ニワトリ収容所からの脱出

オオツキ ナツキ

第1話 二羽のニワトリ

 収容所の消灯時間まであと半日だった。太陽はまだまだ高い。


 開け放たれた部屋の入り口から、芝生の生えた庭にいるニワトリたちの白い羽が、陽光を浴びて輝いているのが見えた。


「決行は今日の夜だ。分かってるな」


 他のニワトリたちに聞かれないように、ニワトリのキングは声をひそめて言った。


「分かってるさ」


 天井の近くに小さな窓があるだけの殺風景な部屋には、ニ羽のニワトリがいた。大きな体格のキングと収容所に来たばかりのチビのロイヤーだった。


 キングの身体はロイヤーよりも何倍も大きく、その身体に恥じぬ食べっぷりをしていた。他のニワトリからは『暴食のキング』と恐れられていた。


「アイツに近づくと喰われるぞ」と、わざわざロイヤーに忠告してくるやつもいたほどだった。


 同じ部屋で過ごしてみれば、キングがいかに模範的なニワトリであることか誰だって分かるだろう。


 キングは一日のほとんどをいびきをかいて眠っているか、何かを食べることに費やしている。他者に危害を加えるようなことをするようなニワトリにはとは思えなかった。


 もうすぐ日が沈んでくる。完全に暗くなったときが脱出のときだった。


 まだ時間はあった。少しくらい眠っておくことにした。睡魔に身をゆだねて、ロイヤーは眠りについた。

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