幕間 学校での邂逅
「あぶねぇ、あったあった」
俺は学校に何事もなく到着し、四階にある俺の教室で忘れ物を回収した。これで夏休みは遊べるだろうと思いながら、ページをパラパラとめくる。明日の範囲は殆ど終わっていない。今日の夜は徹夜になるだろう。こうなるのならば、もっと計画的にやっておけばと思ったが、もう今更だ。
教室にも校舎にも人見かけなかった。大抵の生徒が話半分に聞いていても怖くなって早く帰ったのだろう。
かくいう俺も、めっちゃ怖い。
校舎に人いないし、日が沈みそうで外はもう真っ暗だし、こんなことになるならみんなに待ってて貰えばよかったなと、少し後悔している。
俺は課題をバッグにしまうと、速歩きで校舎を移動し下駄箱に向かった。走る一歩手前くらいの速度で四階から一階へ階段を降りる。誰もいない校舎では音がよく響く。
俺のコツコツコツという足音が、地面から反射し、辺り一帯へと────
ペタ……ペタ……
ちょうど三階に降りた時、上から何かの音が聞こえてきた。どうやら音は四階から聞こえているようだった。
これは足音か?
その音は少しずつ、そう少しずつ迫ってくるのだ。
ゆっくりと距離を詰めて近づいてくるそれは、実は口裂け女に怯えている俺にとって十分恐怖の対象になりえるものだった。
俺はなりふり構わず全速力で階段を降りる。俗に言う階段滑りまで使い、何が何でも下駄箱へ急ごうとした。
音は早くならず、一定のリズムで下に降りてきていたため、俺はそいつに追いつかれることもなく、無事に一階へ辿り着いた。そして下駄箱から靴を回収する。
ここまで一切後ろを振り返ってはいない。なぜならば、後ろを見てしまえば取り返しのつかないことになる気がしていたからだ。
そんな緊張も校舎を出ると解消されて、俺はなんとなく後ろを振り返ってみた。
油断していたと言うべきか、外に出て安心したと言うべきか、正直この行動をするべきではなかったと後悔している。
誰もいない、もしくは先生だったのだろうと淡い期待を胸に振り返った俺の目には、体から血を流した”おかっぱ頭の少女”が見えた。それは生気のない顔でこちらを睨んでいる。見間違えだと目をこすり、次に同じ場所を見たときには、そこには誰もいなかった。
なんだと安心し、振り返って歩き出そうとした俺の右耳に生暖かい吐息がかかる。そして全身が硬直した。
斜め後ろから気配を感じる。そういうものに敏感な俺が感じ取ったのは禍々しいもの。振り返って確認しようにも、恐怖と金縛りで一切動かない。
そして、それらが解けた瞬間、風がなにかの言葉を運んできた。
「次は、逃さない」
紅城はこのときから運命が決まっていたのかもしれない。”怪異”と戦うことになるということが。
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