第12話

その姿は何かを決めたような、吹っ切れたような、そんな清々しさを感じさせた。



私は時間が止まったかのようにテレビを食い入るように見つめる。




『俺には大切な人がいます。ずっと隣にいてくれて、それが当たり前になっていました。でもそれは当たり前なんかじゃない…彼女がいなくなって初めてそんなことに気付かされたどうしようもない男なんですよ、俺は』




ざわつく会場に大翔だけがただ一人冷静にその凛とした姿を崩す訳でもなく真っ直ぐな瞳を向ける。



まるで見つめられているような錯覚に落ちそうになった。



マネージャーらしき人は大翔から何も知らされてなかったのか慌てた様子でそれを止めようとする。



それでも大翔は言葉を止めない。




大翔の口から飛び出す、"結婚""子供"。



唖然とする私の頭は真っ白で、耳を塞ぎたくなった。


目を瞑りたくなった。



だけど目を逸らせないのは、こんなにも必死になる大翔を私は今まで見たことがないから。



なんで大翔が知ってるの?


私が妊娠してること。


大翔との赤ちゃんがいること。



ドクン ドクン ドクン



心臓が速くなる。息が苦しい。

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