声で言ってくれた。
「田中さんと同じ班にしてやるから頼む。」
俺は喜んで紙を配りましたとさ。
A班:藤井翔吾&田中美憂
B班:原悠美&加藤楓
C班:川口大翔&大谷武尊&小林太陽
「それぞれの行き先も店員さんからもらった地図に表記しておいた!と言うわけで、みんなを探しに行くぞ〜!」
「「「「「「お〜!」」」」」」
俺たちは7人で勢いよく店を出た。
そして地図を確認すると、街の中心部が俺たちの探索域のようだ。
俺たちは2人で街の中心部へと走って行った。
—————
街の中心部に着くと、そこには豪華な家が何軒も立っており、さらには大きな城が存在していた。
「こんなところに本当にいるのか…?」
「多分…。小林くんが言ってたし、頑張って探そう!」
しばらく歩くと、街の中心部で大きな建物が目についた。
扉は重厚で、何か秘密めいた雰囲気を漂わせている。
「ここ、入ってみようか?」
田中が小声で言う。
俺が扉を押し開けると、中は思ったよりも広くて賑やかだった。
壁にはいくつもの紋章や証が飾られ、冒険者たちが忙しそうに出入りしている。
「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ!」
突然、声をかけられて奥を見ると、受付らしき女性が笑顔でこちらを見ていた。
「え、冒険者ギルド……?」
田中が驚いた顔で俺を見る。
俺もそこで初めて、ここが例の冒険者たちの拠点、ギルドだと気づいた。
「この世界にもギルドってあるんだな。」
「ギルドって何…?」
田中さんが顔を傾げていると、受付の女性はにこやかに言った。
「冒険者ギルドは、冒険者たちが依頼を受けたり、情報交換したりする場所なんです。初めてですか?」
田中が少し緊張しながら答える。
「はい。私たち…ここがギルドとは知らなくて……」
俺も頷く。
「でしたら、ご用件がありましたら、お声掛けください。」
そのまま、受付の女性は別の人の対応に行った。
「田中さん、ここでみんなを探す依頼しない?」
「そんなことができるの?」
「多分できる…はず。」
俺たちは受付の列に並んだ。
「なんか怪しまれたりしないよね…?」
「多分な。」
女性に声をかけ、少し緊張しながらも依頼を出すことにした。
「すみません、今日だけの依頼をしても良いですか?」
「良いですよ!どのような依頼でしょうか?」
「仲間を探してほしいんです。特徴は皆、同じ服を着ています。」
受付の女性は少し考え込んだあと、優しく頷いた。
「制服の特徴があると探しやすいです。具体的にどんな制服か教えてもらえますか?」
俺は言葉を選びながら説明した。
「胸元に赤い刺繍が入った白いシャツを着ていて、まれに黒い上着を着ています。男性はズボン、女性がスカートを履いているのが特徴です。街には馴染みが薄い制服なので、見つけやすいと思います。」
「わかりました。制服を目印に、本日のみギルドの冒険者たちに探してもらいますね。それと、報酬分のお代を先にお支払いいただけますでしょうか?」
「いくらですかね…?」
「基本的に自由ですが、高ければ高いほどいろんな人に依頼をこなしていただけると思いますので、まぁそこは匙加減ですね。」
「じゃあ…この…なんかそれっぽいもの5枚分でお願いします。」
女性は帳簿にメモを取りながら言った。
「わかりました。現在まだ朝早いので、今日の日が沈む頃にもう一度こちらにいらしてください。その時に今日集まった情報をお伝えいたします。また、依頼をこなす人がいなければお金は全額返金いたしますのでご安心ください。」
俺たちはまだ時間はかかるかもしれないが、ようやく動き出せることに少しほっとした。
「「ありがとうございます!!」」
「いえいえ!では、またお越しください!」
「よし、ひとまず依頼は出せたし、あとは情報が集まるのを待つだけだな。」
俺は田中さんと一緒にギルドの扉を出て、太陽からもらった地図を広げた。
「この街、想像以上に広いな……どこにクラスメイトがいるか見当もつかないよ。」
「制服を着ているっていっても、あの特徴があるから少しは探しやすいかも。」
俺たちは地図を確認しながら、中心街の奥や路地裏、広場の方へと足を進めた。
街の人たちは様々な装いで行き交い、俺たちはその中で自分たちの制服を着ている人間を探すが、今のところ見当たらない。
「みんな無事にいるといいけど……。」
田中さんの声に、俺も強く頷いた。
「あきらめずに探そう。最後の一日だ。」
俺たちはまた、街の中を歩き始めた。
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